生命保険には満期保険金が出るものがあり、貯蓄商品として利用されています。しかし、この満期保険金には税金がかかり、預金のように源泉徴収で納税がすむとは限らず、確定申告が必要なケースもあります。
ここでは、そもそも満期保険金とは何かという基本から、受け取ったときにかかる3パターンの税金や確定申告の必要性までをまとめてわかりやすく説明していきます。
満期保険金のある生命保険を貯蓄として利用すると、税制上のメリットもありますので、この記事を参考にしてぜひうまく活用してください。なお、その際に満期保険金の受取人を第三者にしてしまうと、贈与税の対象となり税率が高くなってしまうことがあるので気をつけてください。
※2019年3月6日 税制確認
目次
1. 満期保険金が出る保険
満期保険金とは、生命保険において、保険の対象となっている人(被保険者)が保険期間終了(満期)まで生存していた場合に支払われる保険金のことです。
この満期保険金が出る主な保険には、養老保険と学資保険があります。個人年金保険も同様のしくみで生存していたらお金がもらえる保険ですが、個人年金保険の場合は受け取るお金を年金といいます。
また、まれに終身保険に満期保険金があると誤解している人がいますが、終身保険は保険期間が終身(一生涯)であり、そもそも満期がありませんので満期保険金もありません。貯蓄性があって途中で解約した場合に解約返戻金があるので、解約返戻金の話と混乱しているものと思われます。
1-1. 養老保険
養老保険は生死混合保険とよばれる保険で、保険期間終了まで生きていても、途中で死亡しても保険金がもらえます。保険期間中に死亡した場合は死亡保険金が受け取れ、保険期間終了まで生きていたら死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れます。
1-2. 学資保険
こどもの教育資金を蓄えていくのに利用される貯蓄型の保険です。こどもが生まれて幼稚園くらいまでの間に加入して、こどもが大学に入学するころの17~18歳で満期をむかえ、満期保険金を受け取るというのが基本的なしくみです。満期保険金を大学入学資金に使えるようになっています。
ただし、現在、販売されている学資保険は、保険期間の途中の中学や高校入学時にお祝金や学資金が支払われたり、大学入学後に毎年、学資年金が支払われるようになっていたりして、必ずしも保険の満期時に満期保険金を受け取るとは限りません。
2. 満期保険金にかかる税金、3パターン
満期保険金を受け取ると、所得税の対象となります。
えっ!税金がかかるのと思った人もいるかもしれませんが、所得があればそこに税金はつきものです。ただし、所得税の対象となるといっても、契約内容や受け取った金額によっては結果的に税金を支払わなくてすむ場合も多いので安心してください。
2-1. 一時所得として所得税がかかる場合
満期保険金受取人が保険契約者(保険料負担者)である場合、受け取った満期保険金は一時所得として課税対象となります。保険に入って保険料を払ってきた人が満期保険金を受け取るというのは最も一般的なパターンとなります。
それでは、この場合に所得税がどのように計算されるか事例を見てみましょう。
- 加入保険:養老保険(無配当)
- 契約者(=満期保険金受取人):30歳男性
- 保険金:100万円
- 保険期間:20年
- 保険料:3,994円(月額)
この場合、この男性は20年後に100万円受け取ります。ただし、この100万円すべてに対して課税されるわけではありません。この男性は20年の間保険料を支払ってきた結果として100万円受け取った訳ですから、今まで支払ってきた保険料はいわば100万円を受け取るための必要経費のようなものだからです。したがって課税されるのは満期保険金から支払った保険料を差し引いた利益部分に対してということになります。
それでは、この事例の一時所得がいくらになるか計算してみましょう。
- 一時所得の金額 = 総収入金額(満期保険金) - 収入を得るために支出した金額(払込保険料) - 特別控除額(最高50万円)
この式にあてはめると
- 一時所得の金額 = 1,000,000円 - 3,994円×12月×20年 - 最高50万円
= 1,000,000円 - 958,560円 - 最高50万円
= 41,440円 - 最高50万円
= 0円
この保険で得られた利益は41,440円ですが、50万円までは控除されるので結局税金はかからないということになります。
それでは、もっと大きい保険金額の場合はどうでしょうか。
- 加入保険:養老保険(無配当)
- 契約者(=満期保険金受取人):30歳男性
- 保険金:1,000万円
- 保険期間:20年
- 保険料:39,540円(月額)
- 一時所得の金額 = 10,000,000円 - 39,540円×12月×20年 - 最高50万円
= 510,400円 - 最高50万円
= 10,400円
この場合は、10,400円が一時所得金額となります。ちなみに一時所得は所得税の計算において、その1/2が他の所得と合計され総合課税されることになっています。
したがって、この場合は10,400円の1/2である5,200円に対して所得税がかかるということになります。一般的な会社員であれば所得税率は10%になるので、税額は520円となります。1,000万円の養老保険に入るくらいなので、高額所得者であったとして所得税率33%で計算しても税額は1,716円です。
2-2. 一時所得でなく源泉分離課税される場合
満期保険金は、通常、一時所得となりますが、金融類似商品とみなされる一部の保険では例外的に源泉分離課税となります。
<対象となる保険商品>
○一時払養老保険等で保険期間が5年以下のもの、または契約日から5年以内に解約したもの
金融類似商品となる保険の満期保険金は、払込保険料を差し引いた差額(利益部分)から20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が源泉分離課税されます。つまり、満期保険金を受け取るときに、すでに税金が引かれた残りの金額を受け取ることになります。
- 加入保険:一時払養老保険(無配当)
