がんになってもがん保険がおりないことがあるのをご存じですか?
がんを治すために十分な治療を受けようと思って入ったがん保険なのに、がんになったときに給付金が出なかった。もしそんなことになれば、治療費が足りなくて治療をあきらめなければならないということにもなりかねません。
まさか?と思われるかもしれませんが、それは現実に起こり得ることなのです。
なぜそんなことになるのかというと、がん保険の保障内容や支払い条件が実際の治療内容とミスマッチを起こしてしまうケースがあるからです。
あなたは、がん保険の保障内容や給付金の支払い条件を本当に正しく把握していますか?
ここでは、がん保険が使えなかった4つのケースを紹介します。既にがん保険に入っている人は、これらを参考にして必ず自分のがん保険の保障内容を見直してください。
そして、これからがん保険に入ろうとしている人は、保険を選ぶときに各保険の違いを十分に理解して入るように心がけてください。
目次
1. 出ると思っていた給付金が出なかった4つのケース&対策
それでは、早速、出ると思っていたがん保険の給付金がおりなかったという例をみていきましょう。
1-1. 乳がんの再発時に診断給付金がもらえなかったAさん
会社員のAさん(34歳女性)は、乳がんにより左胸の乳房温存手術を受けました。
このときは加入しているがん保険から診断給付金100万円を受け取り治療費にあてることができました。
ところが1年半後、残した乳房にがんの再発が見つかり再び手術を受けることになりました。Aさんは、診断給付金が何度でも出るタイプのがん保険に入っていたので、それを利用してしっかり治療をしたいと思っていましたが、この再発では診断給付金を受けることはできませんでした。
Aさんが加入していたがん保険は、診断給付金が複数回出ることが特長の商品です。
しかし2回目以降の支払いには、前回の診断給付金の支払い事由があったときから2年経過後に、がんの治療を目的とした入院か通院をしたときという条件がありました。
Bさんの2度目の手術は2年を経過していなかったため、診断給付金は支払われませんでした。
一時金タイプの診断給付金や治療給付金が複数回出る保険は、どれも次の給付金が出るまでの期間(年単位)の制限があります。だからといって、給付金が出る条件にあわせるために、がんの手術を半年待つというわけにはいきません。このケースは、何か対策が取れたかというと難しい事例です。
がん保険のなかには1年経過すれば次の給付金がもらえるものもあります。
また、乳がんの場合は手術後に再発や転移を防ぐために抗がん剤治療やホルモン剤治療を一定期間続けることがありますので、そういった治療を保障してくれるがん保険などに加入しておくことも対策の一つです。
また、Aさんの保険は2年経過時点で入院中あるいは通院治療中であれば、再び給付金がもらえるようになっているので、手術後の化学療法が半年後(前回の給付から2年後)も続いていれば、その時点で給付金の請求ができます。
こういったこともきちんと理解しておくことが、給付金をもらい損ねないための対策となります。
1-2. 昔のがん保険で十分な保障を受けられなかったBさん
定年退職後で無職のBさん(66歳男性)は、結腸がんの手術を受けました。
このときに、がん保険の診断給付金と入院給付金を受け取りましたが、診断給付金は65歳以降ということで半額しかもらえませんでした。それから4年後、Bさんに肝臓や肺へのがんの転移がみつかり、手術ではなく抗がん剤で治療することになりました。
はじめに5日間入院して治療を受け、その後は通院による治療となりました。
再びがん保険の給付を受けようと保険会社に連絡したところ、診断給付金や通院給付金は受けられませんでした。
Bさんが加入していたがん保険は、診断給付金は初回のみで65歳以降は金額が半額になる保険でした。
また、通院給付金は20日以上入院した後の通院でなければ出ないものでした。
そのため、再発時の治療で支払い条件を満たしたのは5日間の入院給付金だけでした。
古いタイプのがん保険の場合は、がんになる可能性が高まる65歳以降の保障が削減されていたり、現在のような通院治療に対応した保障がなかったりします。
もし、そのような保険に入っている場合は、足りない保障を追加したり、新しいがん保険に加入し直すなどの対策がとれます。
ただし、年齢が高いと保険料が高くなったり、健康状態が悪いと入りにくいということもありますので、このような保険に入っている方は、できるだけ早く専門家に相談したほうがよいでしょう。
1-3. 初期のがんで診断給付金をもらえなかったCさん
会社員のCさん(56歳男性)は、会社の健康診断で便潜血反応が出ました。
精密検査が必要ということで、大腸内視鏡検査を受けたところポリープが見つかって切除し、このポリープが上皮内新生物と診断されました。
Cさんはずっと以前からがん保険に加入していたため、がん保険の診断給付金を受けようと保険会社に連絡しましたが、上皮内新生物は支払い対象ではないといわれてしまいました。
Cさんの場合のがんは初期のがんで、大腸組織の表面の上皮と呼ばれる部分にとどまっている上皮内新生物でした。
