2人に1人が一生のうちに一度はがんになるという統計データもあり、がんへの備えとしてがん保険を検討している人も多いでしょう。ただ、がん保険の多くが掛け捨てで解約返戻金がないことから、「貯蓄型のほうがいいのだろうか」と悩んでしまうことも。
そこで、今回は掛け捨て型のがん保険に関する基本的なしくみからメリット・デメリット、掛け捨て型と貯蓄型の違い、どんな人に向いているか、お得ながん保険選びのコツなどをわかりやすく解説していきます。
目次
1. 掛け捨て型がん保険とは
掛け捨て型の保険とは、簡単にいうと解約時の解約返戻金や満期金などが受け取れない(あってもごくわずか)保険のこと。支払った保険料が返ってこないことから「掛け捨て」といいます。掛け捨て型のがん保険の場合、貯蓄性がありませんが、そのぶん支払う保険料は貯蓄型よりも安くなっています。
2. 掛け捨て型がん保険のメリット・デメリット
掛け捨て型がん保険にはどんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。それぞれ見ていきましょう。
2-1. 掛け捨て型がん保険のメリット
- 貯蓄型より保険料が安い
掛け捨て型の最大のメリットは、貯蓄型よりも保険料が安く抑えられるということです。子どもの教育費や住宅ローンの負担が大きい時期などは、がん保険の保険料を最小限にしたいというニーズは大きくなるもの。掛け捨て型であれば保険料の負担を抑えつつも万一のときの大きな保障を得ることができます。 - 保険の見直しがしやすい
加入後に、より条件のよい保険が出てきたときに切り替えやすいというのも掛け捨て型の利点。貯蓄型の場合、中途解約をすると支払った保険料よりも少ない解約返戻金しか受け取れない、場合によっては元本割れのリスクもあるため、新たな保険に切り替え難くなることも少なくありません。それに対して掛け捨て型の場合、そもそも解約返戻金自体がないことがほとんど。よって、ライフステージの変化に応じて随時保険の見直しをすることができます。
2-2. 掛け捨て型がん保険のデメリット
- 途中で解約しても解約返戻金などがない
解約返戻金や還付給付金が受け取れない代わりに保険料が安いというのが掛け捨て型の特徴です。そのため当然ですが、貯蓄型とは異なり、掛け捨て型では途中で解約しても支払ったお金は原則戻ってきません。
ただし、戻ってこないからといって損をしているわけではありません。(4章で詳しく説明)
3. 貯蓄型のがん保険の特徴とは?
がん保険は掛け捨て型が一般的ですが、やはり貯蓄型タイプとの違いは気になるもの。あらためてその内容や特徴を確認していきます。
3-1. 貯蓄型がん保険のしくみとメリット・デメリット
貯蓄型のがん保険とは、途中で解約した場合にお金が戻ってくるタイプの保険のこと。何らかの理由でがん保険を途中で解約しなければならないときには、経過年数に応じた解約返戻金を受け取ることができます。「万一がんになったときの保障」だけでなく、「将来のための貯蓄」も兼ね備えているのも貯蓄型のメリットです。
ただし、解約返戻金を受け取れる分、掛け捨て型と比べて貯蓄型では月々の保険料負担が重くなります。また、短期間で解約してしまうと、解約返戻金が払い込んだ保険料を大きく下回る(損をする)リスクがあるため、保険の見直しがしにくいという点も貯蓄型のデメリットです。
こうした説明からもわかるように、貯蓄型のメリット・デメリットは掛け捨てのデメリット・メリットと表裏の関係にあると言えます。したがって、どちらがよいとは一概には言えません。むしろそれぞれのメリット・デメリットを踏まえたうえで、自分はどちらに向いているのかを判断することが重要です。
3-2. 掛け捨て、貯蓄型、それぞれに向いている人の特徴
掛け捨て型がん保険と貯蓄型がん保険、それぞれにどんな人が向いているのかを整理していきます。
3-2-1. 掛け捨て型がん保険に向いている人
繰り返しになりますが、掛け捨て型がん保険の魅力は何といっても保険料が安いということ。「がんへの備えはしたいけれど、教育資金や住宅ローンの支払いなどを優先し、保険に掛けるお金を最小限に抑えたい」という人にとっては最適だと言えます。
また、保険商品のバリエーションも掛け捨て型のほうが圧倒的に多くなっています。そのため、自分の求める保障や条件により近い商品を選びやすくなります。多くの商品からニーズに合致した商品を選びたいという人にも、掛け捨て型の方が向いています。
3-2-2. 貯蓄型がん保険に向いている人
貯蓄型がん保険の利点は、保障と貯蓄の両方を兼ね備えている点です。そのため、保険料が高くなっても保障と貯蓄どちらもほしいという人や、保険の見直しをこまめにしなくてもいいという人には向いています。
4. がん保険は掛け捨てが一般的(「掛け捨て=損」ではない!)
