ときどき耳にすることがある株主優待という言葉。「自分は投資家じゃないから関係ない」という方も多いかもしれません。
しかし株主優待は、初心者にとって株式投資がぐっと身近になるおトクな制度。このページで基本を学んでいきましょう。
目次
1. 株主優待制度の基礎知識
まずは、株主優待とはどんな制度なのかをみてみましょう。なぜ日本で株主優待が広がっているかについても紹介します。
1-1. 株主優待とは?
株主優待とは、自社の株式を一定以上保有している株主に対して、年に1~2回、配当金以外の商品・サービスなどを無償で提供する制度です。企業によってその中身はさまざまですが、少額の投資でも魅力的な優待を受けられる場合もあり、初心者が投資をはじめる入り口のひとつにもなっています。
1-2. 日本だけ? 株主優待が盛んな理由
株主優待制度を導入しているのは、すべての上場企業のうち、およそ4割弱。海外にも同様の制度を設けている会社は存在しますが、日本ではとくに盛んに行われていると言えます。
企業にとっては、自社の株を頻繁に売ったり買ったりせず、長く保有してくれる安定株主を確保することが、経営を安定させることになります。株主優待を実施することで、株主をその企業や商品の「ファン」にして、安定株主を増やせるメリットがあります。このため、多くの企業が株主優待を行っているのです。
2. 株主優待ってどうすればもらえる?
では、どうしたら株主優待を受けられるのでしょうか。優待を受けるための条件と、売買における注意点について解説していきます。
2-1. 「権利確定日」に決められた株数を保有していること
株主優待を実施している企業の多くは、年1回または2回の決算時期に合わせて、一定数以上の株式を保有している株主へあらかじめ決められた商品・サービスを提供します。
優待を受けるためには、特定の日に株主優待の対象となる株数を保有している(株主として名簿に載っている)必要があります。この特定の日を権利確定日(割当基準日)といいます。企業によって異なりますが、傾向としては、3月末日または9月末日(土日祝日を除く)であることが多くなっています。
ここで注意したいのが、権利確定日に株を購入しても優待対象にはならないということです。株の売買にはルールがあり、買ってから株主として名簿に載るまでには数日のタイムラグが発生するからです。「今から購入する銘柄の株主優待を受けたい」と思ったら、権利確定日の2営業日前の権利付き最終日までに株を買う必要があります。
反対に、「すでに持っている銘柄を手放したいが、株主優待の権利は無駄にしたくない」と考えるなら、権利付き最終日の翌日(権利落ち日)に売ればよいということになります。
2-2. 優待目的の短期売買は損?
「権利付き最終売買日に株を買って、翌日の権利落ち日に売れば、おトクに株主優待を受けられる!」と考える人もいるかもしれません。しかし、権利落ち日になると、株価は大きく値を下げる傾向にあります。購入した株を安い値段で売ることになり、損をしてしまう可能性も少なくありません。ご注意ください!
