日本は世界屈指の長寿国となり、人生100年時代とも言われるようになりました。
60代のリスクとそれをカバーする保険選びは、病気やケガの医療費の対策だけではなく、「長生きのリスク」に目を向ける必要があります。またそのためには、早めの準備も大切です。そんな、60代のリスクと生命保険選びのポイントを見てみましょう。
目次
1. データで見る60代に多いリスクとは
60代はどんなリスクが多いのでしょうか。
1-1. 60代の入院理由
厚生労働省のデータから、60代の入院理由についてのランキングと数値を見てみましょう。
■60代・男性の入院理由 上位5疾患
順位 | 傷病の種類 | 人数(千人) |
---|---|---|
1 | 精神及び行動の障害 | 35.1 |
2 | 新生物<腫瘍> | 20.5 |
3 | 循環器系の疾患 | 19.6 |
4 | 損傷,中毒及びその他の外因の影響 | 8.1 |
5 | 神経系の疾患 | 7.9 |
■60代・女性の入院理由 上位5疾患
順位 | 傷病の種類 | 人数(千人) |
---|---|---|
1 | 精神及び行動の障害 | 29.7 |
2 | 新生物<腫瘍> | 12.2 |
3 | 循環器系の疾患 | 9.4 |
4 | 損傷,中毒及びその他の外因の影響 | 7.3 |
5 | 筋骨格系及び結合組織の疾患 | 6.8 |
※傷病の種類は全部で20種ありますが、そのうちの上位5位までを、多い順に一覧にしています
(出典)平成29年患者調査(厚生労働省)
60代は、男性女性とも「精神及び行動の障害」が1位です。これは全年代で上位に入ってますが、年齢が上がるほど人数も増えていく傾向にあります。また60代は、新生物(がんなど)のリスクが一気に高まり男女ともに2位となっています。循環器系の疾患(心疾患や脳血管疾患など)も男女ともに3位です。
60代は、これまでの生活習慣に起因する疾病が大きく影響する、ということも言えるでしょう。できる限り、生活習慣の改善を心がけることが対策となります。
1-2. 60代の死因
60代の死因の1位は悪性新生物、つまり「がん」です。また心疾患や脳血管疾患なども含め、「生活習慣病」による死亡が上位を占めることになります。
■60代の死因(男女別)
順位 | 60代男性の死因 | 60代女性の死因 |
---|---|---|
1 | 悪性新生物<腫瘍> | 悪性新生物<腫瘍> |
2 | 心疾患 | 心疾患 |
3 | 脳血管疾患 | 脳血管疾患 |
4 | 不慮の事故 | 不慮の事故 |
5 | 肝疾患 | 自殺 |
(出典)平成29年人口動態統計(厚生労働省)
2. 60代の保険選び
60代の保険選びは、これまでのような病気やケガ、万一の対策という観点ではなく、長生きのリスクへの対策という観点で保険を選ぶことがポイントです。そのため、まずは現在加入中の保険の整理と見直しから手をつけるとよいでしょう。
長生きのリスク対策とは、がんなど生活習慣病にかかる医療費の保障の確保のほか、将来の介護への備え、そして長く続く老後生活を安心して送れるような計画的な生活費の管理、といったことも考える必要があり、その手段として生命保険を活用することができます。
そこで、具体的な生命保険選びや活用のポイントについて、
- 死亡保険
- 医療保険
- がん保険や生活習慣病の保険
- 介護保険や認知症保険
- 計画的な生活費の管理
の順に説明をしていきます。
2-1.【60代】死亡保険の見直し
60代になると高額な死亡保険は不要となります。とくに掛け捨てタイプの定期保険や収入保障保険は整理して、少額でも一生涯保障の終身保険を確保するようにしましょう。終身保険は、自分の葬儀代としての目的のほかにも、相続対策などにも活用できます。
2-2.【60代】医療保険いる?いらない?