冒頭でもお伝えしたとおり、がん保険は掛け捨て型に加入するのが一般的。実際、多くのがん保険は掛け捨て型です。
「掛け捨て」と聞くと「がんにならなければお金が無駄になる」とネガティブに捉えてしまうことがあるかもしれませんが、なにも本当にお金を無駄にしているわけではありません。掛け捨て型は、割安な保険料で万が一がんになったときに治療のためのお金を受け取れるという保障を得ることができますから、それで十分保険料の対価を得られていると考えることができるのではないでしょうか。
掛け捨てであること=損をすることではないという点は意識しておくとよいでしょう。それでもやはり貯蓄の機能をもたせたいというのであれば、貯蓄型のがん保険をチョイスすることを検討するというのも一案です。
しかし、貯蓄を重視するのであれば、がんへの備えは保険で、そして貯蓄は銀行の定期預金や投資(運用)などで行うなど、保険の機能と貯蓄機能は切り離して考えることもできます。必ずしも、がんの保障と貯蓄を1つの保険で得なくてはならないわけではないので、そういった比較もきちんと行いましょう。
5. お得ながん保険を選択するためのコツは?
ここまで、掛け捨て型か貯蓄型かという切り口でがん保険について見てきました。とはいえ、自分に合ったがん保険を検討するうえでは、ほかにも考慮すべきポイントがあります。
5-1. 保険期間は「定期タイプ」より「終身タイプ」が人気
特に着目すべきなのが。保険期間です。がん保険の場合、一生涯保障がつづく「終身タイプ」と、5年・10年など一定期間のみ保障がつづく「定期タイプ」があります。
一般的に、定期タイプの方が終身タイプよりも保険料は安くなりますが、更新時にはそのときの年齢と保険料率で再計算されるため、更新するごとに保険料は高くなります。対して終身タイプは、加入時の保険料が一生涯変わりません。
高齢になるほどがんへのリスクは高まるため、一生涯保障が続き保険料も変わらない終身タイプのほうが人気は高くなっています。
5-2. 実は保障内容も含めた判断がとても重要
がん保険にはさまざまな保障が用意されています。そのため、掛け捨て型か貯蓄型かという観点だけでなく、定期タイプか終身タイプか、あるいは保障内容については、がんと診断された際に支払われる診断給付金の支払い条件はどうなっているか、入院の短期化に応じてニーズが高まっている通院に対する保障はどうなっているかなど、自分に合った保障内容や保険料をトータルで判断することが大切になります。
6. まとめ:自分のニーズに合ったがん保険を選ぼう!
保険料の安さが魅力の掛け捨て型がん保険。保険料をできるだけ安く抑えつつ万一の保障を得たいという人にとってはうってつけです。ここで解説したように、掛け捨て型のメリットは貯蓄型のデメリット、貯蓄型のメリットは掛け捨て型のデメリットというような関係にあるので、とくに貯蓄型との違いをきちんと踏まえて、自分のニーズに合った選択をすることが大切です。

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