所得補償保険(就業不能保険)に入る前に知っておくべき活用法

  • 公開日:2016年07月05日
    最終更新日:2021年11月24日
  • 損害保険

2021-11-24

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所得補償保険や就業不能保険に加入しようとしている方、ちょっとお待ちください。加入前にぜひ知っておいていただきたいことがあります。

所得補償保険(ここでは主にこの名称でお話します)は働けなくなって収入が途絶えたときに備える保険ですが、加入する人の職業や加入目的、補償タイプによって有効な活用方法が違っているのです。場合によっては、所得補償保険の必要性があまり高くないということもあります。

だから、もし所得補償保険のことをよく理解しないで加入してしまうと、肝心なときに役に立たなかったとか、不要なのに無駄に入ってしまっていたということになりかねません。

ここでは、所得補償保険の失敗を防ぐために必要な知識と活用例をご紹介していきます。ぜひ参考にして、適切な所得補償保険にご加入ください。

1. 所得補償保険(就業不能保険)はこんな保険

所得補償保険や就業不能保険は、病気やケガなどで全く働くことができなくなったときに保険金がもらえる保険です。全く働けないことを保険用語で就業不能といいますが、就業不能で給料などの収入が絶たれて生活費が不足してしまうリスクに備えることができます。

なお、所得補償保険とは原則的に損害保険会社が販売している保険で、就業不能保険とは生命保険会社が販売している保険です。保険会社の種類により名前が違っていますが、基本的に同じ保険だとお考えください。

■名称の違い

所得補償保険損害保険会社が販売
就業不能保険生命保険会社が販売

ここからは、一律に所得補償保険として説明を続けていきます。

※生命保険会社の就業不能保険を主体とした説明は以下の記事をご覧ください
→「就業不能保険は必要?上手に選ぶポイントをチェック!

1-1.もらえる保険金は現在の収入の範囲内

所得補償保険の保険金は月額いくら、または日額いくらという形で契約します。その際の保険金額は、被保険者の収入に応じて月収の範囲内で設定します。保険会社によって、月収の何%以内などという取り決めがあります。加入している健康保険によりますが、この数値は40~80%くらいになります。

1-2. 保険金を受け取れる期間(対象期間or てん補期間)

所得補償保険には免責期間があり、就業不能になっても、免責期間中は保険金がもらえません。この免責期間は7日間などと比較的短期間であるものと60~365日間などと長期間のものがあります。

保険金はこの免責期間が明けてから支払いが始まります。
支払い期間(てん補期間)については、免責期間が明けてから1年間または2年間という商品が多いですが、なかには60歳まで、65歳までという長期のものもあります。この支払期間中は所定の就業不能状態が続いている限り、保険金をもらうことができます。

1-3. 保険期間

所得補償保険は、保険期間が決まっている定期タイプの保険です。保険期間が1年で毎年自動更新されるものが多いですが、保険期間を3年、5年などとしているもの(その後自動更新)や、なかには保険期間が65歳までという保険もあります。

2. 所得補償保険には2つのタイプがある

所得補償保険は、免責期間の長さ、保険金の支払い期間の長さなどにより、比較的に短期間(1~2年)の就業不能状態に備える短期補償タイプと、長期間の就業不能に備える長期補償タイプに分けることができます。この違いを理解していないと、所得補償保険を正しく活用することができないのでご注意ください。

■短期補償タイプと長期補償タイプの違い

補償タイプ短期補償タイプ長期補償タイプ
免責期間7日程度60~365日
保険金の対象期間1~2年60歳まで、65歳まで
就業不能の要件・病気やケガの治療のために入院している
・入院以外の医師の治療を受けていて保険証券に記載した業務に全く(終日)従事できない
・病気やケガの治療のために入院している
・医師の指示による自宅療養でいかなる業務にも全く従事できない
想定される活用法病気やケガで1~2年の間、自分の仕事ができないようなときに備える一生寝たきりなどになって、どんな仕事もできないようなときに備える

2-1.短期補償タイプの特徴

短期補償タイプの所得補償保険は、保険金支払いの対象期間は1~2年くらいですが、免責期間も7日程度と短めなので就業不能になったら比較的早くに保険金を受け取れるようになります。また就業不能の要件は、入院に加え、病気やケガで医師の治療を受けていて保険会社に申請している自分の仕事が全くできない状態となっています。

したがって、病気やケガの治療により、今自分が従事している仕事が1日中できなくなり収入がなくなったときに備える保険といえるでしょう。

2-2.長期補償タイプの特徴

長期補償タイプの所得補償保険は、保険金支払いの対象期間は60歳まであるいは65歳までと長期間になりますが、免責間も60~365日と長くなっています。また就業不能の要件は、入院に加え、治療のための「自宅療養」で、しかも「いかなる業務にも」全く従事できない状態となっています。つまり、仕事を休まなければならない、自宅から出られないといったケースしか補償されません。たとえば、営業職の人が脚に大ケガを負って営業の仕事ができなくなったとしても、デスクワークができる状態であれば補償の対象となりません。

