つみたてNISAやiDeCoといった、税制優遇のある積立投資が人気を集めています。そんな積立投資のメリットに挙げられるのが「ドル・コスト平均法」の効果。
しかし、名称は聞いたことがあってもどういったものなのか、実はよくわからないという人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ドル・コスト平均法をメリットとデメリットの両面からわかりやすく解説していきます。
目次
1. ドル・コスト平均法とは?
ドル・コスト平均法とは、10~30年など長期スパンでの資産形成を前提として、投資信託などの金融商品を定期的に定額で購入していく投資手法のこと。少額でも毎月定額の投資をすることで、リスクを分散しながらコツコツと資産を増やしていくことができます。
「定額」で購入するドル・コスト平均法では、毎回買い付ける口数が変わります。毎月など定期的に決まった額を購入するという設定をすれば、相場が高いときには少なく、相場が低いとたくさん購入するということが自動的に行われます。一方、「定量」で購入する場合には、毎月決まった口数の購入ではありますが、価格が変動しているため買い付けのたびに支払う金額が変わることになります。
2. ドル・コスト平均法のメリット
ドル・コスト平均法の場合、毎月など定期的に定額を購入するので、いったんその設定をしてしまえば、あとはほったらかしにすることができます。また、相場に関わらず購入額が固定されるため、基準価額が高いときには購入口数が少なく、基準価額が低いときには購入口数が多くなります。仮に基準価額が下がっても、「たくさん買えた」と考えることができるので、毎日相場をチェックして一喜一憂する必要がありません。また、相場を読み違えて高値掴みをしてしまうといったことも避けられます。
では、具体的にドル・コスト平均法での購入と定量購入でどのような違いがあるのか、比較しながら見ていきましょう。
下の図は、投資信託をドル・コスト平均法で毎月同じ日に30,000円ずつ購入した場合と、毎月3口を定量購入した場合を比較した例です。ドル・コスト平均法で積み立てたほうは、合計で16口購入でき、平均購入単価が9,375円、それに対して定量購入では、15口購入できて平均購入単価は11,000円です。つまり、ドル・コスト平均法のほうが1口多く購入できたうえに、平均購入単価は安く済んでいることがわかります。
■ドル・コスト平均法
※上記例は、わかりやすいように単純化して説明しています。
まとめると、ドル・コスト平均法には以下のようなメリットがあります。
- 定額・定期購入なので手間がかからない
- 高値掴みを避けられる
- 相場の動向に一喜一憂しなくていい
- 平均購入単価を低く抑える効果がある
3. ドル・コスト平均法のデメリット
メリットがある反面、デメリットもあります。
まず、毎月など定期的に定額購入するという購入頻度の高さにより、手数料がかさむことがあること。
例えば、株式手数料は、通常1度の取引額が小さいと手数料率が高い傾向があるため、少額ずつ高頻度で買い付けをするとトータルの手数料が割高になる場合があります。
一方、投資信託であれば購入時手数料は購入額の大小にかかわらず購入金額の1~3%程度かかるのが一般的です。手数料のデメリットはそれほど気にしなくてよいでしょう。さらに、ノーロード(購入手数料が無料)の投資信託もありますので、それらを選ぶと購入手数料は不要です。ちなみに、「つみたてNISA」であれば、すべての商品の購入時手数料が無料です。
次に、「損をしない訳ではない」ということ。メリットのところで平均購入単価を低く抑えられるという話をしました。それは損をしにくいということにつながりますが、損失が出る確率は当然0ではありません。長期的に価格の下落が続けば、購入口数は増えても結果的には損失が出ます。元本保証では決してないので、売るタイミングによって損をすることがあることを理解する必要があります。ただし、かのリーマン・ショックでも、5年後には暴落前の水準に持ち直しています。つまり、下落が続いたとしてもその時を耐えることができれば、利益を得られる可能性は高まるというわけです。下落時にも慌てず、価格が上昇する機会を待てる心、資金、時間の余裕が必要になります。
また、ドル・コスト平均法は短期間で大きな儲けを出す手法ではありません。安値になったときに大量に買うなどのコントロールもできません。長期投資を前提として定額を定期購入するという仕組みは投資初心者にはメリットですが、短期間で大きな儲けを狙いたい人には不向きといえます。
まとめると、ドル・コスト平均法には以下のようなデメリットがあります。
- 手数料がかさむことがある
- 売るタイミングによっては損をすることもある
- 短期間で儲けを狙う人には向かない
- 短期投資には不向きである
4. まとめ:ドルコスト平均法で長期的な資産形成を
ここまで解説したように、ドル・コスト平均法は、株式や投資信託などを定期的に定額購入することで、手間なく、かつリスク分散の効果を得ながら資産運用することができます。長期的に資産形成をしたいけれど相場を頻繁にチェックする時間がないという人などに向いている手法ですが、万能というわけではありません。デメリットも理解しておき、自分に向いた手法かを理解しておくことが大切だといえます。
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目に見えない「金融」を見える化するメディア「Finasee(フィナシー)」にて積立投資のメリット・デメリットについてお金のプロが解説しています。
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