学資保険の税金で失敗しないために必要な、たった3つのこと

  • 公開日:2016年12月14日
    最終更新日:2022年04月15日
  • 生命保険

2022-04-15

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学資保険に入って、将来、学資金や満期保険金を受け取るときに税金はかかるのでしょうか?
こどもの教育資金を貯めるための保険なので、税金がかかるのかはとても気になるところです。

学資保険の学資金や満期保険金などは、原則、課税の対象となりますが、結論としては、一般的な契約内容であれば税金がかからないことも多く、かかっても少額ですむため、それほど気にしなくてもよいでしょう。

しかし、お金の受け取り方(プラン)や契約内容によっては、税金が多くかかってくる場合もあります。将来、思わぬ税金の支払いが必要になってがっかりすることがないように、税金がかかってくる場合がどんな場合なのかをしっかり把握しておく必要があります。

この記事では、学資保険にかかる税金の基本と税金が多くならないための3つの注意点をわかりやすくまとめています。お読みいただくことで、学資保険の税金についての知識が身につき、税金の失敗を防いで無駄なく学資保険に入れるようになれます。

ただし、この記事で紹介する内容は、あくまでも現在(2016年12月時点)の商品・税制をもとにした一般的な目安です。今後内容が変わってくることがあります。また、税金のかかり方については、個別の事例によって変わってくる場合があり、細かい税金の考え方については税務署や税理士によって解釈がかわってくる可能性もあります。
正式な判断は、税理士さんかお住まいのエリアの管轄の税務署にご確認ください。

1. 一般的な契約であれば、税金がかからないことも多い

学資保険の満期保険金や学資金・学資年金などは、税金がかかる対象なのですが、普通の会社員などが一般的な契約内容で加入している場合には、結果的にかからないですむことが多いです。

なんだかまどろっこしい表現ですが、ここをクリアにするために、まずは学資保険への課税の基本からおさえておきましょう。

1-1. 学資保険の満期保険金等にかかる税金の種類

学資保険の満期保険金、お祝金・学資金や学資年金などのように、決められた時期に被保険者が生存している場合に受け取れるお金は、受取人が誰なのかによって税金のかかり方が変わってきます。保険料を払った人と受け取る人が同一人物なら所得税、別人なら贈与税の対象となります。

■学資保険の満期保険金、お祝金・学資金や学資年金にかかる税金

契約形態かかる税金の種類
保険料負担者=受取人所得税
 【満期保険金・お祝金・学資金】一時所得
 【学資年金】雑所得
保険料負担者≠受取人贈与税

1-2. 税金がかからないことが多い理由

最近は学資年金つきの商品も増えてきましたが、これまで販売されてきた学資保険は、保険料を毎月支払っていき、こどもの進学にあわせて学資金や満期保険金を受け取るタイプ(学資年金なし)の商品が多く、一般的には親が契約して保険料を支払い、学資金等も契約者の親が受け取るという契約内容になっています。

つまり、前節の税金のかかり方でいうと、一時所得として所得税がかかるケースになります。詳しくは次章で説明しますが、この一時所得には50万円の特別控除があり、一時所得が年間50万円までであれば、結果的に税金はかからないことになります。

学資保険は、将来受け取る金額が200~300万円くらいとなる契約が一般的です。仮に、満期保険金として300万円を一括で受け取ったとしても、返戻率(支払った保険料に対する受け取るお金の割合)が110%だとすると、このうち支払った保険料は270万円くらいになるので、もうかった金額(一時所得)は30万円くらいとなります。これなら、他の一時所得がなければ50万円の特別控除以内なので税金はかかりません。

一般的な契約内容であれば、学資保険には税金がかからないことも多いというのはこれが理由です。

2. 学資保険の受け取りに税金がかかる3つのケース

学資保険で、満期保険金、お祝金・学資金や学資年金等を受け取るときに税金がかかるのは、以下の3つのケースとなります。

2-1. 満期保険金やお祝金・学資金等で、年間に50万円超のもうけがあったとき

学資保険の保険期間終了時に一括で受け取る満期保険金や保険期間の途中で分割して受け取るお祝金・学資金といわれるお金は、一時所得(※)として所得税がかかります。
※契約者(保険料負担者)= 受取人のとき

この一時所得は、以下のように計算します。

一時所得の金額
 =[総収入金額]-[収入を得るために支出した金額]-50万円(特別控除)

これを学資保険にあてはめると、以下のようになります。

一時所得の金額
 =[受け取った金額]-[支払った保険料]-50万円(特別控除)

学資保険は、一般的に保険料を支払っていき、将来、支払った保険料以上のお金が戻ってくることを期待して加入するものです。また、所得税はお金をもうけたときにかかる税金です。

