がん保険は必要なのでしょうか?
がんのことは心配で、がん保険への加入を考えたいけど、もし無駄な保険なのだとしたら入りたくないですし、必要性が気になりますよね。
正直に言うと、がんだからといって全てのケースで高額な治療費がかかるわけではありません。最近は健診なども普及し、早期発見で簡単な手術で終わるということも多くあります。しかし、それでも治療が長引いたり再発したりして、トータルで多くの治療費がかかることがあるのががんです。そして、そのようなケースではお金があるかないかで、受けたい治療を受けられないということもありえます。
がんは進行すると死につながる病気なので、たとえ治療費がかかっても十分な治療を受けたいのではありませんか? しかも、2人に1人はがんになっているのです。だとしたら、がん保険は「めちゃくちゃ大事」なのではないでしょうか?
今回は、そんながん保険の必要性について、がんの治療費やがん保険のコストなども検証して考えてみたいと思います。ぜひこの記事を読んで、納得してがん保険にご加入ください。
目次
1. がん保険があきらかに不要な人
がん保険の必要性について話す前に、まずはあきらかに不要な人から説明しておきます。
それは、病状により先進医療や自由診療を受けることになったとしても高額な医療費を問題なく払える人です。そのような人は、がん保険に入る必要はありません。
もし、がんの治療に500万~1,000万円くらいかかったとしても普通に払える人
たとえば、資産家や高収入のプロスポーツ選手・人気タレントさんなどであれば、これくらいの出費があっても平気でしょう。
それ以外の方はがん保険の必要性を検討していただきたいので、引き続きお読みください。
2. がんになる確率は?
がん保険の必要性を考えるにあたって、まずは、がんになる確率がどれくらいなのかをみてみましょう。
がん対策情報センターのデータによると、生涯でがんになる確率は男性で65%、女性で50%となっています。
ほぼ2人に1人はがんになるということになります。
■生涯でがんに罹患する確率 ※2018年データより
男性 | 65% |
---|---|
女性 | 50% |
(出典)国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」 2018年データに基づく累積罹患リスクより
3. がんになったときの経済的負担はどれくらい?
それでは次に、がんになってしまったときに治療費がどれくらいかかるのかをみていきましょう。
3-1. 手術をしたら
手術による治療費は、10~20日くらいの入院の場合、医療費の自己負担額は20~30万円くらいでおさまることが多いようです。
この場合、健康保険の高額療養費を使えば、1ヵ月の自己負担額は平均的な所得の会社員で約8万円ですみます。
3-2. 抗がん剤治療が続いたら
抗がん剤治療は、どのような抗がん剤を使うのか、治療期間がどれくらい続くのかによって大きく変わってきますが、通常、数日から数週間くらいの治療を1コースとし、抗がん剤によってはそれが数回続くことになります。
1コースの医療費の自己負担額は、2~3万円くらいのものから15万円くらいかかるものまで様々です。一通り治療を受けると30万円以上、あるいはもっと多くの自己負担が必要な抗がん剤もあります。
ただし高額療養費があるので、1ヵ月の自己負担額は平均的な所得の会社員で約8万円ですみます。また治療が長く続く場合は、1年で4回(4ヵ月)目以降は1ヵ月の自己負担額が4~5万円くらいですみます。
しかし、いくら高額療養費制度があったとしても、抗がん剤治療が1年、2年と続くようなことがあると自己負担額は数十万円から100万円くらいと大きくなっていってしまいます。
3-3. 先進医療を受けたら
通常の治療での治癒が難しい場合で、運よく先進医療が適用となったときは、先進医療の医療費は全額が自己負担となります。
この先進医療で最も高い重粒子線治療は約300万円、重粒子線に似た陽子線治療は約260万円かかります。この2つは特に高額な治療ですが、そのほかのがんの先進医療として、免疫療法は約40万円となっています。
3-4. 自由診療を受けるとしたら
健康保険が適用されない抗がん剤治療や免疫療法などを受けた場合は、全額自己負担で多くのお金が必要です。
たとえば、自由診療の免疫療法を行っているクリニックのWEBサイトを見ると、1クールの治療費が200万円となっています。もしこの治療を繰り返すと、何百万円あるいは1千万円以上かかることもあるでしょう。
3-4. がん治療の費用のまとめ
がんにはいろいろな種類、進行度があって、一概に治療費がいくらとは言えません。
初期の胃がんや大腸がんで内視鏡で切除できれば、自己負担は数万円ですみます。外科的手術であっても、それだけで終われば高額療養費を使って10万円程度ですむでしょう。
しかし、手術だけで治療が終わらない場合は多くの治療費がかかります。
先進医療や自由診療は特別なケースなので別にしても、抗がん剤治療などが必要となるとトータルの自己負担額は100万円かそれ以上になることも十分にあります。
また、がんになると直接的な治療費以外にも、抗がん剤で髪の毛が抜けてしまった場合のウィッグや医療用かつらの費用、痛みを緩和する緩和ケアや乳がんの手術後の乳房再建術の費用、日常生活での健康維持のための食材・健康補助食品に費用などもかかってくることも考えておく必要があります。さらに、がんの治療中や治療後は、以前のように働けずに収入が減ってしまうこともあります。
どこまでのリスクに備えるかは判断が難しいですが、がんになると多くのお金がかかってくる可能性があるということは間違いありません。
4. がん保険の損得勘定
ここで少し視点を変えて、がん保険が保険として割に合うのかどうかということから必要性を考えてみましょう。
がん保険に入って支払っていく保険料の総額とがんになったときに受け取れる給付金の額を30歳男性が加入したとして比較してみます。
■がん保険の保障内容と保険料
30歳男性が加入した場合
生命保険会社 | 保障内容 | 保険料 | |
---|---|---|---|
終身払い | 60歳払済 | ||
A社 | がん診断給付金:100万円(複数回) がん先進医療給付金:2,000万円ま | (月額)2,104円 (総額)1,262,400円 *80歳まで生存として | (月額)2,789円 (総額)1,004,040円 |
B社 | がん初回診断一時金:100万円 がん治療給付金:50万円(複数回) がん入院給付金:1万 がん手術:20万 がん退院一時金:10万円 がん通院給付金:1万円 がん先進医療給付金:2,000万円まで | (月額)2,990円 | (月額)4,192円 (総額)1,509,120円 |
がんと診断されたときに診断給付金100万円を受け取れるシンプルなA社の保険では、保険料の支払総額は60歳で払い込みを終了させた場合は約100万円、終身払いとして男性の平均寿命近くの80歳まで生存していた場合は約126万円となります。つまり、一度がんになればほぼ元が取れる計算になります。
同様に、入院給付金や手術給付金などもあるB社の保険でみても、一度がんになって受け取れる給付金の合計額は150万円以上あり、保険料の総額とほぼ同額になります。
さらに、再発したり先進医療をうけたりするようなケースがあるともっと給付金を受け取れますので、その場合は収支がプラスになると考えられます。
保険会社によっては、この2社よりも効率が悪い保険もありますが、このような保険を選べば、がん保険は一度でもがんになるとほぼ元が取れると考えてよいでしょう。
(加入する年齢によっては違う結果になる場合があります)
5. 結局がん保険は必要か?
