私立高校も授業料無償化へ 2020年春に変わる「高等学校等就学支援金」

2022-04-06

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ついにはじまる、「私立高校授業料実質無償化」。以前からあった高等学校等就学支援金制度を拡充する形で、2020年4月にスタートします。

このページでは、支援の対象になる基準や、新しい制度になって何が変わるのかなどを解説していきます。

1. 高等学校等就学支援金制度とは?

はじめに、就学支援金制度の概要について確認していきましょう。制度のルーツや、対象となる基準についてご説明します。

1-1. 制度は2010年に創設

この制度は、2010年に成立した通称「高校無償化法」がルーツ。教育の機会均等を目的に創設されました。当初は、公立高校生の授業料(月額9,900円)が免除され、私立高校生には同額の「就学支援金」が支給されるものでした。

1-2. 2014年改正で一定の年収以下の世帯が支援対象に

2014年には法律が改正され、現行の高等学校等就学支援金制度に衣替え。一定の所得を下回る世帯のみに対象が絞られました。一方で私立学校の生徒については、世帯の所得に応じた加算支給の増額が行われました。

支援の対象は、公私立を問わず、高等学校や高等専門学校、専修学校(高等課程)などに通う生徒。ただし、世帯年収が約910万円を下回る家庭の生徒に限られます。全国のおよそ8割の生徒が対象になっています。

なお、就学支援金は、学校設置者(行政機関や学校法人など)が生徒本人に代わって受給し、授業料に充当するものです。生徒や保護者が直接受け取るものではないので、注意してください。

2. 今回の「私立高校の実質無償化」のポイントは?

では、2020年春に就学支援金制度がどう変わるのかを確認します。

ここでは、「両親・高校生・中学生の4人家族で、両親の一方が働いている場合」の世帯収入をベースに、今回の制度拡充のポイントを紹介していきます。

2-1. 現行制度も私立の生徒をカバー

まず、現行の就学支援金制度について見ていきましょう。先ほど紹介したように、支援の対象となっているのは、世帯年収が約910万円未満の世帯。地方税の「所得割額」を基準に適否が判断されます。対象になると、公立学校の授業料相当額(年間11万8,800円)を国に負担してもらえます。

さらに、私立学校に通う年収約590万円未満の世帯の生徒には「加算支給」が行われています。加算分を含めた支給額は、17万8,200円(年収目安 約350万円~590万円)、23万7,600円(同約270万円~350万円)、29万7,000円(同270万円未満)と、世帯年収によって3段階に分かれています。

2-2. 2020年4月からは年収約590万円未満の世帯への支援拡充

今回の支援拡充のポイントは、「加算支給」が手厚くなったことです。年収に応じて3段階に分けていた支給上限額を撤廃。私立学校に通う年収約590万円未満の世帯の生徒であれば誰でも、一律の支援が受けられることになりました。

これに伴い、支給上限額は私立高校の平均授業料に見合った水準に引き上げられます。全日制私立学校は年間39万6,000円、通信制の私立高校は29万7,000円などとなります。

なお、この支援は新入生だけでなく在校生にも適用されます。

■私立高校の支給上限額(2020年4月~)

また、今までは地方税の「所得割額」というわかりにくい基準で支給の判断がなされていましたが、この制度改正により「課税所得」が新しい基準になります。この判定基準については、下記の資料をご覧ください。

2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット(文部科学省)

3. 支援を受けるときの注意点は?

制度拡充のポイントがわかったら、実際に支援を受けるときの注意点について確認します。申請のしかたについても解説していきます。

3-1. 申請は学校へ

新しい就学支援金制度による支援は、2020年春に高等学校などに入学する「新入生」のみならず、新2年生、新3年生になる「在校生」にも適用されます。いずれの場合も、通学している学校へ自分で申請を行うことになります。

新入生については、入学時に学校から案内がありますので、申請を行って下さい。申請書のほかに、保護者などのマイナンバーがわかる書類(マイナンバーカードのコピーなど)が必要になります。

在校生については、収入状況の届出を行う7月ごろに学校から案内があります。それに従って申請を行ってください。既にマイナンバーで手続きをして制度を利用している方は、マイナンバーカードのコピーなどの再提出は必要ありません。

3-2. 支援対象は「授業料」のみ。

就学支援金制度の対象は授業料のみで、学業に関わる諸費用は対象になっていません。

ただし、生活保護世帯や住民税所得割非課税の世帯に対しては、この制度とは別に「高校生等奨学給付金」という返済不要の給付金があります。教科書代や教材費など、授業料以外の教育費を支援。受給には毎年7月ごろに手続きが必要です。詳細は、学校もしくはお住まいの都道府県に問い合わせてみてください。

高校生等奨学給付金 概要(文部科学省)

4. まとめ:新年度に忘れずに手続きを

いよいよ2020年春に新しくなる就学支援金制度。私学に通う生徒への加算支給額の上限が一律に引き上げられるため、平均授業料程度の私立学校であれば、収入が少ない家庭の子どもでも通えるしくみが整いました。

一方で、「世帯収入約590万円」の基準額を上回る収入がある家庭には、加算支給は一切行われません。そうした意味では「誰でも」恩恵を受けられるわけではありませんが、支援の対象になりそうな家庭の方は、新年度に忘れず申請を行うようにしてください。

また、今回紹介した国の制度に加え、都道府県などが独自に支援制度を設けていることもあるので、学校や行政機関に相談してみることをおすすめします。

佐藤 史親 (編集者・ライター)執筆:佐藤 史親(編集者・ライター)
1987年山梨県富士吉田市生まれ。タウン紙記者、雑誌編集者として勤務後、フリーの編集者・ライターに。モットーは、きめ細かな取材・調査に基づいた記事づくり。お金に関する話題も、わかりやすくお届けします。

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