三大疾病とは主に、日本人の死因の約半数を占める「がん」、「心疾患」、「脳血管疾患」のことを言います。(厚生労働省 平成28年人口動態統計「主な死因別死亡数の割合」より引用。以下、文中の死因順位についても同様。)以前は不治の病と言われていたこれらの病気も、医療技術の進歩によって、適切な治療を受けることで元の生活に戻れる可能性も高くなっています。しかし逆に、生活習慣の変化や、ストレス、高齢化の進行などによって三大疾病になるリスクは高まっている現状もあります。
まずは三大疾病がどのような病気なのか知り、その備えのひとつである「三大疾病保険」について解説したいと思います。
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目次
三大疾病とは?
悪性新生物
がんは、体の中の正常な細胞が「がん細胞」へと変異し、増殖することによって周囲の組織を破壊し、臓器の機能不全などを引き起こす病気です。
通常は免疫細胞が退治するのですが、それがうまくいかないケースがあります。
免疫力の低下や、細胞の中の遺伝子に対して、外部からの刺激や環境要因が加わるためだと考えられています。
具体例を挙げれば、喫煙や食品添加物、発がん物質、ウィルス・細菌、放射線・紫外線など、身の回りの様々物質がその引き金になるといわれています。
がんは発生する場所によって分類されます。
骨髄などの造血器に発生する「白血病」や「悪性リンパ腫」や「骨髄腫」、また、臓器の表面の組織に発生する「肺がん」や「乳がん」や「胃がん」、他にも、骨などの非上皮細胞に発生する「骨肉腫」や「細胞肉腫」などがあります。
がんは、あらゆる病気の中でも最も死亡率の高い病気で、長年日本人の死因第1位となっています。
また、がんの恐ろしいところは、初期にはほとんど自覚症状がないということでしょう。
そのため、健康診断などで発見されたときには既に進行していたというケースも少なくありません。
心疾患
心臓は、全身に絶えず血液を送り続ける臓器であり、基本的に筋肉組織で構成されています。
心臓が適切に働くには、多くの酸素や栄養が必要となりますが、それを運んでいるのが心臓を取り巻く「冠状動脈」という血管です。
心疾患は、その冠状動脈が、動脈硬化などの原因で詰まることで血液が流れにくくなり、結果として酸素や栄養が不足することによって血流障害が起きる病気です。
動脈硬化が起こる原因としては、例えば高血圧や糖尿病、高脂血症、肥満などが挙げられます。
虚血性心疾患の症状は、痛みや息苦しさです。
運動時には特に多くの酸素が必要となるため、運動に伴い症状が現れやすいのですが、状態がひどくなると安静時にも症状が出たり、時には意識消失や心停止を起こすこともあります。
虚血性心疾患には、「狭心症」や「心筋梗塞」などがありますが、虚血性以外では、高血圧による「心肥大」や、「心膜炎」、「心筋症」、また「肺塞栓症」などの肺の病気も心疾患に分類されます。
全身に血液を送り出している心臓は、生命活動を維持するうえで最も重要な臓器であり、心臓の停止は「死」を意味します。
心疾患が恐ろしい最大の理由は、その点にあるといえるでしょう。
心疾患による死亡率は「がん」に次いで死因第2位です。
発症は突然で、かつそれがすぐに命に関わるケースにもあるということが、心疾患の恐いところです。
脳血管疾患
脳は心臓の拍動や呼吸、体温調節などといった生命活動をはじめ、行動や言動、思考や感情、感覚を司る重要な役割を担っています。
脳内には、脳細胞が情報網を張り巡らせ、高度で複雑な機能を果たしています。
この脳細胞に酸素と栄養を運んでいるのが、脳内を走る血管です。
脳血管疾患とは、脳の血管のトラブルによって、脳細胞が破壊される病気の総称です。
大きく分類すると、心疾患と同じように血管が詰まる虚血性の「脳梗塞」と、血管が破れることによる出血性の「くも膜下出血」・「脳内出血」、という2つのタイプがあります。
特に原因として考えられているのは、高血圧と喫煙ですが、他にも運動不足や飲酒、ストレスや睡眠不足などの生活習慣が引き金となります。
尚、特に心臓の血管にできた血栓が原因で起こる脳梗塞は、「心房細動」という不整脈が最大の原因であることが分かっています。
脳血管疾患の恐ろしいところは、一命をとりとめても、何らかの後遺症が残ることがあるということです。
手足の麻痺をはじめ、言語障害や視覚障害、感覚障害などさまざまなものがありますが、どのような後遺症が現れるかは、損傷を受けた場所と程度によります。
また、程度によっては寝たきりになったり、介護が必要になったりするケースもあります。
三大疾病保険の特徴
三大疾病保険(保険会社によっては、特定疾病保険とも言います)は、三大疾病を発病後、「所定の状態」になった時に保険金を受け取ることができます。
また、三大疾病に加え、「死亡」と「高度障害状態」になった場合に保険金を受け取ることができます。