つまり、学資保険で支払った保険料よりも多くのお金が戻ってきたときには、そのもうかった部分について税金がかかることになります。ここで、もう一つポイントなのは、一時所得には特別控除があり、もうかった金額が50万円までなら所得は0円ということになり税金がかからないということです。

現在、売られている学資保険の返戻率は、だいたい110%程度です。たとえば、返戻率が110%だとすると、300万円の満期保険期を受け取れる学資保険の場合、支払った保険料は約273万円です。その差額(利益)は約27万円なので、税金はかかりません

また、利益が50万円を超えたときでも、会社員などで元々確定申告が不要な人の場合は、給与所得以外の所得が20万円以内であれば、その分の確定申告も不要となるため、結果的に税金はかかりません。

したがって、満期保険金やお祝金・学資金等に税金がかかるケースというのは、その年に学資保険から受け取ったお金の利益が50万円を超えたときや、学資保険の受け取り以外の一時所得があって、それらを合わせた利益が50万円を超えたときです(確定申告不要のケースを除く)。

2-2. 学資年金を受け取ったとき

最近の学資保険には、大学在学中の教育資金を想定して18歳以降、毎年決まったお金を受け取れる学資年金が出るものがあります。

この学資年金は、年金と名づけられているように、個人年金保険の年金などと同様に雑所得(※)という所得として課税されます。
※契約者(保険料負担者)= 受取人のとき

雑所得は、以下のように計算します。

雑所得の金額
 =[総収入金額]-[収入を得るために支出した金額]

これを学資保険にあてはめると、以下のようになります。

雑所得の金額
 =[受け取った金額]-[支払った保険料]

たとえば、18歳から4年間、毎年50万円の学資年金を受け取るとすると、50万円からその額に該当する支払保険料を差し引いた額が雑所得となります。雑所得の場合は、一時所得のような特別控除はありませんので、利益が少額であってもそのまま課税されます。

この例の50万円に対する保険料がいくらになるかは、細かい保険の契約内容によりますが、返戻率が110%の学資保険だとすると大雑把に45万円前後だと考えられます。つまり5万円くらいの雑所得があったということになり、その他の所得とあわせて課税されます。

したがって、学資年金の場合は基本的に税金がかかります

ただし、契約者が一般の会社員等で元々確定申告が不要な人の場合は、給与所得以外の所得が20万円以内であれば、その分の確定申告も不要となるため、結果的に税金はかかりません。

2-3. 保険料を支払った人以外の人が年間110万円超のお金を受け取ったとき

学資保険の保険料を支払った人と満期保険金やお祝金・学資金、学資年金を受け取る人が別人の場合は、受け取った人に贈与税がかかります。例えば、父親が学資保険の保険料を支払い、受取人がこどもや母親となっていたら、学資保険を通して父親からこどもや母親にお金を贈与したことになるのです。

通常であれば、親がこどもの教育資金や生活費を出しても贈与にはならないのですが、学資保険の受け取りに関しては贈与になってしまうので注意が必要です。

贈与税は、1年間(1/1~12/31)に受けた贈与の総額に対して課税されますが、110万円の基礎控除があるため、贈与額が110万円を超えた場合に(超えた部分に)税金がかかります。

したがって、贈与税は、学資金等を受け取った人が他の贈与も含めて年間に110万円超の贈与を受けた場合にかかります

3.学資保険で税金が多くならないように意識すべき3つのこと

前章でみてきたように、学資保険は契約内容(受取人の決め方や受け取るお金の種類)やその他所得との関係によって、さまざまな税金がかかってきます。そこで、その税金がかかるしくみから逆算して、できるだけ学資保険に税金がかからないようにするための3つポイントを紹介します。

なお、繰り返しになりますが、税金のかかり方は個別の事例によって変わってくる場合がありますので、この記事をご覧の上、正式な判断は税理士さんかお住まいのエリアの管轄の税務署にご確認ください

3-1. 満期保険金、お祝金・学資金等は年間の受取額を500万円程度におさえる

一時所得には50万円の特別控除があります。もし学資保険以外に一時所得となる収入がなければ、学資保険の利益を50万円以内にすれば税金はかかりません。

受け取る額が大きくなる例として、満期時に一括で満期保険金を受け取る場合で考えると、返戻率を高めの110%とすれば、50万円の利益がでるのは受取額が550万円のときとなります。

