進学をあきらめないで!「高等教育の修学支援新制度」を活用しよう

2022-04-06

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2020年4月からスタートする高等教育の就学支援新制度。

家庭の経済状況に関わらず、大学等に進学できる機会を確保するために、国が低所得者世帯に対して「授業料・入学金の減額または免除」「給付型奨学金」の支援を行います。

この記事では、新しい制度の中身や、注意しておくべき点などについてクローズアップします。

1.「高等教育の修学支援新制度」とは?

最初に、新制度の概要や対象となる教育機関について確認していきましょう。

1-1. 2020年4月スタート!低所得者世帯向けの支援制度

高等教育の就学支援新制度は、「大学等修学支援法」という法律に基づき、おもに低所得者世帯を対象に、高等教育機関(大学・短大・高専・専門学校)の入学金や授業料が減額または免除されるものです。また、学資支援として、返還の必要がない奨学金の支給も行われます。

1-2. 文科省等の確認を受けた学校が対象

支援対象となる学校は、文部科学省や自治体等の確認を受けた大学・短大・高専・専門学校です。学問追究と実践的教育のバランスがとれていることなどが条件で、経営に課題がある法人が運営する学校は対象外となっています。下記のリンク先から、対象の学校を確認できます。

支援対象となる大学・短大・高専・専門学校(文部科学省)

2. どんな人が支援を受けられる?

次に、どのような学生が対象になるのかを確認します。支援を受けるには、大きく分けて2つの条件があります。

2-1.【条件1】世帯の年収が一定の基準を下回っていること

支援対象となるのは、住民税非課税の世帯、もしくはそれに準ずる世帯の学生に限られます。たとえば、両親と学生本人、中学生の家族4人の場合、世帯年収が約380万円を下回っている場合のみ支援対象となります。さらに、その中でも3つの区分があり、支援の額が異なります。

上記4人世帯の場合、住民税非課税となる年収約270万円以下であれば「第I区分」に分類され、満額の支援を受けられます。約300万円以下の場合は、標準額の2/3の支援が受けられる「第II区分」に。約380万円以下の場合は「第III区分」となり、標準額の1/3相当の支援にとどまります。

■支援を受けられる年収のめやす ※両親・本人・中学生の4人世帯の場合

支援対象者年収の目安支援額
住民税非課税世帯の学生~ 約270万円満額
住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生~約300万円満額の2/3
~約380万円満額の1/3

家族構成や学生・兄弟姉妹の年齢などによって、支援対象となる目安の年収額は異なります。計算のしかたも複雑で、一概に「年収がいくら以下であれば支援対象になる」というものではありません。

自分の世帯が対象となるかどうかは、日本学生支援機構(JASSO)の「進学資金シミュレーター」でおおまかに調べることができます。

進学資金シミュレーター(日本学生支援機構)

2-2.【条件2】学ぶ意欲や目的があるか

また、世帯年収の基準をクリアしてさえいれば、支援を受けられるというわけではありません。きちんと学ぶ意欲を持っているか、学ぶ目的がはっきりしているかが、支援の可否に大きく関わってきます。

高校在学中に行われる「予約採用」では、在学時の成績だけではなく、レポート提出や面談の結果をもとに、条件に合った人物か判断されます。また、大学などへ進学後の「在学採用」でも、学ぶ意欲はもちろんのこと、卒業後の人生設計がきちんとできているかを確認されます。

なお、支援措置の対象になるのは、高校を卒業して2年以内に大学などへの入学を決めた人。いわゆる二浪までが支援の対象となります。また、高卒認定試験(高認)合格者も申請が可能です。

3. どんな支援を、どのくらい受けられる?

では、どのような基準で、いくらぐらいの支援を受けられるのでしょうか。ここでは、第I区分に該当する住民税非課税世帯の学生が受けられる支援の標準額について紹介します。それよりも世帯年収が多い第II区分、第Ⅲ区分の学生については、それぞれ標準額の2/3、1/3の支援となりますので、ご注意ください。

3-1.【支援1】授業料等(入学金・授業料)の免除または減免

一つめは、大学等の入学金や授業料の減免です。

3-1-1. 最大約28万円の入学金減免

入学金の減免については、減免額が最も大きい昼間制の国公立大学の場合で、所定の入学金28万2000円を上限に入学金の免除または減額を受けられます。

なお、この支援を利用できるのは、令和2年以降にあらたに大学等に入学した学生が、入学前または入学後速やかに申込みを行い支援対象となった場合のみです。すでに在学している学生が、さかのぼって入学金の減免を受けることはできません。

■入学金減免の上限額(昼間制の場合)

区分減免上限額
大学国公立282,000円
私立260,000円
短大国公立169,000円
私立250,000円
高専国公立84,600円
私立130,000円
専門学校国公立70,000円
私立160,000円

