生命保険の解約返戻金を受け取ったときに税金はかかるの?
また、かかるとしたら税額はどれくらい? 確定申告は必要?
解約返戻金を受け取るときになって、そんな疑問が浮かんできて困っていませんか?
生命保険の解約返戻金は、支払った保険料に対して利益がでれば所得税の対象になりますし、確定申告が必要になるケースもあります。
どんなときに税金がかかるのか、申告は必要なのかということを理解していないと、申告漏れになってしまい税務署から指摘されてしまう可能性もあります。そんなことにならないように、解約返戻金に対する税金について正しく理解しておきましょう。
なお、法人契約の場合の解約返戻金への課税については「4. 法人保険の解約返戻金にかかる税金」をご覧ください。
目次
1. 解約返戻金にかかる税金とは?
生命保険の解約返戻金を受け取ったときには、税金がかかる可能性があります。どんなときに税金がかかるのでしょうか?
1-1. 利益がでれば所得税の対象となる
生命保険を解約したときの解約返戻金は、保険契約者が受け取ります。また、保険契約者は保険料を支払ってきた保険料負担者でもあります。したがって、もし保険契約者が受け取った解約返戻金額が、それまでに支払った保険料の総額よりも多い場合には保険で利益を得たことになり、その差益が一時所得として所得税の課税対象となります。
逆にいうと、解約返戻金が支払った保険料の総額を下回っている場合は課税されることはありません。
ちなみに解約返戻金で利益がでるのは、終身保険で保険料を全て払い込んだあとに解約した場合や長期の定期保険で積立金が多く貯まっているタイミングで解約した場合、変額保険で大きく運用益が出ている場合などなので、そういうときは特にご注意ください。
1-2. 贈与税になってしまうケースもある
本来、生命保険契約では、契約者=保険料負担者=解約返戻金受取人となるのが原則です。
しかし夫が妻の保険料を負担するなど、一部で、実は保険契約者以外が保険料を負担しているというケースもあるでしょう。そのような場合は保険料を支払った人と解約返戻金を受け取った人が別人ということになりますので、税務上は実質的なお金の流れから贈与税がかかることになります。
1-3. 税金がかかるかどうかの判別法
解約返戻金に税金がかかるかどうかは以下のように判断できます。
ただし、所得税の対象となる場合でも、一時所得となる収入が特別控除額以内であれば非課税となります。また、一定の条件で確定申告が不要(実質非課税)となるケースがあります。
保険料負担者と解約返戻金受取人(保険契約者)が違う場合として以下のようなケースが考えられます。
- 妻が契約している保険の保険料を夫が支払っている
- 子が契約者の保険の保険料を親が支払っている
- 親が契約者の保険の保険料を子が支払っている
2. 所得税の計算
解約返戻金が所得税の対象となる場合の一時所得の計算例と所得税の申告について説明します。
2-1. 一時所得の計算例と課税額
Aさん(65歳)が終身保険を解約して解約返戻金3,973,000円(支払保険料総額3,412,800円/返戻率116.4%)を受け取ったケースの一時所得を計算してみましょう。なお、Aさんには解約返戻金以外の一時所得はないものとします。
一時所得の金額 =
3,973,000円 - 3,412,800円 - 500,000円(特別控除)= 60,200円
一時所得には50万円の特別控除があるため、解約返戻金で得た利益が50万円以下の場合は一時所得は0円となり課税されないことになります。
次に、この一時所得60,200円への課税額ですが、一時所得は所得金額の1/2を他の所得と合計して総合課税されます。
したがって、この場合に実際に課税されるのは60,200円の半分の30,100円となります。
税率は、全体の所得額によって変わってきますが仮に10%だとすると、Aさんが受け取った解約返戻金にかかる所得税は3,010円ということになります。また、所得税と同様に住民税も課税されます。
※ここでは復興特別所得税は考慮していません
この事例は解約返戻金の返戻率が116.4%とかなり高い数字にしていますが、一時所得には50万円の特別控除があるため、解約返戻金以外の他の一時所得がない場合は、これくらいの高返戻率でなければ課税対象とはなりません。
また、課税対象となった場合でも、一時所得はその半額しか課税されないので結果的に解約返戻金にかかる税金は少額ですみます。
2-2. 確定申告は必要か?
解約返戻金を受け取った場合に確定申告が必要かどうかですが、上記例のようにして一時所得を計算して、一時所得があった場合(その額が0円超の場合)は確定申告が必要となります。
ただし、本来確定申告の必要がない給与所得者の場合で、解約返戻金を含め給与以外の所得が20万円以下のときは確定申告をしなくてもよいことになっています。その場合は、結果的には税金も非課税ということになります。
3. 贈与税の対象となると税金が高くなるので注意が必要
もし保険料を支払った人と解約返戻金を受け取った人が違うような場合は、解約返戻金に贈与税がかかります。この場合は、保険料をいくら支払ったかに関係なく受け取った解約返戻金額すべてが課税対象となります。
贈与税には110万円の基礎控除があるので、1年間に贈与を受けた額(総額)が110万円までは非課税ですが、110万円を超える場合は、超えた額に対して税金がかかります。
贈与税は、一時所得に対する所得税よりも高額となります。生命保険に加入するときはこの点に注意が必要です。契約者と保険料負担者の関係をきちんと整理しておきましょう。
4. 法人保険の解約返戻金にかかる税金
ここまで個人契約の保険について説明してきましたが、法人契約の場合を簡単に補足します。
法人契約の生命保険を解約して会社に解約返戻金が入ってきた場合は、解約返戻金からその生命保険契約についての資産計上額を差し引き、差額がプラスのときはその額が益金となり法人税がかかります。掛け捨ての保険で、保険料が全額損金になっていた場合は受け取った解約返戻金全額が益金となります。
5. まとめ:解約返戻金に税金がかかるケースは少ない
解約返戻金は一時所得という所得になり、所得税の対象となります。
ただし、一時所得が解約返戻金のみの場合は、実際に課税されるのは支払った保険料に対して50万円超の利益があったときであり、実質的にこのようなケースはそう多くはないでしょう。
また課税される場合でも、一時所得はその1/2にしか課税されないため最終的な税額は少なくてすむようになっています。
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