したがって、余裕をみて年間に受け取る額を500万円程度におさえておけば、他の一時所得がない限り、税金がかかることはないでしょう

3-2. 学資年金はできるだけ避けるか、会社員なら200万円以内におさえる

学資年金は、雑所得という所得になります。雑所得には一時所得のような特別控除がなく、税金がかかりやすいので注意が必要です。

大学在学中などに毎年お金がもらえると、授業料の支払いなどにあてられるので便利ではありますが、それで税金がかかったり確定申告が必要になると面倒です。税金がかからないことを重視するなら、学資年金を受け取るプランは避けたほうが無難です。

ただし、一般的な会社員や公務員などで、収入は勤め先の給料だけという方であれば、給与所得以外の所得が年間20万円以内であれば、確定申告が不要となります。それならば学資年金による雑所得が20万円以内になるようなプランにすれば、結果的には税金を払わずにすみます

目安として大まかな計算をすると、返戻率が110%程度の学資保険であれば、学資年金の額が200万円以内になるようにすれば、雑所得は20万円以内ですむことになります。

ただし、個人事業主の人など、もともと確定申告が必要な人は雑所得が20万円以内でも申告が必要となります。

3-3. 贈与税は年間の贈与額を110万円以内におさえる

あまり一般的ではありませんが、学資保険の保険料支払者と学資金や学資年金等の受取人が別人の場合は贈与税がかかります。ただし、年間の贈与額が110万円以内なら非課税となります。

贈与税は税率が高いので、通常は避けたほうがよいのですが、どうしてもそのような契約形態にしなければならない場合は、年間の受取額が110万円を超えるようなプランの学資保険には入らないようにすることです。受け取る学資金や学資年金が年間110万円以内であれば、他の贈与がない場合は贈与税はかからないことになります。

※この章の税金をおさえるための目安は、2016年12月現在の商品・税制をもとに計算しています。今後、学資保険の商品改定等により返戻率などが大きく変更になったり、税制がかわると目安や考え方も変わってきます。

4. 学資保険の育英年金または養育年金にかかる税金は要注意!

学資保険には、契約者である親が死亡した場合に、その後保険が満期になるまでの間、毎年こどもが育英年金または養育年金を受け取れるものがあります。

この場合の育英年金や養育年金は、まず契約者が死亡したときに、それ以降年金を受け取れる権利に対して相続税がかかります(相続税の非課税枠はあり)。そして、翌年以降の年金は雑所得として所得税の対象となります。

さらに受け取る年金額が大きくなると、こどもが親の扶養から外れて親の所得税が増えたり、親の健康保険の被扶養者から外れることになることもあります。高額な育英年金や養育年金を受け取るような契約には注意が必要です。

そもそも、親の死亡についての保障は学資保険ではなく生命保険で備えるのが基本なので、学資保険は教育資金の貯蓄と割り切って、税金や健康保険の扶養にかかわってくる可能性がある育英年金・養育年金はつけない方が無難だといえます。

5. 学資保険を途中で解約したときの税金は?

最後におまけとなりますが、学資保険を解約したときに受け取れる解約返戻金は課税の対象となります。このときの税金は、学資金などの受け取りと同様に一時所得としての課税となります。

一時所得は、受け取った解約返戻金が支払った保険料の額よりも大きいときに、その利益に対してかかります。

学資保険を解約した場合は、加入後一定期間は、支払った保険料よりも少ない金額の解約返戻金しか戻ってきませんので税金がかかることはありません。しかし何年か経つと、支払った保険料よりも多くの解約返戻金が戻ってくるので課税対象となります。ただし、この場合でも一般的なプランであれば、一時所得の特別控除50万円以内の利益となることが多いため、結果的に税金はかからずにすみそうです。

一方、解約返戻金を受け取った人が保険料を支払った人と別人の場合は、その受け取った額が贈与税の対象となります。解約返戻金が110万円を超えると確実に税金がかかりますのでご注意ください。

解約返戻金にかかる税金については、「解約返戻金にかかる税金を簡単に判別する方法」をご覧ください。

6. まとめ:一般的な入り方なら税額はあまり気にしなくてもよい

学資保険に関する税金は、契約内容や受け取るお金の種類により違ってくるので、正直面倒です。ただし、一般的な所得の人が、保険会社のモデルプランにあるような額の保険に、通常の契約内容(保険料負担者=受取人)で加入する分には、ほぼ税金はかからないか、かかっても少額になります。税金のことは、あまり気にしなくても大丈夫でしょう。

ただし、学資年金の受け取りに関しては、税金がかかってきやすいですし、個人事業主の方であれば、ほぼかかってきますので、ご注意ください。

また、こども保険とよばれる保険にある育英年金や養育年金は、さらに課税や健康保険への影響が複雑となりますので、十分にご注意ください。

※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。