終身保険とは、保険期間に限りがなく保障が一生続く生命保険です。生命保険には、ほかにも定期保険や養老保険がありますが、どちらも保険期間には限りがあります。
そのため、終身保険には終身保険ならではの活用法があります。
例えば、自分のお葬式代を遺族に負担させたくない場合に、お葬式代分の終身保険に入っておけば家族にお金を残すことができます。人はいつかは必ず死亡しますが、いつ死亡するかはわかりません。だから、お葬式代の準備には保障が一生続く終身保険が適しています。
このように生命保険は、保険に入る目的によって、適している保険の種類がかわってきます。もし、お葬式代の備えのために定期保険に入っていて、定期保険が切れた後に死亡したとしたら、肝心なときにお金を残せないことになってしまいます。
保険は安くない商品です。せっかく加入した保険を無駄にしないためには、終身保険はもちろん、定期保険や養老保険も含めて生命保険がどのような保険であるのか、基礎知識としてその基本的な役割を理解しておくことが大切です。
ここでは終身保険について、そのしくみや特徴をわかりやすく解説するとともに、加入するときの確認ポイントや活用例も紹介しています。この記事を読めば、本来の死亡保障としての使い方に加えて、貯蓄のための使い方なども理解でき、正しく終身保険を活用できるようになれます。
目次
1.終身保険とは?
終身保険とは、一生涯、死亡保障が続く生命保険です。終身保険の終身とは、まさに一生という意味です。したがって終身保険に入っておくと、何歳で死んだとしても死亡保険金を受け取ることができます。そういう意味では保険料の払い損にはならない保険といえます。
また終身保険には、長く保険に加入しているとお金が貯まっていくという性質もあります。このことを利用すると、将来必要となる資金を終身保険で貯めていくこともできます。とても便利な保険なので、そのしくみを理解してうまく活用しましょう。
1-1. 大きく3種類ある生命保険の一つ
生命保険には、終身保険、定期保険、養老保険と、基本となる保険が3種類あります。この3つの保険は、保険期間や貯蓄性の有無などに違いがあります。
このうち終身保険は、一生涯、死亡保障が続く保険で保険期間に終わりはありません。つまり保険としての満期はありません。また、いつかは必ず保険金を受け取れることになりますので、保険期間が一定で保険金を受け取れない可能性のある定期保険と比べると保険料が割高になっています。
1-2. 終身保険のしくみ
死亡保障が一生続き、契約した保険金額はずっと一定です。保険料は生きていて保険を継続している限り払い続ける終身払いもありますが、通常は60歳、65歳など、加入時に決めた年齢までに全て払い終える短期払いにすることが多いようです。これらのことを含め、しくみを図にすると以下のようになります。
1-3. 貯蓄性があって解約返戻金がある
終身保険では、いつか必ず訪れる保険金の支払いに備えて、保険料の一部が積み立てられています。そのため途中で解約した場合には、その積立金の中から解約返戻金というかたちでお金が戻ってきます。ただし、解約すると保険は終了し、その後の保障はなくなりますのでご注意ください。
解約返戻金は、上図のように加入して年月が経過するにしたがって金額が大きくなっていきます。また一般的に、保険料を短期払いにして途中で全て払い終わった場合は、そのあたりから解約返戻金が支払った保険料の総額よりも多くなります。支払保険料総額に対する解約返戻金の割合を返戻率といいますが、このように解約返戻金の額の方が大きくなる(返戻率が100%を超える)と、解約によりお金が増えて戻ってくることになります。このことが終身保険が貯蓄性が高いといわれている理由です。
終身保険を貯蓄として利用する場合は、この返戻率が大きいほどお金が増えることになります。
1-4. 保険料を支払う期間
終身保険のしくみのところで少しふれましたが、終身保険の保険料の支払期間には終身払いと短期払いの2種類があります。
1-4-1.終身払い
保険が続く限り、すなわち生存している限り保険料を払い続けていく方法です。
1-4-2.短期払い