3. 多彩!優待制度あれこれ
ここで、各企業はどんな内容の株主優待を行っているのか見ていきましょう。項目ごとに例をあげながら、多彩な株主優待を紹介していきます。
3-1. 自社製品
まずは、自社の商品を提供してくれる株主優待について紹介します。各企業自慢の商品を自宅へ届けてくれるとあって、人気が高いと言えます。
例えば、粘着テープメーカーのニチバンは年1回、100株以上保有する株主(9月末日)に向け、3,000円相当の自社新商品を中心とした「製品詰め合わせ」を送付しています。セロハンテープから絆創膏まで、同社が手掛けるさまざまな商品がもらえます。
また、食品卸売の横浜冷凍(ヨコレイ)は、1,000株以上~3,000株未満保有の株主(9月末日)に「ヨコレイグループ生産 ノルウェー産サーモントラウト詰合せ」、3,000株以上保有の株主(9月末日)に「北海道産のホタテ・いくらセット」を年1回送付しています。
3-2. 商品券・チケット
自社が展開する店舗などで使える商品券やチケットを株主に提供している企業もあります。
外食チェーン大手のゼンショーは、「株主様お食事ご優待券(500円券)」を、100株以上保有する株主(3月末日・9月末日)へ年2回、保有株数に応じて配布しています。「すき家」「ココス」など、近くの店舗で気軽に使える点が支持されているようです。
また、乳酸菌飲料大手のヤクルト本社は年1回、100株以上の株主(9月末日)へ「プロ野球公式戦 株主優待証」を贈呈しています。ちなみに、3月末日の株主(100株以上)には、自社商品の詰め合わせ、3年以上継続保有している株主(100株以上)には、さらに自社化粧品が送付されます。
3-3. ポイント
ポイント付与を株主優待としている企業もあります。
例えば、宅配ポータルサイト「出前館」を運営する夢の街創造委員会は年2回(2月末日、8月末日)、「Tポイント(期間固定)」を100株以上保有する株主に付与しています。ポイントは、出前館を通した宅配サービスでのみ利用可能です。
さまざまな企業が参加している株主優待ポイントプログラムもあります。投資関連サービス会社のウィルズが運営する「プレミアム優待倶楽部」は、2019年9月現在、30社あまりが加盟しています。
加盟企業が発行する優待ポイントを、同社独自の「WILLsCoin」と交換。3,500点以上の優待商品と交換できるしくみです。各企業から得た優待ポイントを合算できるので、複数の加盟企業の株主であれば、価値の高い商品をもらえるチャンスが高まりそうです。
3-4. その他
株主優待として提供できる自社商品・サービスがない企業を中心に、金券や他社商品を独自に調達して株主優待としているケースもあります。
東洋合成工業は、工場が立地している千葉県や兵庫県淡路島の「特産品」を株主優待としています。500株以上(3月末日)を保有する株主に、お米や海苔など3,000円相当の品物を送付。企業の「地元愛」を感じる優待制度ですね。
4. 株主優待どうやって選ぶ?
これだけ多彩な株主優待制度がある中、どの企業の株式を選べばよいのでしょうか。ここでは、自分に合った銘柄の選び方を紹介していきます。
4-1. 専門サイトで比較!
株主優待制度を比較できる専門サイトを使えば、簡単に自分に合った銘柄を見つけられます。ヤフーが運営するYahoo!ファイナンスは、企業名や優待内容をキーワードで検索可能。アクセス数をもとにランキングした人気の株主優待を、最低投資金額順や配当利回り順で並べ替えできます。
ダイヤモンド社のザイ・オンラインでは、権利確定月ごとのおすすめ銘柄や、配当と株主優待を合わせた「株主優待利回りランキング」などを閲覧できます。こうしたサイトで気になる銘柄を見つけたら、その企業のホームページなどで正しい優待内容を確認するようにしましょう。
4-2. どんな基準で選べばいい?
前述のようなサイトを使えば、魅力的な株主優待を実施している企業を見つけることができますが、株価が下がってしまっては本末転倒。長いスパンで見て業績が伸び、株価の上昇が期待される銘柄を購入したいものです。
例えば、自分が好きな商品やよく使うサービスを提供していて、これから成長していきそうな企業の銘柄を選んでみるのはいかがでしょうか。自分のお金で、気に入っている会社がもっと社会に役立つ企業になってくれたら嬉しいですよね。優待や利回りだけでなく、そうした視点も忘れないようにしてください。
5. まとめ:株主優待をきっかけに株式投資を始めてみては?
日本独自に発展してきた株主優待は、それぞれの企業の思いや工夫が詰まった制度でしたね。みなさんもこれをきっかけに、株式投資にチャレンジするのはいかがでしょうか?
配当金や売買益が非課税になるNISA(少額投資非課税制度)も活用しながら、「ずっと応援したい企業」を見つけてみてくださいね。
※本記事の情報は2019年11月時点のものです。株主優待の内容は変わることがありますので、最新情報は各企業のHPで確認してください。
※本記事は、株主優待制度の概要に関する情報提供を目的としたものであり、金融商品の売買を勧誘、推奨するものではありません。
1987年山梨県富士吉田市生まれ。タウン紙記者、雑誌編集者として勤務後、フリーの編集者・ライターに。モットーは、きめ細かな取材・調査に基づいた記事づくり。お金に関する話題も、わかりやすくお届けします。
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