したがって、病気やケガで一生寝たきりなどになって、どんな仕事もできなくなり収入がなくなったときに備える保険といえるでしょう。

3. うつ病など補償されないケース

うつ病などの精神疾患になってしまった場合は、長期間仕事につくことができないことがあります。そのようなリスクに備えて所得補償保険を検討される方もいらっしゃいますが、残念ながら所得補償保険は、うつ病などの精神障害で働けないケースは補償の対象外となっています。

ただし、一部に精神障害補償特約がつけられる保険がるので保険会社に確認してみるとよいでしょう。

また、うつ病だけでなく一般的に以下のようなケースは補償の対象外となっています。

所得補償保険で補償されないケース

  • うつ病などの精神障害による就業不能
  • 無免許運転や酒気帯び運転によって生じたケガや病気による就業不能
  • アルコール依存、薬物依存等の精神障害による就業不能
  • 妊娠や出産、早産や流産による就業不能
  • むちうち症や腰痛で医学的他覚所見のないものによる就業不能
  • 地震や噴火、またはこれらによる津波によって生じたケガや病気による就業不能

基本的に、故意や重大な過失、違法行為などが原因で病気やけがをしたようなときは補償されないと思ってよいでしょう。
ただし、上記のような補償されないケースは保険会社や商品によって違っている場合がありますので、加入前に十分確認する必要があります。

4. 所得補償保険(就業不能保険)のメリット・デメリット

所得補償保険には、以下のようなメリット・デメリットがあります。

<メリット>
・働けないときの収入を補える
・長期の療養に備えることができる(短期補償タイプでも1~2年)

<デメリット>
・一定の免責期間がある
・就業不能の条件が厳しい
 [短期補償タイプ]終日働けないとき
 [長期補償タイプ]どんな仕事もできないとき(該当する可能性は低い)

5. 職業・目的別、所得補償保険(就業不能保険)の活用法

ここまで見てきた所得補償保険の特徴をふまえて、どのような活用法があるか例を考えてみましょう。

5-1. 会社員・公務員なら、寝たきり状態に備える

会社員が働けなくなったときの給料の補償を考える場合は、社会保険の保障をあわせて考える必要があります。

業務中の事故によるケガなどで会社を休んだ場合は、労災保険が適用され休業給付(平均賃金の60%)を受けることができます。また、業務とは関係のない事故によるケガや病気で会社を休んだ場合は、健康保険の傷病手当金(平均標準報酬月額の2/3)を最長で1年6ヵ月受けることができます。

このように会社員の場合は、社会保険により最低でも給料の60%以上が保障されるので、短期的な補償として所得補償保険に入る必要性は低いといえるでしょう。

したがって、会社員にとって所得補償保険が役立つケースとしては、寝たきりなどで一生涯どんな仕事もできない状態になってしまったときのために、長期補償タイプの所得補償保険に入るということが考えられます。

ただし、そうなった場合でも会社員なら障害基礎年金と障害厚生年金がありますので、あまり大きな保険金にしなくてよいでしょう。

公務員も会社員と同様の考え方となります。

なお、傷病手当金のしくみについて知りたい方は、「傷病手当金の活用マニュアル|簡単にわかって申請できる!」をご覧ください。

5-2. 自営業者・個人事業主なら休業補償として

お店を個人経営しているとか、フリーランスで仕事をしているとか、いわゆる自営業者や個人事業主の場合は、会社員や公務員のように社会保障が充実していません(休業給付も傷病手当金もない)。したがって、病気やケガで仕事を休むことになってしまい、その間の収入が途絶えると生活に支障をきたす可能性があります。

そこで自営業者・個人事業主の方は、仕事を休まなければならない場合に備えて、短期補償タイプの所得補償保険に入っておき、自分で休業補償を用意する必要があります。

所得補償保険は、自営業者や個人事業主ほど役立つ保険といえます。

6. まとめ:所得補償保険(就業不能保険)は目的を明確にした上で加入を検討

所得補償保険には、短期補償タイプと長期補償タイプがあります。

短期補償タイプは自営業者や個人事業主の休業補償のための保険として、有益な保険といえます。一方、長期補償タイプは、寝たきりなどのようにどんな仕事もできない状態が長く続くときに備える保険です。

このような所得補償保険の特性をよく理解し、自分がどんなリスクに備えたいのかも整理したうえで、自分にあった保険を選ぶことが大切です。

※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。