LCC(格安航空会社)の広がりで低価格な航空券が手に入りやすくなるなど、私たちにとって海外旅行はどんどん身近なものになっています。でもだからといって、日本と同じ感覚で行くのはなにかと危険。病気やケガ、盗難といったアクシデントへの備えをしっかりしておかないと、楽しい旅行が一転、辛い思い出になってしまう場合も。
そこで検討したいのが「海外旅行保険」です。
しかし限りある予算の中で、「海外旅行保険ってわざわざ加入する必要あるの?」と考える人もいらっしゃるのでは?
そのような疑問をふまえ、ここでは海外旅行保険への加入の必要性や、かかる保険料や補償、選び方について、詳しく解説していきます。
目次
1.海外旅行保険って必要?トラブル実例から考える
海外旅行保険の必要性について考えるにあたって、まずは海外旅行者が経験し得るトラブルについて実例を交えつつ見ていきましょう。
1-1.海外旅行者の29人に1人が事故に!
2017年度の調査(ジェイアイ傷害火災保険「トラブルデータ」より)によれば、海外旅行者の29人に1人(約3.42%)が、何らかの事故に遭っていることが分かっています。この確率をどのように取るかはその人次第ですが、万一のリスクの大きさをふまえると、決して低い数字ではないのは確かです。
1-2.海外での治療費は100万円を超えることも!
病気やケガによって海外で治療を受けた場合に大変なのが、医療費の支払いです。日本国内のように3割負担とはいかないため、医療費は高額になります。入院が必要となるレベルの病気やケガであれば、その治療費が100万円を超えることも少なくありません。
同じくジェイアイ傷害火災保険の2017年度の調査によれば、アメリカで急性大腸炎と診断され3日間入院して506万円を請求されたケースや、イギリスで頸椎椎間板ヘルニアと診断され307万円を請求されたケースなど、生死に関わる病気でなくても高額な治療費を請求される実例が存在します。救急車代や医療通訳の手配料、見舞いに来た家族の渡航費といった治療費以外の費用も含めると、なかには1,000万円以上請求された、なんていうケースも……。
また、海外では盗難などの犯罪にあう確率も上がります。アメリカや欧州諸国などの先進国もその例外ではなく、警戒心の薄い日本人を狙った財布やスマホ盗難などの被害は後を絶ちません。
海外旅行保険はこれらのリスクに備えられますので、その点で必要といえそうです。
2.海外旅行保険の補償はどの程度必要?
海外旅行保険について、どんな補償がどれくらい必要か見ていきましょう。
2-1.海外旅行保険に加入すると、こんな補償が得られる
海外旅行保険では、海外旅行で起こりうる種々のトラブルに対して、様々な補償項目を用意しています。以下では、6つの主な補償項目を紹介します。
- 疾病・傷害治療
ケガや病気による治療費を補償します。高額な治療費請求は、海外旅行におけるトラブルの中でも最も厄介です。そのため疾病・傷害治療補償は海外旅行保険の最重要補償ともいえ、実際の利用率の高さもNo.1です。 - 救援者費用
病気やケガにともなって発生した輸送費などを補償します。具体的には、親族が駆けつける際の渡航費や滞在費、医師・看護師をともなうチャーター機による搬送費などに対して保険金が支払われます。こちらも高額費用が発生するケースが多く、重要な補償となります。 - 携行品損害
所持品の盗難等を補償します。海外旅行では盗難被害のリスクも高く、なにかあった際には非常に役立つ補償です。ただし、こちらに過失がある場合は補償されないことも多く、また支払限度が設けられていることもあるので、その点は要確認となります。 - 個人賠償責任
誰かにケガをさせた、誰かの持ち物を破損させたなどで賠償請求された際の補償です。ホテルの備品を壊してしまったことで高額な請求がなされた実例もあるため、万一への備えとしては見逃せない補償です。
- 死亡(傷害・疾病)
ケガや病気によって死亡した際の補償です。ただし、こちらに重大な過失がある場合は、補償されないケースがほとんどなので注意が必要です。
他にも、航空機や航空会社の事故や不備によって発生したロストバゲージなどの負担費用をまかなう補償などがあります。
2-2.ベストの補償額はどのくらい?
