生命保険には契約者貸付という制度があり、保険会社からお金を借りることができます。しかも、クレジットカードのキャッシングや銀行のカードローン、消費者金融などよりも低い利率で借りられるというメリットがあります。もし、これらのローンを利用している人で生命保険に入っている人がいたら、今からでも契約者貸付を活用したほうがよいかもしれません。
そんなメリットのある契約者貸付ですが、一般には認知されておらず、たとえ存在を知って利用してみたいと思っても、利息や返済方法、申し込み方法などについてのわかりやすくまとまった情報が見当たらないというのが現状です。
ここでは、契約者貸付の内容とメリット、利用するときの注意点等をわかりやすく説明していきます。ぜひ契約者貸付を賢くご活用ください。
目次
1. 契約者貸付はこんな制度
契約者貸付は、生命保険の契約者が保険会社からお金を借りることができる制度です。一般的にキャッシングやカードローンなどより利率が低く、原則、契約者の都合にあわせて返済できるため、使い勝手のよい制度です。
1-1. 解約返戻金の一定の範囲内でお金が借りられる
契約者貸付で借りられる金額は、その時点で保険を解約した場合の解約返戻金を何割か減額して計算されます。その割合は保険会社ごとに規定があり公表はされていませんが、2~3割くらい減額した金額が目安になると思われます。
また計算の元になる解約返戻金額も、契約している保険や契約内容、加入してからの年月によって額が違っています。したがって、契約者貸付で借りられる金額は、そのときそのときで契約している保険会社に問い合わせなければなりません。
保険会社によっては、インターネットで確認できるようになっているところもあります。
1-2. 利息はかかるが、他のローンより利率が低い
契約者貸付でお金を借りると生命保険会社が定めた利息がかかります。その利率は、契約している保険の予定利率とも関係しているため、同じ保険会社でも保険の契約時期によって違っています。
一般的には、契約者貸付の利率は約3~5%くらいになっています。古い契約の場合、保険会社によっては約6~8%くらいというところもあります。
この利率は、クレジットカードや消費者金融のキャッシング、銀行のカードローン等と比べると低い場合が多く有利だといえます。
(参考)各種ローンの利率
借入先 | 利率(目安) |
---|---|
生命保険の契約者貸付 | 3~5%程度(古い契約は6~8%) |
銀行のカードローン | 3.5~14.6% |
クレジットカードのキャッシング | 15~18% |
消費者金融のキャッシング | 4.5~18% |
※利率は各業界数社の利率(Webサイト掲載のもの)をもとに水準値を表記(LHL調べ)
なお、契約者貸付の利息は、通常、1年ごとに計算され元本に組み入れられます(複利計算)。したがって、長期で借りていると元本が毎年増えていき、次の年には増えた元本に利息がつくことになります。
1-3. 返済期日は特に決まっていない
契約者貸付でお金を借りた場合は、一般的なローンのように毎月いくらずつ返済するなどの取り決めはありません。お金を返済できるときに、一括でも分割でも返済することが可能です。ただし、保険会社により最低いくら以上、いくら単位などと返済する金額についての規定はあります。
このように返済に追われずにすむことも他のローンよりもよいところです。
1-4. 契約者貸付を使っても保障は継続
契約者貸付でお金を借りても、元の保険の保障内容は変わりません。保険金が支払われなくなるとか削減されるということはありませんので、ご安心ください。
ただし、保険金が支払われるときに、借りている金額と利息は差し引かれて支払われることになります。
1-5. 利用できる保険は保険会社で決まっている
契約者貸付は全ての保険で利用できるわけではなく、利用できる保険が保険会社により決められています。一般的には、終身保険・養老保険などの生命保険や学資保険、個人年金保険などで利用できます。実際に利用できるかどうかは、契約している保険会社に問い合わせが必要です。
2. 実は保険料の支払いが大変なときにも使える
たとえば、こどもの進学で教育資金が増えてしまったとか、休職で一時的に収入が減ってしまったなどで家計が厳しくなり、保険料の支払いが大変になって、節約のためにも本当は必要だけど生命保険を解約することにしたという方がたまにいらっしゃいます。
しかしそのような場合に、契約者貸付で借りたお金で保険料を支払えば、保険は解約せずに続けることができます。蛇が尻尾を食べているような部分はありますが、一時的に家計が大変なときでも、大切な保険を解約せずにすますためのテクニックの一つです。
