車が事故などで傷ついてしまった際、その損害を補償してくれる車両保険。万が一の事態を考えて、加入を検討する方は多いでしょう。そんなときにとても重要なのが今回のテーマである免責金額の設定です。
免責金額の仕組みは、一見単純に見えますが、実は奥が深く、その分注意すべき点も多いです。そして、それらをしっかり理解することで保険料を大きく節約することもできます。今回は、意外と盲点な車両保険の免責金額について、じっくり解説していきます。ぜひ参考にしていただき、車両保険の節約に生かしてください。
目次
1.そもそも免責金額ってなに?
自分の車の修理費等を補償する車両保険。この車両保険に加入する際、重要となるのが免責金額の設定です。ここでは、車両保険の免責金額の概要について解説していきます。とくに難しい内容ではないので、ここできちんと理解しておきましょう。
1-1.免責金額とは?
免責金額とは、わかりやすく言うと、「車両保険を利用した際、契約者側が自分で負担しなければいけない金額(自己負担額)」のことです。
例えば、車両保険の免責金額を5万円と設定していた場合、事故で10万円の修理費用がかかるケースでは、5万円は契約者が自己負担し、残りの5万円を保険会社が負担する形となります。また修理費用が3万円のケースでは、損害額が免責金額を下回っているので、保険金は支払われず全額自己負担となります。
以上のように免責金額が設定されている場合、たとえ車両保険に加入していたとしても、自己負担の金額が発生するということになります。せっかく保険に入っているのに自己負担?と疑問に思うかもしれませんが、車両保険の免責を理解しておくことはとても重要です。
1-2.免責を理解すると保険料を安くできる
なぜ免責の仕組みについて理解しておくことが重要なのでしょうか?
それは、免責金額の設定が保険料に大きな影響を与えるからです。免責金額を設定すると保険会社が支払う保険金も減るため、そのぶん保険料が安くなります。当然、免責金額を高めに設定すれば、保険料はさらに安くなっていきます。
無駄な保険料を支払わず効率よく車両保険に加入するためには、免責金額の仕組みについて理解したうえで、賢い金額設定をすることが大きな鍵となるのです。
2.車両保険の免責金額には2つの設定方法がある
免責金額の設定には、増額方式と定額方式の2つの方法があります。また、免責金額は「a-b」の形で表され、前者(a)が1回目の事故の自己負担額、後者(b)が2回目の事故の自己負担額となります。
2-1.増額方式
増額方式では、1回目の事故よりも2回目の事故における免責金額が高くなります。免責金額は下表のように表記され、例えば「5-10万円」の場合は、「1回目の事故の免責金額が5万円、2回目以降の事故の免責金額は10万円」という意味になります。
■増額方式の免責金額の表記例
免責金額(自己負担額)の表記 | 表記の意味 |
---|---|
5-10万円 | 1回目の事故の免責金額5万円/2回目以降の事故の免責金額10万円 |
0-10万円 | 1回目の事故の免責金額0円(なし)/2回目以降の事故の免責金額10万円 |
2-2.定額方式
定額方式では、事故の回数に関わらず一定金額が免責金額となります。免責金額は下表のように表記されます。また単純に「5万円」などと表記されることもあります。
■定額方式の免責金額の表記例
免責金額(自己負担額)の表記 | 表記の意味 |
---|---|
10-10万円 | 1回目の事故も2回目以降の事故も免責金額10万円 |
5-5万円 | 1回目の事故も2回目以降の事故も免責金額5万円 |
2-3.免責ゼロ
また、免責なし(0―0円)という契約をすることもできます。当然この場合の保険料は割高になります。
3.免責額は大きい方がいい?小さい方がいい?