海外旅行保険のそれぞれの補償項目の利用率を見てみると、実際に利用されているのは「疾病・傷害治療補償」「携行品損害」が全体の8割を占めます。
また、ここまで高額請求の実例をあげてきたものの、海外旅行のトラブルによって300万円以上請求された例はかなり少なく、大抵の場合はそれ以下の金額で済みます。これらの実状を鑑みてそれぞれの補償項目について検討していきましょう。
2-2-1.絶対に必要な補償
- 疾病・傷害治療
高額請求の実例を踏まえ、500万円以上の補償は準備したいところです。ただし1,000万円の治療費請求などは可能性が著しく低いので、500~700万円程度が目安となります。 - 救援者費用
海外では救急車での輸送さえ高額です。チャーター機の利用や親族の渡航費などは言わずもがなで、300万円程度の補償額は欲しいところです。 - 携行品損害
携行品損害についてはそこまで大きい金額は不要です。30万円程度あれば充分でしょう。
2-2-2.必要に応じて準備したい補償
- 個人賠償責任
賠償金に関しては、多額の請求も考えられます。ホテルのバスタブを壊して1000万円以上請求された実例もあり、絶対の安心を求めるならば2,000万円程度は必要になるでしょう。 - 死亡(傷害・疾病)
死亡補償の金額目安は、その人の状況によって変わってきます。独身か所帯を持っているかもそうですが、たとえば生命保険に加入している場合、海外旅行保険で高額な死亡補償を付けなくても遺族への補償は十分という場合もあるでしょう。逆にそういった備えが何もないのであれば、それなりの金額を設定する必要があります。
以上が目安となる補償額になります。ただし、これはあくまで目安。年齢が上がれば、トラブルリスクは高まりますし、行き先や旅行の期間などでもリスクは大きく異なります。自分の状況を踏まえて適宜判断することが重要です。
3.公的医療保険や民間の医療保険ではまかないきれない!?
海外旅行中の病気やケガの治療費について、日本の公的医療保険(いわゆる健康保険)や、民間の医療保険ではどの程度の保障が得られるのかも知っておきましょう。
3-1.公的医療保険には海外療養費制度がある
まず公的医療保険については、健康保険証を持っていれば公的医療保険の海外療養費制度を使用することができます。
海外療養費制度では、海外で受けた治療と同等の治療を日本で受けた場合にかかるお金を算出し、その7割が支払われます。ただし、日本と海外では医療に関するルールが大きく異なるため、実際に海外で支払った金額よりも戻ってくる金額は大幅に少ないこともあります。
3-2.民間の医療保険は原則、国内と同じように保障される
次に民間の医療保険について。ほとんどの保険会社の医療保険は、入院・手術等の保障については海外旅行中でも国内と同じように保障されます。
ただし、治療を受けた医療施設によっては適用されない場合があるので注意が必要です。また、なかには海外での治療費を保障しない保険会社もあるので、現在医療保険に加入している方は、一度よく確認してみてください。
3-3.国内の保険では海外での治療費をカバーしきれない
前節までに見てきたように、公的医療保険も民間の医療保険も海外での治療でも一定の保障はされます。しかし、どちらも国内の治療を前提にした保険であり、海外での治療の場合も国内基準の保障しかありません。高額な医療費がかかる国で治療を受けた場合は、カバーしきれない可能性が高いです。
4.海外旅行保険はどこで申し込むのがお得?
では実際に海外旅行保険を検討する際には、どこで申し込むのがお得なのでしょうか?
申込場所として代表的な以下の4つの場所についてそれぞれ見ていきましょう。
4-1.「旅行代理店」- 手間が省ける
ほとんどの大手旅行代理店では、海外旅行保険に申し込むことができます。旅行の申込みと一緒に保険を申し込むことができるため、手間が省ける点がメリットとなります。
ただし、旅行代理店のスタッフは保険の専門家ではないため、保険内容に関する細かな質問に正確に対応できるかどうかは疑問符がつきます。
4-2.「保険代理店」- 専門家がいる店ならメリット
街中の保険代理店でも、海外旅行保険は申し込むことができます。保険の専門家と相談しながら申し込みできる点は大きなメリットなのですが、多くの保険代理店では海外旅行保険の扱い高はごくわずか。なかには海外旅行保険について詳しいスタッフがいない保険代理店もありますので、注意しましょう。
4-3.「空港」- 緊急の選択肢
空港では、カウンターと自動販売機の2箇所で海外旅行保険の申込みが可能です。フライト前にササっと契約できるため利便性は非常に高いのですが、あまりおすすめすることはできません。納得した保険契約をするためには、保険内容をしっかり吟味することが必要となるからです。あくまで緊急の選択肢として考えておきましょう。
4-4.「インターネット」- 割安でおすすめ
海外旅行保険の申し込み場所としてもっともおすすめしたいのがインターネットです。ネット申し込みは自宅でできるため非常に手軽。そのうえじっくり時間をかけて申し込むことができます。また、窓口契約と比べて安い保険料で契約できる場合も多く、一般的なファミリーを想定した最安シミュレーションなども例示してくれるため、家族旅行のときなどにもぴったりです。
5.クレカの海外旅行保険で補償は足りる?