60代の医療保険選びには、二つの考え方があります。
一つは、一定以上の預貯金がある人や毎月支払う保険料の無駄を抑えたい人の場合には、もしもの時の医療費を自分の預貯金から出すことにし、医療保険は不要とする考え方です。
例えば、医療費用の貯金として200万~300万円ぐらいを確保できる人は、あえて医療保険に入る必要はありません。ただし、このお金は常に確保しておく必要があります。また医療費が高額となる、がんなど「生活習慣病」の保障については、保険で確保しておくことをお勧めします。
もう一つは、医療費で預貯金が予定外に減ることを避けたい人の場合には、医療保険で充分な保障を確保する、という考え方です。
例えば、入院日額1万円以上の医療保障を確保しておくと安心です。
医療保険が必要なのか・不要なのか、どちらがいいのかについては、資産状況やその人の価値観によって異なることになります。毎月の保険料の支払いに抵抗があるのか、医療費で預貯金が減ることに抵抗を感じるのか、これはそれぞれに考えていただき、自分にとってシックリとくる方法を選ぶとよいでしょう。
2-3.【60代】がん保険や生活習慣病の保険の選び方
60代になると、がんをはじめとする生活習慣病のリスクが男女ともに高くなります。がんは2人に1人が罹患すると言われていますが、その分、医療技術や治療方法の進歩により治る病気へと変化したことで、先進医療費や、長期的な通院治療にかかる費用など、高額な医療費がかかる場合があります。
そのため60代は、がんや生活習慣病対策についてはしっかり備える方が安心です。具体的には、「まとまった一時金の出るがん保険」を上乗せ加入したり、「特約」にがん保障を追加するなどの方法があります。
2-4.【60代】介護保険や認知症保険について
介護保険・認知症保険については、自分はまだ元気だから不要ではないかと考えがちですが、介護が必要になってからでは加入できない場合もあるため、早めに備えておくことがポイントです。
生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度によると、過去3年間に介護経験がある人に、介護にかかった期間を聞いたところ平均54.5カ月(4年7カ月)となりました。
■介護期間
※生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度より作成
また、介護にかかった費用は、一時費用の合計が平均69万円、月々の費用が平均7.8万円となっています。一時費用とは、例えば住宅のリフォームや介護用品の購入などにかかった費用などのことです。またこれらの金額は「公的介護保険サービスを利用した上の実費負担が必要となった金額」と考えてください。
■介護費用(一時的な費用の合計)
※生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度より作成
■介護費用(月額)
※生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/平成30年度より作成
2-5.【60代】計画的な生活費の管理・相続対策に生命保険や個人年金保険を活用
60代の生命保険の活用方法として、退職金などのまとまった資金を計画的に活用したり、運用したりする目的で、一時払いの生命保険商品を活用できます。例えば、次のような活用方法があります。
- 個人年金保険を活用して毎年の生活費を計画的に受け取れるようにする
- 相続対策として生命保険を活用する
- 当面使わないお金の運用先の一つとして外貨建保険や変額保険など投資性のある商品を活用する
ただし、外貨建保険と変額保険は、大きく運用益を出せる可能性もある代わりに、元本よりも大きく下回る結果になる可能性もあるというように、ハイリスク・ハイリターンの商品ですので、投資について理解を深めた上で、一部で活用するようにするといいでしょう。
3. まとめ:60代の生命保険選び
最後に、60代の保険選びのポイントをまとめましたので参考にしてください。
- 60代は男女とも、がんや心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病のリスクに備えましょう
- 60代は、預貯金が貯まっている人は医療保険を下げてもいい時期です
- 60代の死亡保険は掛け捨ての高額保障は不要です、終身保険へシフトしましょう
- 60代は介護や認知症への備えを確保しましょう
- 60代は、老後資金の運用や計画的な利用にも生命保険を活用できます
60代に必要となる生命保険商品は次のとおりです。
がん(生活習慣病)保険 終身保険 介護・認知症保険 医療保険 一時払い保険
※緑背景は優先すべき保険
保険・金融専門の執筆家で庶民感覚のわかりやすい文体に定評がある。保険WEBサイト、経済紙記事、書籍「就業不能リスクとGLTD(共著)」ほか執筆実績多数。保険業界メールマガジンinswatch発行人。
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