保険加入時に、保険料の支払いをいつまでに終えるかという保険料払込期間を決めて、それまでに全ての保険料を支払う方法です。たとえば60歳、65歳などの定年退職年齢にあわせて保険料を払い終わるようにすると、退職後に保険料を支払うことなく死亡保障を確保することができます。
この保険料払込期間が終了することを終身保険の満期だと思っている人がまれにいるようですが、保険料を支払い終わるだけで満期ではありません。終身保険はその後も継続します。
また、貯蓄のために終身保険に加入する場合は、保険料払込期間をいつまでにするかで解約返戻金の増え方が違ってきますのでご注意ください。
1-5.貯蓄用の一時払いタイプもある
通常の終身保険とは別に、貯蓄用の商品として一時払終身保険があります。一時払終身保険では、加入時にすべての保険料を支払い、それを生命保険会社が運用することになります。一定期間経過後に解約すると、支払った保険料よりも大きい解約返戻金を受け取れるため、死亡保障というよりも定期預金のような感覚で利用する貯蓄が目的の商品といえます。この記事では、原則、この一時払終身保険ではない、一般的な終身保険のことを説明しています。
1-6. 理解しておきたい終身保険の特徴
ここまでみてきたように、終身保険には以下のような特徴があります。(一時払いを除く)
- 保険期間は終身(満期はない)
- 貯蓄性があり、解約すると解約返戻金がもらえる(ただし保障はなくなる)
- 保険料を払い終える年齢を決められる(一生払い続けなくてもよい)
- 保険料払込終了後は支払った保険料より解約返戻金の額のほうが大きくなる
- 保険料は定期保険より高い
2. 終身保険に入るときに確認すべき3つのポイント
終身保険に加入する場合は、以下の3つのポイントについて注意するようにしましょう。
2-1. 契約できる年齢と保険金額
商品によって、契約できる年齢や契約できる保険金額に制限がある場合があります。あなたが希望する条件で契約可能かどうかを事前に確認するようにしましょう。
2-2. 保険料払込期間
保険料払込期間を何年または何歳までに設定できるかは、商品によって異なっています。特に貯蓄のために加入する場合は、保険料払込期間をどのように設定できるかによって、貯蓄の有効性が変わってきますので注意が必要です。
2-3. 解約返戻金の額
商品によって保険料積立金の貯まり方が違い、解約した場合の解約返戻金の額も違ってきます。保険設計書等により、何年後に解約すると解約返戻金がいくらになるかという試算を提示してもらえますので、事前に確認するようにしましょう。特に貯蓄のために加入する場合は、解約返戻金がいくらになるのか、また支払った保険料に対して何%が戻ってくるのか(返戻率)をチェックしておくことが大切です。
3. 終身保険はどんなときに加入すればよい?
終身保険は、一生涯保障が続くことと加入期間によって解約返戻金が増えていくことが特徴です。また貯蓄性がある分、定期保険よりも保険料が割高になり、大きな死亡保障の確保にはあまり向いていません。終身保険を活用するときは、この特徴を理解して加入するとよいでしょう。
3-1. いつ死亡するかに関わらず、絶対に必要なお金を残すための保険
終身保険の死亡保障機能としては、保障が一生続くこと、そして長期間保険に加入し続けることがポイントです。そのため、期間限定で必要な死亡保障ではなく、タイミングや年齢に関わらず、死亡したときには必ず必要になる死亡保障を確保するための保険といえます。たとえば以下のようなケースが考えられます。
3-1-1.お葬式代やお墓代を残す
死亡する年齢や家族構成などに関わらず、いつ死亡したとしてもお葬式をしてもらうことになります。また先祖代々のお墓に入れない場合は、お墓を建立してもらうことにもなります。このような費用を死後の整理資金といい、この費用を確実に残すために終身保険に加入します。
3-1-2.死亡時に特定の誰かに確実にお金を残す
もしあなたが死亡したとしたら、あなたの財産は配偶者やこども・親・兄弟などから民法で決まった法定相続人に該当する人が分割して相続することになります。しかし、このうち特定の誰かに間違いなくお金を残したい場合は、その人を生命保険の受取人にしておくと遺言などの手続きをとらなくても、確実にお金を残せることになります。このようなケースでも定期保険などのように保険期間が限定された保険ではなく終身保険に加入するとよいでしょう。
