【2020年実施】所得税の基礎控除・給与所得控除の改正を解説

2022-04-06

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2018年度の税制改正で決定した、所得税における「基礎控除の引き上げ」と「給与所得控除の引き下げ」が、2020年(令和2年)1月1日から実施されます。

改正内容についてよくわからないという人もいるかもしれませんが、年収850万円以上の人は実質的な税負担増となるため、大いに注意が必要です。そこで、今回は税制改正による基礎控除と給与所得控除の変更点についてわかりやすく解説します。

1. 基礎控除・給与所得控除改正の背景

政府が掲げる「働き方改革」やフリーランス の増加など、働き方が多様化するのにともない、2018年度の税制改正で2020年1月からの基礎控除の引き上げと給与所得控除の引き下げが決定しました。この基礎控除および給与所得控除は、所得税を計算する際の所得控除に該当します。

2. そもそも所得控除とは

おさらいをしておくと、所得控除とは、所得税の計算においてある一定の要件に当てはまる場合に所得の合計から一定額を差し引くことができるという仕組みで、基礎控除や扶養控除、医療費控除など合計で14種類あります。

たとえば、同じ年収でも子どもがいる世帯では、いない世帯に比べて教育費や生活費がかさみますし、持病で定期的な通院が必要といった世帯では、通院のために医療費がたくさんかかります。そこで、その分を所得から控除することで税負担を減らせるよう、子どもがいる場合は扶養控除が、医療費が一定額以上の場合は医療費控除が受けられるようになっているのです。

なお、同じ所得額であれば所得控除が大きいほど、納める所得税額は小さくなります。

3. 基礎控除は原則10万円アップも高所得者はダウン

所得控除のうちの一つである「基礎控除」は、職業や扶養者の有無に左右されず、誰でも一律で受けられる控除です。これまでは所得の大小にかかわらず一律38万円でしたが、今回の改正により10万円引き上げとなり、原則48万円に

一方で、高所得者にも一律で控除を適用する必要はないという意見(いわゆる“金持ち優遇”への批判)により、高所得者については合計所得が2,400万円超~2,450万円以下だと32万円、2,450万円超2,500万円以下だと16万円と段階的に引き下げられ、2,500万円を超えると控除はゼロになりました。

合計所得金額
 2,400万円以下2,400万円超2,450万円以下2,450万円超2,500万円以下2,500万円超
控除額改正前一律38万円
改正後48万円32万円16万円0円

4. 給与所得控除は10万円の引き下げ、高所得者はさらにダウン

給与所得控除とは、給与所得者の給与から一定額を控除する仕組みです。会社員等の給与所得は収入から給与所得控除を引いて計算します。個人事業主が確定申告時に必要経費を収入から差し引くことの代わりとなる仕組みだと考えればわかりやすいでしょう。

今回の改正で、その給与所得控除が原則10万円の引き下げとなりました。

4-1.一般的な会社員は給与所得控除の引き下げと基礎控除の引き上げで±0

「控除が原則10万円の引き下げ」と聞くと、税金の負担が増したように感じますが、一般的な会社員の場合は、先ほど解説した基礎控除とこの給与所得控除の両方が適用になります。基礎控除が10万円引き上げられるのに対して給与所得控除が10万円の引き下げとなるため、実質的にはプラスマイナスゼロで、税金の負担に影響なしということになります。

4-2.年収850万円超の会社員は10万円以上の引き下げで増税に!

一方で、給与等の収入金額が850万円を超える場合には要注意です。というのは、改正前の上限が給与等の収入金額(給与等の収入金額 =給与等の総支給額から通勤手当などの非課税所得を引いたもの)1,000万円超で給与所得控除額220万円だったのが、改正後には給与等の収入金額850万円超で給与所得控除額195万円になったためです。

つまり850万円超になると、給与所得控除の引き下げ額が10万円を超えるため、基礎控除の10万円アップでは引き下げ分を補えなくなり、増税になってしまうからです。

■給与所得控除の変更

給与等の収入金額給与所得控除額
改正前改正後
180万円以下収入金額 ✕ 40%
(65万円に満たない場合65万円)
収入金額✕40%-10万円
(55万円に満たない場合55万円)
180万円超 360万円以下収入金額✕30%+18万円収入金額✕30%+8万円
360万円超 660万円以下収入金額✕20%+54万円収入金額✕20%+44万円
660万円超 850万円以下収入金額✕10%+120万円収入金額✕10%+110万円
850万円超 1,000万円以下195万円(上限)
1,000万円超220万円(上限)

4-3.給与所得控除と基礎控除の改正による会社員等への影響

以下のとおり、給与等の収入金額が違う2つのパターンで影響を見ていきましょう。

【給与等の収入金額500万円の場合】

  • 改正前→基礎控除38万円+給与所得控除154万円=192万円
  • 改正後→基礎控除48万円+給与所得控除144万円=192万円

実質的な影響はなし

【給与等の収入金額860万円の場合】

  • 改正前→基礎控除38万円+給与所得控除206万円=244万円
  • 改正後→基礎控除48万円+給与所得控除195万円=243万円

改正後は控除額が減るため税負担は増加する

このように、給与等の収入金額850万円超の高所得者になると、控除額が減るため税負担が増加するのです。ただし、23歳未満の扶養家族がいる子育て世帯や、特別障害者を扶養する世帯については、負担軽減のため所得金額調整控除が適用されます。

4-4. 個人事業主等は給与所得控除は関係なく、トータルで減税

個人事業主等、給与所得者以外の人にとっては給与所得控除の引き下げは関係がなく、基礎控除の引き上げ分のみが関係するため減税となります。

個人事業主(フリーランス等)は、事業所得の額にもより違いますが、所得税と住民税あわせて2~3万円程度の減税が期待できます。

5. まとめ:所得税の改正は今後も要注意!

今回の所得税の基礎控除・給与所得控除の改正は、基礎控除が10万円アップし給与所得控除が関係がない個人事業主(フリーランス)にとってはうれしい改正といえます。

それに対して、会社員の場合、給与等の収入金額が850万円を超えると、税負担が重たくなることに(年収1,000万円で数万円の増税)。
しかも、給与所得控除の上限が適用される収入は、2013年に1,500万円超だったものが、2016年には1,200万円超、2017年には1,000万円超、そして今回が850万円超と下がってきており、今後もさらに下げられる可能性もないとは言い切れません。そうなれば、「そんなに収入が多くないから関係ない」とは言っていられなくなるかもしれません。

所得税は給与から引かれるため、会社員にはその影響がわかりづらいのですが、実はせっかくベースアップした給与が税金の負担増によって無いも同然になってしまう、なんていうことも。税制改正は毎年行われますので、その発表内容に今後も注視するようにしましょう。

株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)執筆:株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)
金融を専門とする編集・制作プロダクション。多数の金融情報誌、ムック、書籍等で企画・制作を行う。保険、身近な家計の悩み、投資、税金、株など、お金に関する幅広い情報を初心者にもわかりやすく丁寧に解説。

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