※文部科学省資料より

3-1-2. 授業料減免は年間最大70万円

支援の屋台骨になるのが、毎年の授業料減免です。最も額が大きいのは昼間制の私立の大学・高専で、年額70万円。次いで昼間制の私立短大が年額62万円などとなっています。これらの上限額の範囲内で、毎年授業料の減額または免除が行われます。

■授業料減免の上限額(昼間制の場合)

区分減免上限額(年額)
大学国公立535,800円
私立700,000円
短大国公立390,000円
私立620,000円
高専国公立234,600円
私立700,000円
専門学校国公立166,800円
私立590,000円

※文部科学省資料より

3-2.【支援2】年間最大約91万円の給付型奨学金も

学生生活に対するサポートを行うのが、三つめの柱である日本学生支援機構の給付型奨学金。学業に専念し、学生生活を送るための費用について援助するもので、返還する必要はありません。自宅外から通う私立大学の学生が最も支援額が大きく、月額で7万5,800円、年額90万9,600円となっています。

■給付型奨学金の給付額

区分給付額
月額年額
大学国公立自宅29,200円350,400円
自宅外66,700円800,400円
私立自宅38,300円459,600円
自宅外75,800円909,600円
短大国公立自宅29,200円350,400円
自宅外66,700円800,400円
私立自宅38,300円459,600円
自宅外75,800円909,600円
高専国公立自宅17,500円210,000円
自宅外34,200円410,400円
私立自宅26,700円320,400円
自宅外43,300円519,600円
専門学校国公立自宅29,200円350,400円
自宅外66,700円800,400円
私立自宅38,300円459,600円
自宅外75,800円909,600円

また、この給付型奨学金を受けている学生が日本学生支援機構の貸与奨学金を合わせて利用すること(併給)も可能です。この場合、第一種奨学金(無利子)の貸与額には上限が設けられています。詳細は、下記リンクをご覧ください。

授業料等減免・給付型奨学金(新制度)の支援を受けた場合の無利子奨学金の額の調整(文部科学省)

4. 要チェック!支援を受けるときの注意

支援の内容がわかったら、注意しておくべきことについて見ていきましょう。申請を行うタイミングや、支援開始後の打ち切りの可能性について確認します。

4-1. 申請は4月~

高校在学中に行われる予約採用(令和3年4月以降の進学予定者)の場合は、高校3年(支給開始年度の前年)の4月に申し込みを行います。学校の先生に相談しながら関係書類を揃え、インターネットを通して日本学生支援機構へ申請。審査結果は10月頃までに通知されます。入学後は、日本学生支援機構に「進学届」を提出のうえ、大学の事務室などで授業料・入学金の減免手続きを行う必要があります。

既に在学中(および令和2年4月に進学する学生)の在学採用については、3月~5月に申請します。給付型奨学金については日本学生支援機構へ、授業料減免については学校へ申請。7月頃に審査結果が通知され、採用されれば4月にさかのぼって支援されます。

これらは制度開始時(令和2年度)のスケジュールをもとにしているので、今後変更になる可能性があります。

上記スケジュールについての詳細は下記ページの「手続きのスケジュールを教えて」をご覧ください。
学びたい気持ちを応援します(文部科学省WEBサイト)

4-2. 厳しい支援打ち切り基準

公費による支援であることから、この制度には支援打ち切りの基準が設けられています。「修業年限で卒業できないことが確定した場合」「修得単位数が標準の5割以下の場合」などが基準となっています。

また、GPA(平均成績)が一定基準以下になるなど、成績不良や学修意欲を疑われる場合には「警告」が行われ、それを連続して受けた場合も支援打ち切りの対象となります。また、退学や停学(無期限または3か月以上)の処分を受けた場合などは、支援打ち切りのうえ、減免された授業料等を返還しなければなりません。

5. まとめ:「対象かも」と思ったら計画的に手続きを

高等教育就学支援制度は、おもに低所得世帯の学生を救済するための制度です。当初は、教育の機会均等を目指して「大学無償化」を念頭に議論されていた制度ですが、今のところは対象世帯がかなり限定的になっています。

「支援対象になるかも」と思ったら、まずは日本学生支援機構の「進学資金シミュレーター」などで確認してみましょう。現在通学している学校の先生や事務職員に相談しながら、計画的に手続きを行ってくださいね。少しでも多くの学生が支援の恩恵を受け、金銭的負担が軽減されることを願っています。

佐藤 史親 (編集者・ライター)執筆:佐藤 史親(編集者・ライター)
1987年山梨県富士吉田市生まれ。タウン紙記者、雑誌編集者として勤務後、フリーの編集者・ライターに。モットーは、きめ細かな取材・調査に基づいた記事づくり。お金に関する話題も、わかりやすくお届けします。

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