医療保険の見直しをするなら賢く選びたい。そのためには自分が置かれている現時点のライフシーンに合わせて選ぶことが大切です。年齢や家族構成、収入や生活環境などによって選ぶべき保障内容が異なります。
また、医療保険を見直しするなら、まずは公的医療保険でどこまでカバーされるのかを知っておくことも大事です。そんな、医療保険の見直しに必要な情報やポイントを順番に見ていきましょう。
目次
1.医療保険はなぜ必要?公的医療保険だけでは足りないの?
医療保険の見直しの前に、民間の医療保険は本当に必要なのか、というそもそものことを最初に知っておきましょう。民間の保険会社などが取り扱う医療保険の目的は、「公的保険だけでは不足する分をカバーすること」にあります。ですから、自分が加入している公的医療保険でどこまでカバーされるのかを知っておくことが大切です。
1-1.公的医療保険の役割と、高額療養費制度
日本では国民全員が公的医療保険に加入しており、これを「国民皆保険(こくみんかいほけん)制度」といいます。この制度のおかげで、働き盛りの人はもちろん、小さな子どもから高齢者まで、日本全国どこの医療機関でも一部負担金(2~3割)だけで、病院で治療を受けたり、薬を調合してもらえたりしますよね。このように日本の公的医療保険制度は、みんなで助け合う相互扶助のしくみでできています。
また公的医療保険には「高額療養費制度」という、医療費を抑えるための制度があります。これにより、ひと月(月の初めから終わり)の間にかかる医療費については、一定金額以上のものは軽減される仕組みになっています。
■高額療養費制度<69歳以下の方の、ひと月(月の初めから終わりまで)の上限額>
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) | |
---|---|---|
ア | 年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
イ | 年収約770万円~約1,160万円 健保:標報53万~79万円 国保:旧ただし書き所得600万~901万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×+1% |
ウ | 年収約370万円~約770万円 健保:標報28万~50万円 国保:旧ただし書き所得210万~600万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
エ | ~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 | 57,600円 |
オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
※厚生労働省Webサイトより
このように、高額療養費制度があることで、ひと月あたりにかかる医療費は、例えば年収約370万円~約700万円の人の場合で「約8万円+α」ということになります。
ただし、高額療養制度の対象外となっている費用もあり、それが全体にかかる医療費を大きく左右することになります。
1-2.高額療養費制度の対象外となる費用
高額療養費の対象外となる費用は次の通りです。こうした費用をカバーするために、医療保険に加入する、と考えるとわかりやすいでしょう。
■高額療養費の対象外となる費用
差額ベッド代 | 入院する部屋の料金。1日0円の大部屋から数万円する個室まで様々 |
---|---|
入院中の食事代 | 一般の人 :一食460円 |
先進医療費 | 国が認可する特定の医療機関で行われている最先端治療。保険が適用にならず全額自己負担となる(診察や検査費用などは保険適用) |
その他 | ・自由診療は全額自己負担 |
※筆者作成
1-3.医療費を一番大きく左右するのは?
自己負担する費用の中で、とくに医療費を大きく左右するのは、「差額ベッド代」と「先進医療費」です。
実際に入院することになった時、個室がいいのか大部屋でもいいのかなどあらかじめ考えておくことも必要です。ただし、希望する部屋が空いていないこともある、ということは知っておく方がいいでしょう。
また、治療方法についても、公的保険適用内の治療を受けるのか、最先端の先進医療などを受けてみたいのかなど、自分がどのような治療を受けたいのか、ということも含めて考える必要があります。
■差額ベッドの料金別の分布
※厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」(2018年11 月報告)より作成
2.ライフシーン別!医療保険を賢く見直しするポイント
ではいよいよ、ライフシーンごとに、医療保険の見直しのポイントを見ていきましょう。
2-1.独身男性の見直し
若い世代や独身の時期は入院のリスクは少ない時期ですが、若くて保険料が低いうちに可能な範囲で医療保障を確保しておくということが見直しのポイントです。独身の方でも30代を過ぎる頃には、医療費用が高額となる、がんなど生活習慣病への備えもプラスする時期です。
2-2.独身女性の見直し
女性の場合、若くてもかかりやすい女性特有の疾患リスク(乳がん、子宮がん、帝王切開など出産に伴う疾病)がある、という点に注意が必要です。男性よりもリスクが高いということです。なるべく早めに女性特有の傷病に手厚い女性向けの医療保障を確保しましょう。とくに結婚や出産を視野に入れている方は妊娠してからでは女性疾患用の特約を増やせない場合もありますので注意してください。
2-3.子どもがいる夫婦の見直し
男性は、自分が入院や手術の際にかかる費用と共に、配偶者と子どもの生活にどのように影響するか、ということも考慮して必要な保障を確保 します。例えば夫婦共稼ぎなどの場合、自分だけではなく、妻の方も看病や病院とのやりとりなどで、仕事に影響し収入減となる場合もあります。また、年齢によって生活習慣病への備えも大切です。
女性は、女性疾患への医療保障を早めに確保するとともに、やはり自分が入院や手術となった時に、夫と子どもの生活を具体的に想定して保障を選びましょう。とくに家事育児をどうするのか、ということも想定しておきましょう。誰かに子育てをサポートしてもらえる環境にある人と、そうではない場合とでは出ていくお金が大きく違いますので、確保する保障も違ってきます。
2-4.シングルマザー・シングルファザーの見直し
自分が入院などで働けなくなったときに収入減となる可能性がある人は、とくに自分自身の医療保障を第一優先でしっかり確保しましょう。シングルファザー・シングルマザーの、必要保障の優先順位は「自分の医療保険」→「自分の死亡保険」→「子供たちの教育費の積立」という順番です。
2-5.子どもが社会人になったときの見直し
老後に向けた保障内容に切り替える時期です。高齢になるほど生活習慣病のリスクが高くなりますので、医療保険は終身タイプの保障を確保する方が先々も安心です。予算がある場合は、老後に負担が少なくなるように、一定の年齢で保険料の支払いが終了するタイプの医療保険も検討してみましょう。
2-6.シニア世代の見直し
高まるリスクに対応できるよう、医療保険の内容を再チェックし、安心・万全の備えをしましょう。終身型への切り替えや、先進医療特約を付加、特定の治療保障を手厚くするなど、検討の必要があります。
一方で 、ある程度貯蓄があり、医療費用は自分の貯金でまかなえるという場合には、医療保険を減らしてもいい時期です。ただし、先進医療特約など高額な医療費に対応するものは確保しておく方が安心です。
3.まとめ:ライフシーンと受けたい治療に合わせて見直しを
もしも入院や手術となった時に、自分だけでなく家族に与える影響なども総合的に考慮した上で、それぞれのライフシーンと自分の受けたい治療や環境などに合わせて、医療保険の見直しをしましょう。
できれば、入院時の環境など自分の希望をよく理解してくれる専門家に相談をした上で、必要な保障が確保されている商品を絞ってもらう方が確実ということも言えます。
保険・金融専門の執筆家で庶民感覚のわかりやすい文体に定評がある。保険WEBサイト、経済紙記事、書籍「就業不能リスクとGLTD(共著)」ほか執筆実績多数。保険業界メールマガジンinswatch発行人。
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