子ども教育費はいくらかかるのでしょうか? またそのための備えとして、学資保険にはいくら入ればいいのでしょうか?
今回は親として気になるこれらの疑問について検証していきます。子どもにかかる教育費の概要と、学資保険の有効な活用法についてぜひ参考にしてください。
目次
1.子どもの教育費はいくらかかるの?
学資保険にいくら入ればよいかを考えるにあたり、子どもにかかる教育費の概要について、幼稚園から高校までの費用は文部科学省のデータを参考に、また大学の費用は(株)日本政策金融公庫のデータを参考に、それぞれの数値を見てみましょう。
1-2.教育費の概要
教育費にかかる費用は以下の表を参考にしてください。実際には、学校による違いもありますし、とくに地域による違いも大きく、都心のほうが教育費が高くなる傾向があります。
なお、幼稚園から高校までの学習費には、学校の授業料などの他にも塾や習い事などの費用も含まれています。また大学の在学費用には、授業料以外にも交通費や教科書代、施設設備費用なども含まれています。
■学習費・在学費などの平均金額(幼稚園~高校)
区分 | 期間 | 公立 | 私立 |
---|---|---|---|
幼稚園 | (1年間) | 234,000円 | 482,000円 |
2年間合計 | 468,000円 | 96,5000円 | |
小学校 | (1年間) | 322,000円 | 1,528,000円 |
6年間合計 | 1,934,000円 | 9,169,000円 | |
中学校 | (1年間) | 479,000円 | 1,327,000円 |
3年間合計 | 1,436,000円 | 3,981,000円 | |
高等学校(全日制) | (1年間) | 451,000円 | 1,040,000円 |
3年間合計 | 1,353,000円 | 3,120.000円 |
(出典)文部科学省「2016年度(平成28年度)学習費調査」より(百の位を四捨五入)
■学習費・在学費などの平均金額(大学)
項目 | 国立大学費用 | 私立大学/文系費用 | 私立大学/理系費用 |
---|---|---|---|
入学費用 | 801,000円 | 904,000円 | 855,000円 |
在学費用 | 1,148,000円 | 1,601,000円 | 1,853,000円 |
4年間の費用合計 | 5,393,000円 | 7,308,000円 | 8,267,000円 |
(出典)日本政策金融公庫「2019年度発表 教育費負担の実態調査結果」より(百の位を四捨五入)
1-2.進路別の教育費の合計は?
子どもひとりにかかる教育費の合計額は、進路の選択によって大きく異なります。例えばすべて公立学校に進学した場合と、全部私立学校に進学した場合とでは2倍以上金額が異なることになります。また医学部や薬学部の場合はもっと高額となります。
参考までに、上記の表から算出した、進路コース別の教育費の合計を見てみましょう。
■進路別教育費の合計(円)
進路コース | 学習費総額 | ||||
---|---|---|---|---|---|
幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高校 | 大学 | |
公立 | 公立 | 公立 | 公立 | 国立 | 10,583,002円 |
公立 | 公立 | 公立 | 公立 | 私立文系 | 12,498,002円 |
公立 | 公立 | 公立 | 公立 | 私立理系 | 13,457,002円 |
公立 | 公立 | 公立 | 私立 | 国立 | 12,350,920円 |
公立 | 公立 | 公立 | 私立 | 私立文系 | 14,265,920円 |
公立 | 公立 | 公立 | 私立 | 私立理系 | 15,224,920円 |
私立 | 公立 | 公立 | 公立 | 私立文系 | 12,994,892円 |
私立 | 公立 | 公立 | 私立 | 私立文系 | 14,762,810円 |
私立 | 公立 | 私立 | 私立 | 私立文系 | 17,307,947円 |
私立 | 私立 | 私立 | 私立 | 国立 | 22,628,509円 |
私立 | 私立 | 私立 | 私立 | 私立文系 | 24,543,509円 |
私立 | 私立 | 私立 | 私立 | 私立理系 | 25,502,509円 |
(出典)文部科学省「2016年度(平成28年度)学習費調査」および日本政策金融公庫「2019年度発表 教育費負担の実態調査結果」より算出
こうしてみると、すべて公立だとしても子ども1人の教育費には1,000万円以上かかることがわかります。そんなにかかるの?とビックリするかもしれませんが、この教育費のすべてを事前の貯金でまかなうというわけではありませんので、安心してください。
2.教育費の支出の現状
教育費は事前の貯金でまかなうわけではなく、その多くはその時点の親の収入などからそのまま教育費として支払われていきます。公立小学校や公立中学までの教育費は、預貯金ではなく毎月の収入から捻出されると考えられます。
また、高校生や大学生になるとかかる教育費が一気に増えていくことになりますが、大学生になると子ども自身がアルバイトなどにより収入を得ることで生活費の一部を自分で支払うようになったり、塾や習い事の費用が減ることで、生活費が減る場合もあります。
また公的制度である「高等学校等就学支援制度」や「各自治体の支援制度」など、返済不要の制度もありますので必要な人はぜひ活用しましょう。
さらに、大学の費用については奨学金や教育ローンもあります。現在こうした「返済が必要な奨学金」を利用して大学進学をしている人の比率は、半数以上にのぼります。
■奨学金を受給している学生の割合
(出典)日本学生支援機構「平成28年度学生生活調査」より
