公的年金制度を補うものとして、国が制度を整えた「iDeCo(イデコ)」(個人型確定拠出年金)。2017年に制度が変わったことで、加入者が年々増加しています。
そこで、お金に疎いライターが、iDeCoで生まれてはじめての資産運用をスタート。体験談を交えながら、iDeCoのABC(始め方)を解説します。
目次
1. そもそも、iDeCoって?
資産運用が初めての場合、iDeCoという用語を聞いただけで「何だか難しそう」と思ってしまいますよね。まずは、しくみからみていきましょう。
1-1. iDeCoのしくみ・特徴
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金とは別に給付を受けられる、私的な年金制度のこと。「個人型DC」「個人型401k」と呼ばれることもあります。国が制度を整え、国民年金基金連合会が運営しています。
加入は任意で、掛金の拠出・運用のすべてを自分で行うiDeCo。定期預金や投資信託などの運用商品を選び、毎月一定額を積み立てていくことで、老後の資産を形成できます。
特徴は、税制上の優遇が手厚く、オトクに積立投資できることです。自営業者など限られた人しか加入できませんでしたが、2017年の法改正により、加入対象者が拡大。原則、20歳以上60歳未満の人なら誰でも加入できるようになりました。
1-2. お金に疎いライターにもぴったり!?
私は2009年ごろ、かつての勤め先で企業型確定拠出年金に加入しました。掛金が会社持ちだったこともあり、当時は制度をきちんと理解しないまま運用していました。その後は、退職にともない加入者資格を喪失。次の勤め先に移り、やがてライターとして開業してからも確定拠出年金との関わりはありませんでした。
そんなある日、仕事で年金制度の記事を執筆することになり、下調べをしている最中にiDeCoについて知りました。調べるうちに、面倒くさがりでリスクをあまり取りたくない私にぴったりの積立投資制度であることがわかり、はじめる決意をしたのです。
2.「忙しいあなたにこそ」がiDeCoのメリット!
続いて、iDeCoのメリット、デメリットをみてみましょう。
2-1.【メリット】バツグンの節税効果
iDeCoの最大のメリットは、節税効果にあるといえます。
まず、お金を積み立てるとき。毎月支払う積立金については全額所得控除となり、所得税と住民税が課税されません(専業主婦・被扶養者は除く)。たとえば月に2万円をiDeCoで積み立てることで、所得税の課税対象額を24万円(年間)減らすことができ、そのぶん納める税金が安くなるというわけです。
そして運用を行って利益が出たときも税制優遇があります。通常、株式や投資信託などのの運用で生まれた利益には、20%程度の税が課されますが、iDeCoの場合はゼロ。これは大きなメリットです。
2-2.【メリット】多忙な人も安心!自動積立
iDeCoのもう一つのメリットは、「原則放置しておいても積立てられる」ということ。最初に運用商品を選び、ムリのない積立額を決めれば、その後は毎月、自動的に積立金が拠出されていきます。個別株式やFXの取引などのように、値動きや為替変動などを気にして投資するタイミングを判断する必要がないのは、投資初心者にとっては嬉しいところ。働き盛りで忙しい人にも、iDeCoは適しているといえます。
2-3.【デメリット】60歳までは原則引き出せない
もちろんデメリットもあります。iDeCo最大の弱点は、原則60歳になるまで積立金を引き出せないこと(死亡や高度障害が残った場合を除く)。結婚やマイホーム購入、子どもの教育費など、「現役」でいる間に起こりうる多額の出費に充当することはできません。
iDeCoは、老後に備える私的な年金制度です。60歳まで引き出せない分、確実に老後の蓄えをつくることができます。身の丈に合った積立額を設定して、コツコツ運用していきましょう。
2-4.【デメリット】さまざまな手数料がかかる
iDeCoの加入・運用にあたっては、さまざまな手数料がかかります。
1つは、国民年金基金連合会に支払う手数料。加入時に2,777円(税込)、毎月の掛金拠出に103円(税込)を支払わなければなりません。また、資産を管理する事務委託先金融機関(信託銀行)にも、月額64円(税込)の手数料を支払う必要があります。
そして、iDeCo口座を開設した金融機関へも口座管理手数料の支払いが発生。また、運用商品として投資信託を選んだ場合は、間接的に信託報酬の支払いがあることも注意しておきましょう。