ここからが本題です。実際に車両保険に加入した場合には、どのように免責額を設定すると良いのでしょうか?はじめに答えを言いますと、「免責額は大きい方がいい」です。以下にその理由を説明していきます。
3-1.保険料が安くなる
先程も説明した通り、免責金額を高く設定すれば保険料が安くなります。「10-10万円」のように免責金額を大きくすることで、場合によっては1万円以上安くなることも。
免責金額を高く設定すると、事故を起こしてしまった際の自己負担分が増えてしまうことを心配する人も多いと思います。しかし事故が毎年起きるとは限りません。一方、保険料は毎年確実に払わなくてはいけないのです。そのため、複数年の積み重ねで見ると保険料を安くする効果が大きくなります。また、万一への備えを手厚くしたがために、保険料負担が増え、普段の生活を圧迫するようでは本末転倒です。
一概に言うことは出来ませんが、いざという時に10万円程度の自己負担分は支払えるという人には、「10-10万円」など負担できる範囲でできるだけ大きい金額にすることをオススメします。
3-2.等級ダウンを防げる(保険料が上がるのを防げる)
自動車保険には、契約者のリスクの度合いを測る基準として「等級」があります。そして、自動車保険の保険料は、契約者の「等級」に応じて割増・割引がなされています。
ここで問題となるのが、事故によって保険金を請求すると、基本的に等級が3等級ダウン+事故有り係数となり、その結果として翌年以降の保険料が跳ね上がってしまう、ということです。災害やいたずら、盗難等、1等級ダウンですむ事故もありますが、保険料があがることには変わりありません。
等級ダウンを防ぎ、保険料を節約するためにも、あらかじめ免責金額を高めに設定しておき比較的少額な修理代は自分で負担することが賢明です。
等級のしくみについては、「自動車保険の等級の基本と保険料を安くするための上手な活用法」をご覧ください。
3-3.そもそも自己負担が不要な場合がある
なかには「免責金額を設定したせいで、自分に非がない事故に対して自己負担が生じないか心配」という方もいらっしゃるかもしれません。しかし安心して下さい。事故の内容によっては、免責金額を設定しても自己負担がかからない場合があります。
3-3-1.全損の場合は不要
全損とは、わかりやすく言い換えると、「車が完全に壊れてしまったorなくなってしまった」状態のことです。全損の場合は、免責金額を設定していても、自己負担はなく協定された保険価額の保険金が支払われます。
3-3-2.相手がいる事故の場合は不要になりやすい
相手がいる事故で、相手から損害賠償金がある場合は、その回収金は自己負担に先に充当されるため、免責金額を負担しなくて済む場合があります。
以下具体例をあげて、説明します。
Aさん(車両保険に加入)とBさんの車同士の事故で、過失割合が80:20の場合を考えます。
Aさんの損害額は100万円で免責金額は10-10万円とします。
この時Aさんには、損害額100万円-免責金額10万円=90万円の車両保険金と
同時にBさん側から、損害額100万円×過失割合20%=20万円(*)の損害賠償金が支払われる計算になります。
(*) Aさんの損害のうち、Bさんの過失分はBさんが負担
ところが、車両保険金90万円+損害賠償金20万円=110万円だと、Aさんの損害額100万円を超えるため、Aさんが受け取る金額は調整されることにます。
具体的には、Bさんから回収した20万円は、まず免責金額(10万円)に充当され、それを超過した10万(損害賠償金20万円-免責金額10万円)は保険金から差し引かれます。したがって、保険会社からは90万円ではなく80万円が支払われます。
結果として保険金80万円と損害賠償金20万を受け取ることができるのでAさんの自己負担額は0円となるのです。
今回の例はAさんにかなりの非(80%)があったケースです。そのうえAさんは免責金額を10-10万円に設定しています。しかし結果としてAさんの自己負担額は0円となりました。つまり、相手がいる事故の場合では、免責金額を高く設定していようと、自己負担せずすむことも多いのです。
4.まとめ:車両保険の免責金額はできるだけ大きくするのが〇
今回は車両保険の免責金額について解説してきました。繰り返しになりますが、基本的には保険料を抑えるため免責金額は高めに設定することをおすすめします。なぜなら保険金の受け取りや自己負担は事故が起こったときの話ですが、保険料は毎年ずっと払っていく費用だからです。
この記事によって車両保険の契約において免責金額の設定がいかに重要であるかを知っていただき、保険の費用負担を抑えていただけましたら幸いです。
※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。