このたび九州地方で発生した地震により被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。
ニュース記事にもなっていますのでご存じの方もいらっしゃると思いますが、生命保険会社は、4月15日付で、このたびの「平成28年熊本地震」に関して、免責条項の不適用と災害救助法適用地域の特別措置を発表しました。
実は、生命保険には地震などの災害についての免責条項があり、状況によっては保険金や給付金が削減されたり支払われなかったりする可能性もあるのです。
ここでは、生命保険協会が発表した、今回の地震で被災された方への生命保険会社の取り組みをご紹介するとともに、生命保険における地震に対する免責条項がどうなっているのかをお伝えしていきたいと思います。
なお、ここで取り上げているのは生命保険会社の対応についてです。損害保険会社も特別措置をとっていますので、その内容については『【続報】「平成28年熊本地震」への損害保険会社の対応』をご覧ください。
目次
1. 今回の地震での生命保険会社の対応
今回の地震に関して、地震発生直後の4月15日に生命保険協会および各生命保険会社から、免責条項の不適用と災害救助法適用地域の特別措置について発表がありました。
1-1. 免責条項の不適用
一般的に生命保険では、主に災害関係の保険金・給付金を中心に、地震が原因で支払事由が発生した場合には、保険金等の支払いを削減したり支払わないようにできるという免責条項が約款に記載されています。
しかし、今回の地震に関しては、この免責条項を適用せず保険金・給付金を全額支払うということを全生命保険会社が決定しました。
これにより、今回の地震で被災された方は生命保険等の保険金を満額受け取ることができます。
ちなみに、このような免責条項の不適用は東日本大震災のときにも実施されました。
1-2. 災害救助法適用地域への特別措置
今回の地震で災害救助法が適用された地域の被災者の保険契約について、生命保険会社では以下のような特別措置を実施しています。
- 保険料払込猶予の延長
保険契約者からの申し出によって、保険料の払込猶予期間を最長で6ヵ月延長します。 - 保険金・給付金、契約者貸付金等の迅速な支払
保険金の請求や契約者貸付を申し込む場合の必要書類を一部省略して、簡易かつ迅速にお金の支払をします。
(契約者貸付については「3分でわかる!契約者貸付のメリットと3つの注意点」をご覧ください)
ちなみに、今回の災害救助法が適用された地域は熊本県内の全45市町村です。
また、上記特別措置とは別に、災害により保険証券などの書類がなくなってしまった方が生命保険の契約内容や契約の有無を確認できるように、生命保険協会に「災害地域生保契約照会センター」が設置されています。
- 生命保険協会「災害地域生保契約照会センター」
フリーダイヤル 0120-001731
【受付時間】月~金曜日(祝日を除きます)9:00~17:00
これらの特別措置により、早く保険金・給付金を支払ってもらったり、被災により保険料が支払えない方が支払いを猶予してもらって保険を継続させたりすることができます。また、お金が必要な場合には契約者貸付も利用しやすくなります。現在は避難生活を送っていて、保険どころではないという状況かもしれませんが、もしご家族やご親戚、ご友人などで、被災されて保険について困っている方がいらっしゃったら、こういった情報もお役立ていただければ幸いです。
2. 約款にみる地震・噴火・津波の場合の免責条項
地震などの自然災害に関する免責条項について、生命保険の約款にどのように記載されているのかをいくつかの保険会社で確認してみました。免責条項はおおむね以下のような傾向があります。
2-1. 災害系の保険金・給付金
生命保険のなかには、災害割増特約といって不慮の事故で死亡した場合に災害死亡保険金が支払われるなど、災害○○や障害○○といった保障があります。
一般的に、このような不慮の事故が原因で保険金や給付金が支払われる保障の場合は、約款に地震や噴火、津波の場合の免責条項があります。
- <災害割増特約の免責条項の例>
被保険者が戦争その他の変乱、地震、噴火または津波により死亡しまたは高度障害状態になった場合に、これらの理由により死亡しまたは高度障害状態になった被保険者の数の増加がこの特約の計算の基礎に重大な影響を及ぼすと認められるときは、その程度に応じ、保険金の金額を削減して支払いまたはその金額の全額を支払いません。
約款の文章なので難しいですが、要するに地震などで多くの人が死亡したりして、保険金の支払い額が非常に大きくなり、この保険(特約)を維持することが難し状況になるようならば、保険金を削減したり支払わないようにしたりするということです。
だから、免責といっても、地震なら絶対に支払わないということではなく、保険契約全体への影響等を考慮して保険会社が判断するということです。
2-2. 入院給付金、手術給付金
医療保険の入院給付金や手術給付金にも、地震や噴火、津波の場合の免責条項があります。
- <入院給付金・手術給付金の免責条項の例>
前条(給付金)の規定にかかわらず、被保険者がつぎのいずれかにより入院しまたは手術もしくは放射線治療を受けた場合で、その原因により入院しまたは手術もしくは放射線治療を受けた被保険者の数の増加がこの保険の計算の基礎に影響を及ぼすときは、会社は、給付金を削減して支払うかまたは給付金を支払わないことがあります。(1)地震、噴火または津波によるとき
(2)戦争その他の変乱によるとき
災害系の保障と同様に、保険会社にとって給付金の支払い額が莫大な額になるようなときには、給付金を削減したり支払わないようにしたりすることがあります。
2-3. 死亡保険金
死亡保険金については、地震、噴火、津波を免責にしている記載はあまりみられませんでした。
なお、これらの約款の取り決め内容については、生命保険会社や保険・特約等によって違っていますので、詳しくはご加入の保険の約款をみるか、保険会社にお問い合わせください。
3. まとめ:何かあったら、生命保険会社に確認を
何かあったとき、困ったときのために加入している生命保険ですが、今回のような大きな災害があった場合、生命保険会社は保険料の支払いの猶予、保険金や契約者貸付の貸付金の支払いの簡略化・迅速化などの措置をとってくれるということがわかりました。
また、災害や傷害関係の保障や医療保障にある地震による免責条項についても、今回は適用されませんでした。
一般的に、生命保険の保障のなかには地震や噴火、津波に対する免責条項があるものがありますが、それは必ず適用されるものではなく、災害による保険契約全体への影響を考慮して適用するかどうかが判断されます。したがって、今回のような免責条項の不適用は、小さいな災害の場合でも個別に対応してもらえるもと考えられます。
最後になりますが、もし今後、私たちが自然災害で被害を受けて、生命保険の保険料の支払いや保険金の請求についてわからないことや困ったことがあった場合には、生命保険会社に事情を説明し相談すれば、配慮してもらえる可能性があることを覚えておきましょう。
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※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。