養老保険とは、保険期間中に死亡しても満期まで生存していても、どちらの場合でも同額の保険金が受け取れる生命保険です。いわば、保険に加入した時点で、将来保険金を受け取れることが決まっているようなものです。
生死にかかわらず保険金が受け取れるよい保険なのですが、その分保険料が割高なため、高額な死亡保障を養老保険で確保しようとすると保険料が高すぎて支払えないということになってしまいます。そのため養老保険は、死亡保障よりも満期保険金を受け取ることを前提に貯蓄目的で活用されることが多い保険です。
実際に、かつて金利が高かった時代にはとても人気がありました。しかし低金利の現在では、貯蓄商品としてのメリットは残念ながら感じられません。
このように、養老保険は貯蓄性の高い保険ですが、加入目的やそのときの経済情勢などによっては必ずしもおすすめできません。ここではそんな養老保険について、そのしくみや特徴をわかりやすく解説していきます。この記事を読めば、養老保険の活用法や失敗しないための注意点を簡単に知ることができます。
死亡保障をお考えの方は、あわせて定期保険や終身保険についての記事をご参照ください。
・「定期保険とは?|しくみ・特徴~加入時の4つの確認ポイント」
・「終身保険とは?|その特徴と確認すべき3つのポイント」
目次
1. 養老保険とは?
養老保険とは、定められた保険期間中に死亡した場合に死亡保険金が、保険期間が終了するまで生きていた場合に満期保険金が支払われる生命保険です。死亡保障機能と貯蓄機能が揃った保険ですが、どちらかというと貯蓄がメインで、もし貯蓄中(保険期間中)に死亡した場合は、目標としていた貯蓄額が保険金として支払われるといったとらえ方をするとよいでしょう。
1-1. 大きく3種類ある生命保険の一つ
生命保険には、終身保険、定期保険、養老保険と、基本となる保険が3種類あります。この3つの保険は、保険期間や貯蓄性の有無などに違いがあります。
このうち養老保険は、生存したまま保険期間が終了しても満期保険金が受け取れ、積み立て貯蓄に似たような機能がある保険です。このため3種類の生命保険の中では最も保険料が高くなります。
1-2. 養老保険のしくみ
あらかじめ保険期間が決まっていて、契約した保険金、保険料はずっと一定です。保険期間が終わると、死亡保険金と同額の満期保険金を受け取ることができます。これらのことを含め、しくみを図にすると以下のようになります。
1-3. 満期保険金と解約返戻金
養老保険では、将来の満期保険金の支払いに備えて生命保険会社が保険料の一部を積み立てています。この積立金は、保険期間が進むにつれてたまっていき、保険の満期時にちょうど満期保険金額になるように計算されています。
また、養老保険にはこの積立金があるので、もし保険期間の途中で解約した場合には、積立金の中から一定の金額を受け取ることができます。これが解約返戻金です。
ちなみに、かつて金利が高かった時代には、満期保険金は支払った保険料の総額よりも多かった(上図参照)ので、貯蓄商品として人気がありました。しかし低金利の現在では、満期保険金はわずかに増える程度か、もしくは支払った保険料の総額よりも少なくなる(貯蓄商品としてみたら元本割れ)商品もあり、貯蓄商品として加入する場合は注意が必要です。
なお、満期保険金と解約返戻金には税金がかかる場合があります。詳しくは以下のページをご覧ください。
・「満期保険金にかかる3パターンの税金と確定申告の必要性」
・「解約返戻金にかかる税金を簡単に判別する方法」
1-4. 満期保険金の受け取りは先延ばしできる
満期保険金は、据え置きといって、満期時に受け取らずに生命保険会社に預けておき後から受け取ることができます。また保険会社によっては、年金のように分割して満期保険金を受け取ることができる場合もあります。
なお、満期保険金を据え置いた場合は、生命保険会社の所定の利率で利息がつきます。
また、満期保険金は受け取ったときに所得税(契約者が受け取った場合)がかかりますが、満期保険金を据え置いた場合であっても、満期の年に課税されることになりますので注意が必要です。また据え置き期間中の毎年の利息には雑所得として所得税がかかります。
1-5. 通常、更新はないが、一部に自動更新される商品も
養老保険と同様に保険期間が一定の定期保険では、保険期間終了後に同じ保障内容で保険を継続させる更新という制度があります。しかし養老保険には、通常は更新がなく、保険期間が終わり満期保険金を受け取ると保険は終了します。
ただし、一部の保険会社では自動的に更新されるタイプの養老保険を販売しているところもあります。加入するときに確認が必要です。
1-6. 理解しておきたい養老保険の特徴
ここまでみてきたように、養老保険には以下のような特徴があります。
- 保険期間は一定で、通常は更新はない(一部に更新する商品もあります)
- 死亡した場合は死亡保険金、生存していた場合は満期保険金を受け取れる
- 途中で解約したら解約返戻金がある
- 満期保険金は一定期間据え置くことができる
- 保険料は3種類の生命保険のなかで最も高い
2. 養老保険に入るときに確認すべき5つのポイント
養老保険に加入するときには以下の5つのポイントについて注意するようにしましょう。
(1) 契約できる年齢と保険金額
商品によって、契約できる年齢や契約できる保険金額に制限がある場合があります。あなたが希望する条件で契約可能かどうかを事前に確認するようにしましょう。
(2) 契約できる保険期間
商品によって、契約できる保険期間が異なっています。あなたが希望する条件で契約可能かどうかを事前に確認するようにしましょう。
(3) 満期保険金の返戻率
支払った保険料総額に対する満期保険金の額の割合を返戻率といいます。養老保険を貯蓄商品とみた場合、支払った保険料より満期保険金の額の方が大きい、すなわち返戻率が100%を超えたほうがよいということになります。いくつかの商品を比較して、できるだけ返戻率の高いものを選んだほうがメリットがあります。
現在は、低金利時代で養老保険の予定利率も低いため、十分な貯蓄効果は期待できません。
(4) 満期保険金の受け取り方
普通は、満期時に満期保険金を一括で受け取りますが、年金として受け取れる商品があります。そのような受け取り方を希望する場合は、対応した商品かどうかを確認した上で加入するようにしましょう。
(5) 自動更新かどうか?