3. iDeCoの始め方|商品選びまでの3ステップ
iDeCoを始めるにあたって悩ましいのが「どの商品を選ぶか」です。金融機関選びから商品選びまでの3つステップごとに始め方のポイントをご紹介します。
3-1. まずは金融機関をセレクト
iDeCoをはじめると決めたら、まずは金融機関選びです。加入にあたっては、1つの金融機関を選択する必要があります。
口座は、たいていの銀行や証券会社でつくることができますが、気をつけておきたいのが口座管理手数料です。毎月数百円かかる金融機関もあれば、無料となっているところもあります。また、投資信託の信託報酬も商品によって率が異なるので、注意すべきポイントです。
私は、口座管理手数料が無料であること、信託報酬の安い投資信託を多く扱っていることを条件に比較し、ネット証券の「マネックス証券」に口座を開くことにしました。
3-2. 自分に合った積立額を決定
次に、積立額の設定です。毎月の積立額は5,000円から。企業年金のない会社員は2万3000円、自営業者は6万8000円など、加入者の職業によって上限は変わってきます。生まれてはじめて投資をする私は、月1万円からスタートすることにしました。
なお、積立額は年に1回変更可能。最初は少額から始めて、収入やライフステージに合わせて積立額を増やしていくのがおすすめです。
3-3. いざ、商品選び!
ここでいよいよ運用商品選びです。商品には、大きく分けて2つあります。
(1)元本が保証される商品
1つは、定期預金や保険などの元本確保型の商品。原則的に100%元本が保証されているので、資産が目減りすることはありません。とにかく堅実に運用したいという人は、こちらをおすすめします。ただし、近年続いている低金利の状況を考えると、資産を増やせる可能性が少ないことがネックです。
(2)元本が変動する商品(得も損もある)
もう1つは、元本変動型の商品。その主役である投資信託は、専門家がさまざまな株式や債券などに投資し運用を行う商品です。運用成績によって、資産が大きく増えるチャンスもあれば、逆に減ってしまうリスクもあります。
商品選びは、リスクとリターンを天秤にかけて、自分で比較してみることが重要です。私は、せっかくiDeCoに税制優遇があるならと、資産を増やせるチャンスがある元本変動型を選ぶことにしました。ですが、大きなリスクは背負いたくないというのも本音です。
そこで注目したのが、インデックス投信と呼ばれる投資信託です。これは、日経平均株価やダウ平均株価などの指数と連動した値動きを示し、リスクとリターンのバランスに優れた商品。中でも、信託報酬が割安な「eMAXIS Slim 先進国株式インデックス」という商品を選び、現在も運用しています。
4. まとめ:やっぱりおトク!それでもiDeCoをおすすめする理由
ここまで、私の体験談を交えながら、iDeCoについて解説してきました。iDeCo加入にあたっては、金融機関や運用商品選びでかなり悩みましたが、自分でとことん調べて、納得して選ぶことができました。以前はお金のことをあまり真剣に考えていなかったのですが、iDeCoをはじめたことで「自分の資産は自分で守っていく」という意識が芽生えたのは収穫です。
iDeCoは、多少の手数料がかかったり、60歳まで積立金を引き出せないなどのデメリットはあるものの、多くの税制優遇があることや、放置しておけばいい手軽さなどはやはり大きなメリット。ほとんどの働く大人におすすめできるといえます。また、早く始めるほど多くの資産を積み立てられるので、「老後」にリアル感のない若い人ほどオトク。
今回ご紹介した始め方を参考に、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
※本記事は、個人型確定拠出年金(iDeCo)の概要や加入者の体験・感想等の情報提供を目的としたものであり、特定の金融機関や金融商品の売買を勧誘、推奨するものではありません。
※本記事は、2019年8月時点の情報をもとに作成しています。
1987年山梨県富士吉田市生まれ。タウン紙記者、雑誌編集者として勤務後、フリーの編集者・ライターに。モットーは、きめ細かな取材・調査に基づいた記事づくり。お金に関する話題も、わかりやすくお届けします。
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※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。