3-2. 貯蓄性を生かした活用例
終身保険の貯蓄機能を生かして、将来必要となるお金を貯めていくという活用法があります。たとえば以下のようなケースが考えられます。
3-2-1.老後資金の準備
男女とも平均寿命が延びてきていて、定年退職以後の人生も長くなっています。そのため、介護や家のリフォーム、生活費の不足など、老後に予期せぬ資金需要が発生する場合もあります。そのようなときに備えて終身保険に入っておき、あるいはもともと死後の整理資金用に入っておいた終身保険を転用して、解約返戻金を活用することができます。
3-2-2.学資保険代わりにこどもの教育資金を準備
こどもの大学進学のための資金を学資保険でたくわえる人は多いですが、終身保険(特に低解約返戻金型)の貯蓄性を生かして教育資金をためていくことができます。その場合には、保険料払込期間を10~15年くらいの短期間に設定します。
4.終身保険の種類とその特徴
終身保険は、積立金の運用の仕方などのしくみの違いによりいくつかの種類に分けられます。
■おもな終身保険の種類と特徴
終身保険 | 加入時に決めた保障が一生涯続き、万一の場合に死亡保険金を受け取れる基本となる保険です。前章までで説明してきたオーソドックスな終身保険です。 |
---|---|
低解約返戻金型終身保険 | 低解約返戻金型終身保険は、保険料を支払っている期間に保険を解約した場合の解約返戻金額を低くして、その代わりに保険料を割安にした終身保険です。 ⇒ 詳しくは「3分でわかる!低解約返戻金型終身保険の基本と4つの活用法」 |
積立利率変動型終身保険 | 将来保険金を支払うために保険会社が積み立てているお金の運用利率が、世の中の金利の動向により変動する終身保険です。ただし加入時の予定利率は最低保証されます。 |
変額終身保険 | 将来保険金を支払うために保険会社が積み立てているお金を、株式などで運用する終身保険です。運用成績により死亡保険金が増減します。ただし、運用成績が悪い場合でも契約した死亡保険金額は保障されます。 |
外貨建て終身保険 | 将来保険金を支払うために保険会社が積み立てているお金を、米ドルや豪ドルなどで運用する終身保険です。外貨ベースでは受け取れる死亡保険金額は決まっていますが、そのときの為替レートにより日本円に換算した金額は増減します。 ⇒ 詳しくは「リスクがこわい!?ドル建て終身保険選びのチェックポイント」 |
上記種類は、組み合わせによって低解約返戻金型の積立利率変動型終身保険や外貨建て終身保険などもあります。
最近は、保険会社や保険代理店等から「外貨建て終身保険」を提案されるケースが増えてきています。もし、外貨建て終身保険を検討されているという方は、下記ページでそのメリット・デメリットや注意点等をご確認ください。
・「外貨建て保険|入っていい人・いけない人&加入時の3つの注意点」
5. まとめ:一生の死亡保障と貯蓄の2面性がある終身保険
終身保険は、生命保険の3つの基本となる保険のなかで、唯一保険期間が終身の保険です。そのため死後の整理資金の準備に活用するという考え方が基本です。そのほか、相続対策などに利用したり、貯蓄性を生かして将来の必要資金をたくわえていくために加入するという活用法もあります。
- 保険期間は終身(満期はない)
- 貯蓄性があり、解約すると解約返戻金がもらえる(ただし保障はなくなる)
- 保険料を払い終える年齢を決められる(一生払い続けなくてもよい)
- 保険料払込終了後は支払った保険料より解約返戻金の額のほうが大きくなる
- 保険料は定期保険より高い
生命保険の基本として、定期保険と養老保険についての記事もあわせてご覧ください。
・「定期保険とは?|しくみ・特徴~加入時の4つの確認ポイント」
・「養老保険とは?|特徴と加入時に確認すべき5つのポイント」
※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。