ジェネリック医薬品を知っていますか? 製薬会社のテレビCMや、病院の待合室に貼ってあるポスターなどでよく見かけますよね。実際に処方されたことがある人も多いのではないでしょうか。
このページでは、この「ジェネリック」を徹底解剖。従来の薬との効果や価格の差、処方してもらう方法などについて詳しく説明します。
目次
1. これだけ知ろう!ジェネリックの基本
まず、ジェネリック医薬品の概要について見ていきましょう。「ジェネリック」という言葉を頻繁に見かけるようになった理由や、国内でどのくらい普及しているのかなどについて解説します。
1-1. ジェネリック医薬品とは?
ジェネリック(generic)は、「一般的な」「ブランドにとらわれない」などの意味を持つ単語。新薬と同じ有効成分を含み、効き目や安全性について厚生労働省が認めた薬が「ジェネリック医薬品」と呼ばれています。
製薬会社は新しい薬を開発した後、およそ5年から10年のあいだ、特許をともなった「新薬」として独占的に販売できます。特許が切れると「長期収載品」としてそのまま販売できますが、他社も同様の薬を安くつくれるようになります。これがジェネリック医薬品です。
1-2. 増えつづける医療費が普及の背景
欧米では古くから定着しているジェネリック医薬品ですが、日本ではあまり一般的ではありませんでした。最近はテレビCMなどで見かけることも多くなりましたが、なぜ盛んにPRされるようになったのでしょうか。
それはズバリ、医療費削減が目的です。高齢化の進展とともに、日本の医療費は増加の一途をたどっています。そのスピードを少しでも緩和させるために、政府主導でジェネリック医薬品の使用が推進されるようになりました。
1-3. すでに半分以上がジェネリックに
近年、ジェネリック医薬品は急速に普及しています。厚生労働省の調べでは、そのシェアは2020年度末で82.1%(数量ベース)に達しています。
(出典)厚生労働省「令和2年度 調剤医療費(電算処理分)の動向」より
2. どう違う?従来の薬とジェネリック
普及が進んでいるジェネリック医薬品ですが、「新薬」や「長期収載品」などとどのように違うのでしょうか。成分と価格の面から解説していきます。
2-1. 効き目や品質は大丈夫?
ジェネリック医薬品で最も気になるのは、きちんと効くのかどうか。
じつは、有効成分については新薬や長期収載品と全く同じものが、同じ量使用されています。そのうえで厚生労働省の審査を受け、承認されたものだけが発売されているのです。
ただし、有効成分以外の添加剤は、異なる物質が使用されることがあります。粉薬だった新薬を錠剤にしたり、錠剤の粒を小さくしたり、あるいは苦味を抑えるなど、飲みやすさを考えて工夫したものも販売されています。
厚生労働省も、ジェネリック医薬品の品質確保のための取り組みを行っています。製造する企業に対して、品質管理基準の指導や、品質確認のための試験・検査を行っています。
2-2. 最大半額!?新薬との価格差
では、ジェネリック医薬品に変えることでどの程度おトクになるのでしょうか。価格は薬によって異なりますが、新薬と比べて3割から5割ほど安くなる場合が多くなっています。
新薬の場合、研究・開発に長い年月がかかるため、価格にはそのコストも織り込まれています。一方のジェネリックは、新薬の有効成分を利用して短期間で開発。コストを大幅に抑えられるため、価格を安く設定することができるのです。
新薬の開発には約9~17年、費用は300億円以上かかるのに対して、ジェネリック医薬品は約3~5年、1億円程度で開発できるようです。
(出典)厚生労働省 「ジェネリック医薬品への疑問に答えます ~ジェネリック医薬品 Q&A~」より
3. ジェネリック医薬品の処方
従来の薬と比べ、効果は遜色なく、価格も安いジェネリック医薬品。実際に処方してもらうためにはどうすればいいのでしょうか。その流れをまとめました。
3-1. まずはお医者さんに相談!
まずは、かかりつけの医師に相談してみてください。ジェネリック医薬品に変更できるかどうかは、お医者さんが個別に判断します。
まだジェネリック医薬品が発売されていない場合や、薬でアレルギー症状が出たことがある場合など、医師が不適切と考える理由があれば変更できないことがあります。
3-2. 薬剤師にも意思を伝えよう
医師が作成した「処方せん」を渡すときに、薬剤師にもジェネリック医薬品の希望を伝えてみましょう。処方せんの「変更不可」欄にチェックがついていない薬で、薬局に置いてあるものなら、ジェネリック医薬品への変更が可能です。
薬の名前が一般名称(有効成分名)で書かれている場合も変更できます。たとえば、頭痛薬の「ロキソニン」(第一三共)を処方してもらったとき、有効成分名で「ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソプロフェン)」と書かれていれば、ジェネリック医薬品に変えることができます。
3-3. ジェネリック希望カード・シールも有効
また、健康保険組合などが配布している「ジェネリック医薬品希望カード」や「ジェネリック医薬品希望シール」を窓口で提示するのもよいでしょう。シールは、厚生労働省のホームページからも入手できます。
・ジェネリック医薬品希望シール(厚生労働省サイト)
3-4. 不安な人は「分割調剤」でおためし可能
副作用などが心配で、ジェネリック医薬品に抵抗のある人もいるかもしれません。そんなときは、医師の判断で「まずは1週間分」など短期間だけ試す分割調剤も可能です。お医者さんに相談してみてください。
この場合、通常の処方せんとは別に「分割指示に関わる処方せん」も発行されるので、薬局に両方提出してください。「おためし期間」の分だけ、ジェネリック医薬品を処方してくれます。その際、処方せんはすべて返却されます。
2回目以降も、返却された処方せんを持って薬局に行けばOK。「ジェネリック医薬品の服用期間中、体調の変化がなかったか」など、薬剤師の質問に答えるだけで、残りの期間の薬を受け取れます。もし、自分の身体に合っていないと感じれば、長期収載品などに戻すことができます。
4. まとめ:家計へのメリットが大きいジェネリック
新薬の特許が切れた後、同じ有効成分を使って製造されるジェネリック医薬品。医療費削減の切り札として、政府主導で導入が進められていることがわかりました。効果も従来の薬と比べて遜色なく、急速に普及が進んでいます。
処方してもらうために必要なのは、まずはかかりつけの医師への相談。そもそもジェネリック医薬品が製造されていないなどの理由で、必ず処方してもらえるわけではないことにも注意してください。
新薬の3割から5割ほど価格の安いジェネリック医薬品を取り入れることは、家計にとってもメリットは大。上手に生かしたいですね。
※本記事は、2022年3月時点の情報をもとに作成しています。
1987年山梨県富士吉田市生まれ。タウン紙記者、雑誌編集者として勤務後、フリーの編集者・ライターに。モットーは、きめ細かな取材・調査に基づいた記事づくり。お金に関する話題も、わかりやすくお届けします。
※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。