がん治療を知るシリーズ第3回目は、肝がんの治療についてです。
肝がんは、近年、罹患者数や死亡者数が減少傾向にあります。しかし、自覚症状のないなかで進行するおそれがあるため注意が必要です。
また、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染が原因になることもわかっていますので、予防として、肝炎に対する注意や治療もとても重要です。
そのような肝がんの検査や治療のための費用について、今回も医療コーディネーターの高橋義人氏(株式会社M&Fパートナーズ 代表取締役)にお話を伺いました。
<講師のご紹介>
- 略歴
1988年明治大学卒業後、外資系大手生命保険会社に23年間勤務。
現在はファイナンシャルプランナーとしての活動とともに、医療コーディネーターとして、がん患者さんへの情報提供やアドバイス等、治療支援活動を積極的に行っている。
その他、セミナー講師として、マネープランやがんについての講演を年間100回以上行っており、累計のセミナー受講者数は5万人を超えている。 - 講演テーマ
「生きるためのマネーセミナー がんとお金の話」
「最先端のがん治療とがんファイナンス」など
目次
がん治療を知るシリーズ
第3回「肝がんの治療とその費用」
(以下、講演形式でお届けします)
1.ひそかに進行する肝がん
国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターの「がんの統計 2018」によると、肝がんによる男性の死亡者数は肺がん・胃がん・大腸がん・膵臓がん・結腸がんに続いて第6位となっています。
近年、肝がんは罹患者数も死亡者数もともに減少傾向にありますが、注意が必要です。
肝臓は体内の臓器の中で最も大きく、代謝や有害物質の解毒・排出という重要な役割を担っている臓器です。「沈黙の臓器」といわれ、自覚症状なしにがんが進行することがあるため、がんとわかったときには、すでに他の臓器に転移しているというケースも多くあります。
2.肝がんの種類
肝がんには、肝臓にできる「原発性肝がん」と他の臓器のがんが転移してできる「転移性肝がん」の2種類があります。さらに「原発性肝がん」は、肝臓の細胞ががん化する「肝細胞がん」と胆管ががんになる「胆管細胞がん」、そしてこれら2つのがんが混在する「混合型肝がん」等に分類されます。
■肝がんの種類
原発性肝がん | 肝細胞がん | 肝臓の細胞が変化した「がん」 |
---|---|---|
胆管細胞がん | 胆管の細胞が変化した「がん」 | |
混合型肝がん | 肝細胞がん、胆管細胞がんが混ざった「がん」 | |
転移性肝がん | 他の臓器のがんが肝臓に転移した「がん」 |
3.肝がんの原因と検査
肝がんの原因は一部が解明されていて、その主な原因は肝炎ウイルスの持続感染です。C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスが持続感染することにより慢性肝炎となり、そこから肝硬変、肝がんに進行していきます。日本では、肝細胞がんの原因として、C型肝炎ウイルスの持続感染による慢性肝炎が約65%、B型肝炎ウイルスが約15%を占めているといわれています。
その他、最近は、非アルコール性脂肪肝炎(アルコール摂取歴がほとんどない脂肪肝)が原因で、肝硬変、肝がんへと進行するケースが増加してきています。
肝がんを予防するためには、肝炎ウイルスの感染の有無、肝細胞の炎症やはたらき具合について、血液検査でよく確認することが大切です。肝がんの検査方法には、腫瘍マーカーや超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査があります。
4.肝がんの検査費の目安
肝がんの各検査の費用の目安は以下の通りです。金額は10割の額なので、健康保険で3割負担の方が支払う金額は、下記金額の3割となります。
検査費用の目安(10割)
■血液検査(腫瘍マーカーを含む) ¥4,000
■超音波検査 ¥5,300
■造影超音波検査 ¥22,000
■腹部造影CT検査 ¥28,000
■腹部造影MRI検査 ¥30,000
引用:「国立がん研究センターのがんとお金の本」(小学館)より
5.肝がんの分類と治療
肝がんのステージは、がんの大きさや個数によりI期~IV期に分類され、治療法は、そのステージと肝臓機能の損傷度を考慮して決めれられます。
肝臓の損傷度が小さくて、肝臓内にあるがんが3個以内の場合は手術をすることになります。一方で、肝臓の損傷度が大きくて、肝機能が低下している場合は肝移植が検討されることもあります。
また穿刺(せんし)局所療法という、体の外から針を刺して、いろいろな方法でがん細胞を死滅させる治療法もあり、ラジオ波熱凝固療法、経皮的エタノール注入療法、経皮的マイクロ波凝固療法等が行われています。
さらに、肝臓に栄養を運ぶ血管をふさぐことで、がん細胞への栄養の供給を止めて、がん細胞を死滅させる肝動脈塞栓療法という治療法もあります。いわゆる「兵糧攻め」のような治療法といえます。この治療法は腫瘍の大きさや数に関係なく行えるため、手術や穿刺局所療法ができないときに実施されます。
肝がんの治療には、他にも肝動注化学療法、全身化学療法、放射線治療等の治療法があり、状況にあわせて行われます。
6.肝がんの治療費の目安
手術以外の肝がん治療の費用の目安は以下の通りです。金額は10割の額なので、健康保険で3割負担の方が実際に支払う金額は、下記金額の3割となります。
治療費用の目安(10割)
■肝動脈塞栓法(TAE)
治療費 ¥250,000
入院費(8日間) ¥550,000■肝動脈化学塞栓法(TACE)
治療費 ¥305,000
入院費(6日間) ¥530,000■肝動注化学療法(TAI)
治療費 ¥135,000
入院費(6日間) ¥355,000※入院費には治療費が含まれます
■肝がん治療費の事例
肝細胞がんI期、肝障害度A
◆治療の内容
ラジオ波熱凝固療法〈5日間入院〉
退院後1年間は外来で3か月ごとに定期検査
(造影CT、血液・生化学・腫瘍マーカー)+外来受診
10割 3割 ラジオ波熱凝固療法(入院) ¥360,000 ¥108,000 定期検査+外来受診(4回) ¥170,000 ¥51,000 費用総額 ¥530,000 ¥159,000 引用:「国立がん研究センターのがんとお金の本」(小学館)より
編集後記
肝がんの治療費は、外科的手術以外の治療法でも15~25万円くらいの治療費がかかります。
ステージが進んだり、肝臓の損傷度が大きいときには、より高額な治療費がかかってきます。また転移などによっては、治療が長くなることも考えられますので、十分な治療費の備えが必要といえるでしょう。
また肝細胞がんについては、B型肝炎やC型肝炎が要因となることが多いので、がんのみならず肝炎などの肝臓の病気について普段から注意しておくことがとても大切です。予防できるところは、しっかりと予防していきましょう。
【がん治療を知るシリーズ】
・大腸がんの治療とその費用|がん治療を知るシリーズ1
・肺がんの治療とその費用|がん治療を知るシリーズ2
・乳がんの治療とその費用|がん治療を知るシリーズ4
がん保険が必要なのか気になる方はこちらの記事もどうぞ
↓ ↓ ↓
[blogcard url=”https://www.kurashino-okane.com/medical-insurance/cancer-insurance-need/”]
※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。