生命保険の契約は20年~30年以上の長期間にわたることがほとんどです。その間、もし経済的な理由で保険料の支払いができなくなったらどうすればよいのでしょう?
「お金がないのなら、保険を解約すればよいのでは?」と考えがちですが、解約すると、その後の保障がまったくなくなってしまいます。
生命保険には、保険料の支払いを軽減またはゼロにして保障を継続できるしくみがあります。今回は、減額と払済(はらいずみ)保険についてお知らせします。保険料の支払いができなくなった時の対処法としておぼえておきましょう。
目次
1.保険金額を減らして保険料を安くする「減額」
保険料の支払いができないときの対処法の一つに、保険金額を減らして保険料を安くする方法があります。これを減額といいます。
1-1. 減額のしくみをチェック
減額とは、保険会社の定めた範囲で保険金額を減らすことです。保険金額が小さくなるため、そのぶん保険料も安くなります。商品ごとに減額後の最低保険金額が決まっており、これを下回らない範囲であれば減額が認められます。減額は、一度だけでなく複数回おこなうことができます。
減額は、元の保険の一部を解約したものとして取り扱われます。そのため、解約返戻金がある場合は支払われます。主契約に特約が付いている商品の場合は、主契約を減額すると特約も減額されることがあります。また減額しても、契約時の予定利率は維持されます。
■減額のしくみ
1-2. 減額のメリット・デメリット
減額には保険料の負担を軽くできるというメリットがある一方、保障額が減ってしまうというデメリットもあります。「毎月の保険料の支払いがきつい」という理由だけで減額をしてしまうと、必要な保障まで失うおそれがあります。いったん減額をおこなうと、原則として元の契約に戻すことができませんので注意しましょう。
- 保険料が安くなる
- 保障が継続する
- 解約返戻金があれば支払われる
- 契約時の予定利率が維持される
- 保険金額が小さくなる
- いったん減額すると原則として元の契約に戻すことができない
1-3. ライフステージの変化と減額
減額は、保険料の支払いができなくなったときだけでなく、ライフステージに変化があったときにも効果があります。
住宅購入や子どもの独立など、必要保障額が下がったときに既存の保険を減額することで、保険金額を小さくし、保障を継続することができます。既存の保険を解約して新たな保険に加入しようとすると、保険料が割高になるだけでなく、健康状態によっては加入ができないおそれがありますが、減額であれば、新たに入りなおす必要がなくなります。
■おもな減額のタイミング
ライフステージの変化 | 減額する理由 |
---|---|
住宅購入 | 住宅ローンを組むときに、多くの場合は団体信用生命保険(団信)に加入するため、住居費分の必要保障額が減る |
子どもの独立 | 子どもの教育費、生活費がかからなくなるため、その分の必要保障額が減る |
共働きになる | 専業主婦(夫)から共働きになることで収入が増え、生活費などの分の必要保障額が減る |
2.保険金額を減らして保険料の支払いを中止する「払済保険」
保険料の支払いができないときの対処法の一つに、保険料の支払いを中止して、保険金額を小さくする方法があります。これを払済保険といいます。
2-1. 払済保険のしくみをチェック
払済保険とは、保険料の支払いを中止して、その時点での解約返戻金を一時払いの保険料として、保険金額の小さな保険に切り替えたものです。保険期間は変わらず、契約時の予定利率が維持されます。商品ごとに、払済保険に変更できる最低保険金額が決まっているため、解約返戻金が最低保険金額に満たない場合は、変更ができません。また、元の保険に付いていた特約は消滅します。
払済保険に変更できるのは、終身保険や養老保険などの解約返戻金があるタイプの保険のみです。定期保険などの掛け捨ての保険は、払済保険にできません。払済保険に変更後、一定期間内であれば元の契約に戻すことができます。
■払済保険のしくみ ※一時払いの養老保険に切り替えた場合
2-2. 払済保険のメリット・デメリット
払済保険は、保険料の負担なしに保険を継続できるため、失業などで保険料が払えない場合にも保障を確保することができます。しかし、解約返戻金が少ない場合は、保険金額が大きく減ってしまいます。また、特約が消滅するため、医療特約や入院特約などを付けている場合は、新たな保険に加入する必要があります(健康状態によっては、加入ができない場合があります)。
- 保険料がかからない
- 保障が継続する
- 契約時の予定利率が維持される
- 保険金額が小さくなる
- 特約が消滅する
3.まとめ:解約を考える前に減額や払済保険への変更の検討を!
減額、払済保険とも、保険金額を小さくして保険を継続できる制度です。解約と違って保障が残るため、万一のことがあった場合にも保険金が支払われます。保険料の支払いができなくなったら、解約する前に減額や払済保険に変更できないか検討してみましょう。
※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。