このように、教育費を捻出する方法は複数あるわけですが、それでも高額な教育費の支出が集中するような「大学進学時期」などには、入学金や学費を一括納付しなければいけないなど、まとまったお金が必要となります。
ですから、そこを目指して貯金をしていくことがポイントです。
3.いくら必要?教育費の積み立て方と学資保険の活用法
3-1.教育費をいくら積み立てるのかの考え方
具体的に、将来の教育費としていくら貯めればいいのかを考えるとき、目標としては、子どもが大学に入る前までに、大学4年間でかかる教育費の7~8割分を積み立てられれば理想的です。私立文系大学なら500万円~600万円くらいが現実的と言えそうです。
それが厳しい場合には、不足する分を奨学金などでおぎなうことを念頭に入れて、現在の収入から、どのくらい教育費の積み立てに回せるのかを考えていく、ということになります。
3-2.最も簡単な教育費の積み立て方。児童手当を全額貯金
公的制度の「児童手当」とは、子どもを育てる親に国から支給されるお金のことです。
- 0歳から3歳未満 1万5,000円
- 3歳以上小学校修了前 1万円(第3子以降は1万5,000円)
- 中学生 1万円
※所得制限を超える場合は5,000円(一律)
上記の金額を、子どもが中学校を卒業するまで受け取れるわけです。これをすべて貯金した場合、単純計算すると
(3歳未満) 1万5,000円 × 12カ月 ×3年 = 54万円
(小学校終了前) 1万円 × 12カ月 ×9年 =108万円
(中学生) 1万円 × 12カ月 ×3年 = 36万円
なんと合計198万円になります。
児童手当を全額貯金すると決めるだけで約200万円の教育費の積み立てが可能なわけですから、ぜひ実行してください。
またこれを実現しやすくするには、手当金を振り込む銀行口座を普段の生活費や支払いなどで利用している口座とは別の専用口座にして、そこに入金し、そのお金には一切手を付けない。あるいはそこから学資保険や自動積立定期などの貯蓄にお金が回るようにする。という方法をとると確実です。
まずは口座を変えることからです。ぜひ決意して実行してみましょう。
3-3. 教育費の積み立ては前倒しで行うのがコツ
教育費を積み立てるには、なるべく前倒しで目標額に到達するようにすることもポイントです。
教育費や生活費は子どもが大きくなっていくほど負担が増えていきます。中学や高校など育ち盛りの時期は食費だけでもそれまでの倍以上かかるようになります。そのため、教育費の積み立てが目標額に届く時期を、例えば10年間で貯める、あるいは子どもが中学校卒業までに貯めるというように、早め早めに設定をするようにしておくことが、教育費の積み立てを成功させるためのコツです。
また大学の入学金の支払いは、例えば推薦入学などの場合には早期に支払う必要がありますので、教育費は遅くても子どもが17歳までに貯めておくことが重要です。
3-4. 学資保険はいくら入ればいいのか
学資保険は子供の教育費を積み立てることを目的とした保険商品です。
積立貯金等との違いは、契約者(お金を支払う人=親)が万一途中で死亡しても、その後保険料の支払いをすることなく、将来満額の学資金を受け取れるという、死亡保険的な要素が含まれていることが特徴です(死亡保険の付帯を選択する商品もあります)。
3-4-1.無理なく続けられる金額にするのがポイント
学資保険の一番のメリットは「子どもため」という明確な目的があることで心理的に最後まで継続しやすい点にあると言えます。ただし、途中でやめてしまうと、貯まっている金額に比べて解約返戻金はかなり下回ることになります(年齢・性別・経過年数により異なります)。
つまり途中で辞めると損をしますので、毎月支払う保険料を無理なく続けられる金額に設定することがポイントです。
3-4-2.いくら入るかは目標時期と目標額から逆算
最後に、具体的に学資保険にいくら入ればいいのかを見ていきます。目標時期と目標額から逆算して考えます。
以下の表を見ていただき、毎月、学資保険の保険料にどのぐらいを充当していくべきかを考えていただければと思います。また、この表の積立目標額は、『児童手当で貯まる約200万円とは別に積み立ていくべき金額』として参考にしていただきたいと思います。
■【目標額と積立期間別】学資保険の月額保険料参考値
積立期間 | 月額保険料(月ごとの積立額) | ||
---|---|---|---|
目標 300万円 | 目標 240万円 | 目標 180万円 | |
17年間で貯める場合 | 14,700円 | 11,800円 | 8,900円 |
15年間で貯める場合 | 16,700円 | 13,400円 | 10,000円 |
12年間で貯める場合 | 20,900円 | 16,700円 | 12,500円 |
10年間で貯める場合 | 25,000円 | 20,000円 | 15,000円 |
※筆者作成
4.まとめ:学資保険にいくら入るかは貯蓄目標と保険料のバランスで決める
学資保険でいくら貯めていくかを決めるにあたっては、例えば「私立文系大学を目指すので500万円ぐらいは貯めておきたい」と考える場合、児童扶養手当で貯めた200万円を差し引いて、残り300万円を貯めると考えるわけです。
そのうえで、毎月いくらずつぐらいの貯金が可能か、何年で貯められるか、という金額や期間などを決めていきます。その際に、上記表を参考にして頂ければと思います。
※この記事の情報は2019年12月時点のものです。
保険・金融専門の執筆家で庶民感覚のわかりやすい文体に定評がある。保険WEBサイト、経済紙記事、書籍「就業不能リスクとGLTD(共著)」ほか執筆実績多数。保険業界メールマガジンinswatch発行人。
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