ただし、それぞれの商品によって保障内容は異なりますが、大半の場合は保険金を受け取れるのは一度だけです。
例えば一度がんになって保険金を受け取ったら、その後は他の三大疾病や死亡時には保険金は受け取れません。
保障の内容について、チェックポイントは2つあります。
三大疾病の範囲
前述したがん、心疾患、脳血管疾患の全てをカバーする商品はなく、多くの保険会社では、「がん」、「急性心筋梗塞」、「脳卒中」と病名を絞っています。
特にがんについては一部のがんを対象外としている商品があります。
検討する商品が、三大疾病のうちどこまでを保障しているかを、必ず把握しておきましょう。
「所定の状態」の違い
三大疾病保険は、三大疾病になれば必ず保険金をもらえる訳ではありません。
例えば「がん」は、保険の責任開始から90日間は対象外です。
また「急性心筋梗塞」と「脳卒中」については、保険会社によって『発病後60日以上の労働制限や言語障害』というように後遺症の継続が条件となっていたり、『20日以上の入院』や『所定の手術』を受けることを条件としている商品もあります。
いざというときに、こんなはずではなかったということがないように、予め確認しておきたい項目です。
三大疾病保険のメリット・デメリット
メリット
多くの三大疾病保険は、終身保険タイプも用意されており、その場合支払った保険料が積立てられていますので、解約時にはある程度の返戻金があります。
(加入から早期に解約した場合は返戻金がないか、あってもごくわずかです。)
三大疾病の時にはまとまった資金を受け取ることができ、三大疾病にならずに亡くなった場合には遺族が保険金を受け取ることができ、保険金を受け取る前に解約した場合には支払った保険料に対し一定の割合で返戻金として返ってくる、と考えれば、どのケースになっても必ず受け取ることができるのが、三大疾病保険の魅力でしょう。
また、設定する保険金額によりますが、数百万単位の資金を一度に受け取れることもメリットと言えるでしょう。
資金の使い道は自由ですから、病気の治療費やベッド代だけでなく、一時的に減少する収入の補填や、家族の生活費に充てることも可能です。
デメリット
一方で、給付金の支払い条件がかなり厳しいことがよく指摘されています。
前述したように、対象の病気になったら給付金が受け取れる、という訳ではありません。
がんの種類によっては対象外であったり、心筋梗塞・脳卒中の場合は、後遺症や入院が一定期間継続しなければ対象となりません。
また、給付金を一度受け取れば保険契約は終了します。
その後、治療が継続した場合の入院費や治療費は受け取れませんし、再発や他の三大疾病にかかった時にも、もう給付金を受け取ることはできないのです。
継続治療や再発のリスクに備える場合は、医療保険やがん保険など、他の選択肢も検討することをお勧めします。
三大疾病保険とがん保険のどちらを選ぶべき?
がん保険は、その名の通り「がん」に備える目的の保険商品です。
選択した商品によって保障内容は異なりますが、一般的にはがんと診断時の診断一時金、また入院や通院の日数分の給付金や、手術・放射線治療・抗がん剤治療などの治療に合わせた給付金を受け取ることができます。
がんの治療に合わせて幅広くカバーできますので、がんに対する保障は手厚いです。
その反面、がんにならなかった場合やがん以外の病気に対しては何も受け取ることができません。
基本的には死亡時にも保険金はなく、多くの場合掛け捨て型で解約しても返戻金はありません。
三大疾病保険は、その名の通り、対象となる病気は「がん」だけでなく「三大疾病」に広がります。
ただし、受け取れる給付金は大半の場合一時金のみで、決して保障が手厚いとは言えません。
その反面、病気にならなかった場合には、死亡時に保険金が、または生存中に解約すれば終身保険タイプの場合、返戻金を受け取ることができます。
商品の優劣を結論づけることはできません。「どちらが得か」ではなく、自分は「どのようなケースに備えたいのか」を考えることが重要ではないでしょうか。
まとめ
日本人の死因の上位を占める「三大疾病」に対して、経済的な準備をしておくことはとても大切です。
保険で準備することはひとつの選択肢ですが、商品の比較に目を向け過ぎると、本来の目的を見失ってしまいます。
ご自分の家計や貯蓄、健康状態や遺伝情報を整理し、何が心配なのか、どのような保障を準備しておきたいのか、保険にどれくらいのコストをかけられるのか、を整理した上で商品選択をしていけるといいでしょう。
■保持資格:CFP®資格、住宅ローンアドバイザー、宅地建物取引士
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※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。