通常、養老保険には更新はありませんが、一部に自動更新される商品があります。もし養老保険を更新すると、年齢が上がっている分保険料が高くなり、満期保険金の返戻率は当初の契約よりも下がることになります。貯蓄性が悪くなるので、加入する保険が自動更新タイプかどうか加入前から確認しておき、満期が近くなったら更新するかどうかを冷静に判断することが大切です。
3. 養老保険はどんなときに加入すればよい?
養老保険は、満期保険金があることが特徴です。死亡保障については、保険期間が限定され保険料も高いことから、定期保険や終身保険のようなメリットがないため、基本は貯蓄を重視した加入が前提となります。
3-1. 貯蓄中の死亡保障を確保しながらお金を積み立てたいとき
基本的には保険の満期に向けてお金を積み立てていくイメージですが、保険期間の途中で死亡してしまった場合でも、満期保険金と同額のお金を残したいといった事情があるときに加入するとよいでしょう。
- こどもの教育資金の貯蓄
こどもの教育資金をためていく保険としては学資保険の方が一般的ですが、貯蓄中(保険期間中)に万一死亡してしまった場合でも積み立て目標額をしっかり残せるので、養老保険を活用することもできます。学資保険はこどもの年齢によっては加入ができなくなりますので、そのような場合に養老保険を検討してみるとよいでしょう。ただし、貯蓄性がどれくらいあるかは、満期保険金の返戻率をきちんとチェックする必要があります。返戻率が低いなら、低解約返戻金型の終身保険を活用したほうがよいことがあります。
3-2. 個人年金保険では対応できないタイミングで満期保険金を受け取りたいとき
個人年金保険は、年金を受け取れる年齢や保険料を支払う期間などが制限されています。個人年金保険では対応できないプランが必要な場合に養老保険で資金準備ができます。
- 早期リタイアをして公的年金が出るまでの期間の生活資金を用意
たとえば、50歳、55歳などで早期リタイアする予定の人が、早期リタイア後の生活資金やリタイア後にやりたいことのための資金を用意するために活用することができます。この場合も満期保険金の返戻率を確認し、終身保険など他の商品とどちらが有利か比較することが大切です。
4.養老保険のなかまの保険とその特徴
養老保険は、保険期間中に死亡した場合の死亡保障に加えて、保険期間終了時に生存していた場合の生存保険金(満期保険金)があり、貯蓄として活用できる保険です。
このような貯蓄的な保険のなかまをまとめると以下のようになります。
■貯蓄的な保険のなかまとその特徴
養老保険 | 一定の保険期間中の死亡保障と保険期間終了時まで生きていた場合の貯蓄機能が半々の生命保険です。 |
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変額有期保険 | 養老保険の積立金を株式などのリスク資産で運用する保険です。そのため保険金は運用実績により変動します。死亡保険金には最低保証がありますが、満期保険金には最低保証がなく元本割れしてしまう場合もあります。 ⇒詳しくは「すぐわかる!変額保険のメリット・デメリットと上手な活用法>3. 変額有期保険」 |
個人年金保険 | 年金支払開始時まで生存していた場合に、決められた年金を受け取れる保険です。 ⇒詳しくは「個人年金保険とは?|しくみと税金メリットを生かした貯蓄法」 |
学資保険 | 通常、契約者が親で被保険者がこどもとなる契約の保険で、こどもの進学にあわせて学資金等を受け取れる保険です。 ⇒詳しくは「学資保険は必要か?その判断基準と選ぶときの6つのポイント」 |
5. まとめ:原則、貯蓄のための保険
養老保険は、生命保険の3つの基本となる保険のなかで、もっとも貯蓄性のある保険です。そのため死亡保障よりも貯蓄を目的として加入するのが基本です。加入するときには満期保険金の返戻率が何%かということをよく確認しましょう。貯蓄目的の加入なら、返戻率が100%に満たない元本割れ商品は選択すべきではありません。養老保険は、今よりも金利が上がったときに活用範囲が広がる保険だといえます。
- 保険期間は一定で、通常は更新はない(一部に更新する商品もあります)
- 死亡した場合は死亡保険金、生存していた場合は満期保険金を受け取れる
- 途中で解約したら解約返戻金がある
- 満期保険金は一定期間据え置くことができる
- 保険料は3種類の生命保険のなかで最も高い
最近はマイナス金利の影響による運用難から保険の貯蓄性が低下し、返戻率が悪くなっています。そのため保険会社は、貯蓄用の保険として、より予定利率(運用利率のようなもの)が高い外貨建て保険の販売に力を入れています。実際に提案された方も多いのではないでしょうか?
ただし、外貨建て保険はリスク商品で、為替変動により大きく得する場合もあれば損する場合もある保険です。加入を検討される場合は、下記ページを参考にしてご判断ください。
・「リスクがこわい!?ドル建て終身保険選びの3つのチェックポイント」
・「外貨建て保険|入っていい人・いけない人&加入時の3つの注意点」
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