ただし、実はこのテクニックですが、契約している保険に自動振替貸付制度がついていたら、保険料の支払が滞ったときに、解約返戻金の範囲内で自動的に保険料が立て替えられるようになっています。自分で意識して契約者貸付をする必要はありませんが、見方を変えれば自分が知らないうちにお金を借りていて保険が自動的に続いていくということになります。自動振替貸付についてもあわせて理解しておくことが大切です。
3 契約者貸付を利用するときの3つの注意点
契約者貸付は、比較的有利な条件でお金を借りられる制度ですが、借り入れは借り入れです。注意しなければならないことがあります。
3-1. 利息で借入金がふくらむことがある
契約者貸付では、クレジットカードのキャッシング、消費者金融などと比べると低い利率でお金を借りられます。しかも、返済期日は特に定められていません。だからといって、長期間借りたままにしておくと、毎年の利息が元金に組み入れられ、何年か経つと借入額が大きくなっていくことになります。
借りた場合は、計画的に返済していくことが大切です。
3-2. 保険金等の支払いがある場合は借りた金額が差し引かれる
契約者貸付でお金を借りた状態で保険金の支払いがある場合は、保険金から借りた金額とその利息が差し引かれることになります。そのときに必要だと思ってあてにしていた金額に足りないということになる場合があるので、注意が必要です。
また、契約者貸付でお金を借りた状態で保険を解約する場合は、解約返戻金から借りた金額とその利息が差し引かれます。
3-3. 返済しないでいると保険が失効あるいは解除になる
契約者貸付でお金を借りたまま返さないでいると、利息がついていき、解約返戻金に対する貸し出し限度額を超えてしまう場合があります。そのようなときには、保険会社から返済の案内が届きます。その場合は、保険会社から提示された期日までに指定の金額を返済しなければなりません。
保険会社からのお知らせがきても返済しない場合は、保険が失効したり解除されたりしますのでご注意ください。
4. 契約者貸付の申し込み方法
契約者貸付を申し込む場合は、生命保険会社に連絡して必要書類を送ってもらい、書類を返送するという流れになります。
- 準備
まずは、契約者貸付を利用する保険の証券を用意します。複数の保険を利用する場合は全ての保険証券をそろえましょう。
申し込みに際して、借りられる金額や利率、その保険契約で契約者貸付が利用可能かどうかなどを知りたい場合は、準備段階で保険会社に電話確認しておきましょう。 - 生命保険会社へ連絡
生命保険会社の電話窓口(コールセンターなど)に連絡し、契約者貸付を利用したいことを伝えます。連絡は契約者本人が行ってください。 - 必要書類の受け取り(生命保険会社→契約者)
生命保険会社から契約者貸付の申し込みに必要な書類が送られてきます。 - 必要書類の返送(契約者→生命保険会社)
必要書類に記入して、生命保険会社に返送します。 - 入金
届いた書類の内容等に問題がなければ、生命保険会社からお金(貸付金)が振り込まれます。振込み終了後、保険会社から手続きが完了したお知らせが届きます。
貸付金は、契約者貸付の申し込み書類が保険会社に届いてから数日~1週間程度で振り込まれます。
以上のような流れが、契約者貸付を申し込む際の一般的な流れですが、生命保険会社によってはインターネットや電話の自動応答、ATMなどで手続きができるところもあります。
いずれにせよ、はじめての申し込みのときは、確認事項も多いと思いますので上記電話申し込みの流れになってくるのではないでしょうか?
5. まとめ:比較的よい条件で借りられる便利な制度
契約者貸付は、生命保険契約を利用して生命保険会社からお金を借りることができる制度です。比較的低い利率でお金を借りることができて、返済期日についても特段の決まりがない便利な制度です。
しかし、以下のような注意点もあります。
・利息がふくらむことがある(利息の複利計算)
・保険金や解約返戻金等の支払いがある場合は借りた金額と利息が差し引かれる
・返済しないでいると保険が失効あるいは解除になる場合がある
このように、契約者貸付には注意事項もありますが、計画的に返済していけばとても有益な制度です。もしお金の借り入れが必要になったときには、すぐにキャッシングやカードローンと考えるのではなく、生命保険の契約者貸付があることを思い出して上手に活用しましょう。
自然災害などで災害救助法が適用された場合、生命保険会社は、適用地域の被災者の方への契約者貸付金の支払いを迅速化する特別措置をとる場合があります。
「平成28年熊本地震」での特別措置についてはこちらをご参照ください。
→『「平成28年熊本地震」への生命保険会社の対応と知っておきたい免責条項』
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