- 契約者(=満期保険金受取人):30歳男性
- 保険金:100万円
- 保険期間:5年
- 一時払い保険料:977,429円
この場合の利益に当たる金額に対する税額を計算します。
(1,000,000円 - 977,429円)× 20.315% = 4,585円
4,585円が源泉徴収され、満期保険金として995,415円受け取ることになります。
2-3. 贈与税がかかる場合
満期保険金受取人が保険契約者(保険料負担者)とは別人である場合は、受け取った満期保険金が贈与とみなされ、贈与税がかかります。
保険料を支払った人と満期保険金を受け取った人が別人ということは、保険という商品を経由して、保険料を払った人が満期保険金を受け取った人にお金をあげた(贈与した)ことになるからです。
それでは、この場合に贈与税がどのように計算されるか事例を見てみましょう。
- 加入保険:養老保険(無配当)
- 契約者(=保険料負担者):30歳男性
- 満期保険金受取人:契約者の妻
- 保険金:100万円
- 保険期間:20年
- 保険料:3,994円(月額)
この場合は妻が受け取った100万円が贈与税の対象となります。ただし、1年間に受けた贈与の額が110万円までは非課税なので、この妻がその他の贈与を受けていなければ税金はかかりません。
- 加入保険:養老保険(無配当)
- 契約者(=保険料負担者):30歳男性
- 満期保険金受取人:契約者の妻
- 保険金:1,000万円
- 保険期間:20年
- 保険料:39,540円(月額)
この場合は妻が受け取った1,000万円が贈与税の対象となります。この妻に他の贈与がないとすると、1,000万円から110万円を引いた残りの890万円に贈与税がかかります。
その場合の贈与税は、890万円×40%-125万円=231万円となります。
贈与税は所得税よりも税率が高い税金なので、満期保険金の受取人を誰にするかは契約時に注意する必要があります。
3. 学資保険でも学資年金は雑所得として課税される
最近の学資保険は、満期保険金ではなく学資年金としてお金を受け取れるようになっているものがあります。例えば、大学入学後、毎年一定額を受け取るようになっているものがそうです。
学資年金の場合は、満期保険金とは違った性質の給付となりますので、所得区分は一時所得ではなく雑所得として課税されます。
満期保険金にかかる税金とは違う話になってしまいますが、関連したケースとして雑所得についての概要を簡単に説明します。
学資年金は、受け取った金額(その年の学資年金の額)から、支払った保険料のうち受け取った学資年金に相当する額を差し引いた金額が雑所得になり、他の所得と合計され総合課税されます。この場合は一時所得のような50万円の特別控除はありません。
※年金にかかる税金計算については個人年金保険の記事を参考にしてください。
・個人年金保険にかかる税金の基本と最もトクする受取方法
4.満期保険金を受け取ったときに確定申告が必要か?
満期保険金を受け取ったときに税金がかかる場合がある(原則、課税対象)ことをみてきましてが、ということは確定申告が必要になるのでしょうか?
以下のような場合は確定申告が必要です。
- 満期保険金の所得と給与所得以外の所得との合計が20万円を超える人(一般的な給与所得者の場合)
通常は確定申告が不要な給与所得者の場合、満期保険金による一時所得が20万円を超える、または、給与以外のその他の所得と満期保険金の一時所得との合計が20万円を超えるときは確定申告が必要です。計算方法は、2-1.一時所得として所得税がかかる場合をご参照ください。
- もともと確定申告をしている人
満期保険金の受け取りに関係なく、もともと確定申告が必要な人(※)は、満期保険金による一時所得の金額の大小にかかわらず、確定申告時に受け取った満期保険金の申告が必要です。(※)個人事業主、年間収入が2,000万円超の給与所得者、年間収入が2,000万円以下の給与所得者で給与所得以外に20万円を超える所得がある人、医療費控除・寄付金控除等の申請者等
- 満期保険金が贈与税の対象となる人
保険料を支払った人と違う人が110万円を超える満期保険金を受け取った場合は、贈与税の申告が必要です。
満期保険金を受け取って確定申告が必要な方は、忘れずに申告をしてください。法律により、生命保険会社は100万円を超える保険金を支払った場合に、税務署に支払調書を提出することになっています。忘れていると、税務署から指摘を受けることになる場合があります。
また、ここでは満期保険金に関する基本的な税金の考え方を説明していますが、実際に満期保険金にかかる税金についての正確な情報は、生命保険会社、税務署、税理士などにご相談ください。
5. まとめ:税制メリットもあってお得に貯蓄
満期保険金は、生命保険において、保険の対象となっている人(被保険者)が保険期間終了(満期)まで生存していた場合に支払われる保険金です。養老保険や学資保険が満期保険金のある代表的な保険金です。
満期保険金は、支払った保険料よりも大きい金額を受け取った場合は利益に該当する部分に税金がかかります。しかし契約者(保険料負担者)と満期保険金受取人が同一人物の場合は一時所得という区分になり、50万円の控除額があるので、満期保険金の額によっては非課税になったり、課税される場合でも年収や満期保険金の額によっては、預金の利子にかかる20.315%の税金と比べて有利な場合があります。
また保険料の支払い中も、生命保険料控除という所得控除がありますので、所得税や住民税が軽減される効果あります。
このように生命保険を活用した貯蓄には、預金などにはない税制上のメリットがありますので、うまく活用すると目先の利益分以上の利殖効果があります。
※本記事内の税金についての記述および税額の計算例は、平成30年4月1日現在の税制に基づいて説明・試算したものです。今後の税制改革等により内容が変わってくる場合があります。また、税金についての正式な見解等に関しては税務署または税理士にご確認ください。
その他、生命保険にかかわる税金についての記事はコチラ↓
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