ここまで、がんになる確率、がんの治療費、がん保険の損得勘定について、チェックしてきました。
これらを総合的にみてみると、以下のようにまとめられます。
- 一生のうちがんになる確率は約半分(男性63%、女性47%)
- がんの治療費や関連費用で、100~200万円くらいは必要になる可能性がある
- がん保険は一度がんになると、ほぼ元がとれる(30歳男性での計算)
つまり、がんになると治療費が高額になる場合があり、1/2の確率で支払った保険料の元は取れるということです。
がん保険は、がんにならなければ掛け捨てになる保険です。しかし、がんになると治療費が多くかかる場合があることを考えると、入っておいた方がよい保険だといえるのではないでしょうか?
ただし、1章で書いた資産家ほどでなくても、十分な貯蓄があり200~300万円の治療費が突然かかっても大丈夫という人なら、無理に入らず、貯蓄で対応してもよいでしょう。
基本的には、がん保険は必要だといえますが、既に医療保険に入っている人にとってはどうでしょうか?
医療保険に入っていれば、がんも保障されます。ただし、一般的に医療保険で保障されるのは、手術をしたときの手術給付金と入院したときの入院給付金です。そうなると、手術なしで通院の放射線治療を受けたようなときには、医療保険では対応できないということになってしまいます。
がんになったときには、一般の医療保険では対応が難しいケースや保障が足りないケースもありますので、余裕があれば、既に医療保険に入っている人もがん保険に入っておいた方がよいでしょう。できるだけ保障を重複させたくない場合は、診断給付金のみのがん保険や抗がん剤・放射線などの通院治療に関する保障に特化したがん保険とうまく組み合わせるとよいでしょう。
6. がん保険を選ぶときのポイント?
実際にがん保険に加入するときには、以下のポイントに注意して保険を選ぶとよいでしょう。
(1)診断給付金(一時金)が何度でも出るものを選ぶ
がんは一度治療しても再発や転移の可能性があります。がん保険の保障のなかで、まとまったお金を受け取れる診断給付金(一時金)は、複数回出るものを選びましょう。
(2)通院による治療にも備えられるものを選ぶ
放射線治療や抗がん剤治療・ホルモン剤治療などは、入院をともなわず通院で受けることが多くなってきています。しかも治療期間が長期化することもあるので、そのようなケースにも対応できるがん保険を選ぶようにしましょう。
(3)一生涯の保障があるものを選ぶ
がんは60歳を超えて高齢になるほど発病する可能性が高くなる病気です。そのため、がん保険は、一生涯保障が続く終身タイプを選びましょう。
(4)先進医療の保障はついていた方がよい
がん保険には、がん先進医療の保障が特約となっている保険が多くあります。保険料は割安なので、200~300万円するような先進医療を受けても大丈夫なように、加入しておくとよいでしょう。
(5)女性なら上皮内新生物の保障にも要注意!
上皮内新生物は初期のがんといわれていますが、原則、良性の腫瘍と同様の治療となるので、がん治療のようなお金のかかり方はしません。しかし、上皮内新生物にあたる非浸潤性の乳がんの治療に際しては、腫瘍の切除以外に乳房再建術や術後の抗がん剤治療・ホルモン剤治療が必要になる場合があります。したがって、女性の場合は、上皮内新生物でも十分な保障があるがん保険を選んだほうがよいでしょう。
がん保険の選び方や通院保障の重要性については下記ページをご覧ください。
・「がん保険の選び方|絶対に必要な3つの条件と確認ポイント」
・「通院保障はホントに必要?がん保険と医療保険で違う必要性!」
7. まとめ:一般的には必要な保険
がんになったときに、まとまった給付金を受け取ることができ、お金の心配をせずに治療に専念できるというのはとても大切なことです。がんという病気が生死にかかわることやがんの治療費などを総合的に判断すると、一般的にはがん保険は必要な保険であるといえます。
がんの治療費が多くかかっても経済的な不安がないという人を除いて、もし、将来がんになったときに十分な治療を受けたい、しかし医療費が楽に払えるか不安だという人は、ぜひ加入をご検討ください。
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※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。