海外旅行保険は、クレジットカードの付帯保険を活用するという手もあります。そこでここからは、店頭やネット販売の商品と比較しつつ、クレカ付帯保険について検討していきましょう。
5-1.単体の海外旅行保険とクレカ付帯保険の違いはココ
単体の海外旅行保険とクレカ付帯保険の主な相違点について3つ紹介します。
- 補償期間
クレカ付帯保険の補償期間は出国から90日(3ヵ月)です。そのためそれ以降のトラブルについては補償が効かなくなります。一方、単体の海外旅行保険は契約の際に補償期間を設定でき、その日数によって保険料も変わってきます。 - 疾病死亡への対応
クレカ付帯保険では病気で死亡した場合の補償がありません。一方、単体の海外旅行保険には疾病死亡への補償があります。 - 治療費の支払方法
クレカ付帯保険の場合、治療費を一度病院で立替払いし、帰国した後に保険金を請求するのが基本です。一方、単体の海外旅行保険の場合、保険金がすぐおりるため、立替払いは必要なく治療が受けられます。(クレジットカードによっては、キャッシュレス対応の付帯保険もあります)
これらの相違点のうち、特に注意したいのは3つ目の「治療費の支払方法」です。海外の治療費は数百万円など多額になるケースもあります。そうした場合に、クレカ付帯保険の「治療費をいったん自己負担しなくてはいけない」という仕組みは、一時的に大きな金銭的負担をもたらすことになります。その後に払い戻されるとはいえ、数百万円という大金を支払うのは、非常に大変なことです。
5-2.年会費無料のクレカで一定範囲の補償をまかなう方法も
相違点を見ても分かる通り、単体の海外旅行保険と比べて、クレカ付帯保険の補償内容はかなり限定されます。しかしだからといって「クレカ付帯保険は使えない」と一概には言うことはできません。コスト面におけるメリットが非常に大きいからです。
クレカ付帯保険は、保険商品と違って保険料を支払う必要がありません。ただし、当然それぞれのクレジットカードの年会費はかかります。しかし、数あるクレジットカードのなかには、年会費無料の海外旅行保険付きカードが存在します。
さらにカード付帯保険は、複数のカードを持つことで、それぞれのカードの治療費の補償額を合算することができます。この合算方式を駆使すれば、一定範囲の補償を無料でまかなうことも可能なのです。
5-3.単体の海外旅行保険とクレカ付帯保険を組み合わせる手もある
年会費無料のクレジットカードを複数枚併用することで、治療費の補償額を500万円以上にすることはできます。ただし、補償が適用されるには、持っているだけで補償を受けられるもの(自動付帯)から、航空券など一部の支払いをそのクレジットカードでしているかどうか(利用付帯)など、条件がつきます。
また、「航空機遅延補償」などの細かな補償がついてないことも多々あります。いざという時に治療費の立て替えができない点もデメリットとなります。
そこで、より補償内容を手厚くしたいという人には、単体の海外旅行保険とクレカ付帯保険を組み合わせるという手もおすすめです。
5-4.家族旅行ならば単体の海外旅行保険に加入を
たとえば若い人の一人旅などでは、お金を節約したいので年会費無料のクレカ付帯保険で済ませるという人もいるでしょう。しかし、その場合は前述した内容のうちデメリットにあたる部分はしっかりと理解しておく必要があります。
また、子ども連れで家族旅行に行く場合には、やはり単体の海外旅行保険に加入することをおすすめします。
クレカ付帯保険は基本的に契約者本人のみを補償するため、夫婦それぞれがクレジットカードを持っていたとしても、子どもは補償されません。家族特約がついたクレジットカードや一部のゴールドカードなどでは家族全員を補償できるものもありますが、年会費が高めに設定されていることも多く、結果的にコストがかさむことも。
単体の海外旅行保険は、事前にネットで申し込むなどすれば決して高額ではありません。保険商品や補償範囲によってまちまちですが、ハワイ5日間、家族3人で3,500円程度から加入できるものもあります。いくら安全な国に行こうが、体調不良や病気はいつ襲ってくるともわかりません。保険には「お守り」の役割もあります。いざというときのために備えておくことで、楽しい思い出を作れるでしょう。
6.まとめ:安心して旅行を楽しむためにも海外旅行保険は必要!
海外旅行ではどんなトラブルが待っているかわかりません。安心した気持ちで旅行を楽しむためにも、海外旅行保険には加入することをおすすめします。
節約のためにクレカ付帯保険だけで済ませる場合には、そのデメリットも理解しておきましょう。
海外旅行保険はインターネット申込にするとそれほど高くはありません。節約した結果、トラブル時に大変なことになっては元も子もありませんから、どのように備えるのかしっかりと検討するようにしましょう。
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