最近のがん保険では、この上皮内新生物でも診断給付金が支払われるものもありますが、Cさんが25年前に加入したがん保険では支払い対象になっていませんでした。
これもBさん同様に昔のがん保険で、上皮内新生物の保障が一切ないタイプの保険でした。
現在は、上皮内新生物でも診断給付金が出る保険が多くなっています。ただし、全額出るものから10%に減額されたものなど、その保障額は様々です。
上皮内新生物でも保障がほしい場合は、新しいがん保険に入り直すという対策があります。
しかし、上皮内新生物は比較的手術も簡単で再発の可能性も少ないため、必ずしも高額な保障が必要なものではありません。Bさんの場合も医療費の自己負担は数万円でした。上皮内新生物の保障だけであれば無理に保険に入り直す必要性は低いといえます。
むしろ古いタイプのがん保険で、通院治療などに対応できていないのであれば、そのあたりの見直しが必要です。
※上皮内新生物への備え方については下記ページをご覧ください。
→「上皮内新生物って何? 男女で違う「がん保険」での備え方」
1-4. 自由診療のワクチン療法で治療給付金がもらえなかったDさん
会社経営者のDさん(49歳男性)は、膵(すい)臓がんになり外科手術と抗がん剤治療を受けました。
そのときには、診断給付金+初回診断給付金として150万円受け取りました。
それから2年後、Dさんが体調不良で検査を受けたところ、がんが肝臓や腹膜、リンパ節などに転移していることがわかりました。手術が適用できない状況であったことと、前回の抗がん剤治療がつらかったことから、Dさんは、まだ保険承認されていないが評判のよい新しいワクチン治療を自由診療で受けることにしました。
Dさんは前回の保険給付から2年経っていたので再度がん保険の給付を受けようと保険会社に連絡しましたが、今回は支払い対象にならないといわれました。
Dさんが加入していた保険は、公的医療保険制度の給付対象となる3大治療(手術・放射線治療・抗がん剤治療)を受けた場合に治療給付金が支払われるタイプの保険でした。
そのため、自由診療のワクチン治療では支払われませんでした。
自由診療の治療まで視野に入れる場合は、
がんという診断確定のみで給付金が出るがん保険などに入っておくことが大切です。
また病状にもよりますが、一旦は保険診療を受けつつ給付金をもらい、途中で自由診療に切り替えるということもできるかもしれません。
2. 知っておきたいがん保険の給付金の支払条件
がん保険の保障内容は各保険会社似通っていますが、給付金の支払条件は、それぞれ細かい違いがある場合があります。また、同じ保険会社のがん保険でも、10年前、20年前のものと最新のものでは保障内容や支払条件に差があります。
2-1. 最も大切な一時金タイプの給付金は種類も支払条件もいろいろ
現在、がん保険の保障の中心となっているのは、がんになったときにまとまったお金が受け取れる一時金タイプの給付金です。がんは一度治療しても再発や転移があるため、この一時金は初回だけでなく複数回受け取れるものが人気があります。しかし、その支払条件は各保険会社により少しずつ違っているので注意が必要です。
<一時金タイプの給付金(診断給付金・治療給付金等)の支払条件>
保険会社 | 上皮内新生物の保障 | 初回の支払条件 | 2回目以降の支払条件 |
---|---|---|---|
a生命 | 50%(特約) | 診断確定 | 2年経過後、がんの治療目的 で入院または通院 |
b生命 | 50% | がん治療のため3大治療、 または、最上位の進行度で 入院または通院 | 初回と同じ条件 1年ごとで合計5回まで |
c生命 | 全額 | 診断確定 | 2年経過後、診断確定 |
d生命 | 全額(初回のみ) | 診断給付金)診断確定 初回診断保険金)診断確定 | 診断給付金)2年経過後、 診断確定 |
e生命 | 10%(初回のみ) | 診断確定 | なし |
f生命 | 全額 | 治療給付金)治療のための入院 初回診断一時金)診断確定 | 治療給付金)2年経過後、 がん治療のための入院 |
2-2.前提条件として免責期間がある
これはときどき耳にすることもあるのでご存じの方も多いかもしれませんが、がん保険には、保険加入後90日間の免責期間があります。保険の申し込み・告知をして初回保険料を支払ってからも、約3ヶ月間はがんの保障が始まらないので、その間にがんになってしまった場合は、がん保険が使えません。
3. いざというときに困らないために必要なこと
現在、販売されている主ながん保険を比べても、その支払い条件はまちまちです。過去に販売されていた保険を含めると、どんなときにどんな給付金がもらえるのかは、解説のしようがないくらいです。したがって、いざというときにもらえると思っていたものがもらえなくて困るということにならないように、十分にチェックすることが大切です。
3-1. 既に加入している人は契約内容・給付条件をすぐにチェック!
自分が加入しているがん保険の保障内容・支払い条件を約款などでよく確認しましょう。
昔はがんといえば、手術+入院が基本で、抗がん剤なども入院による治療が多かったため入院給付金が日数無制限で出ることが重要でした。ところが最近では、がんの治療でも入院は短くなってきていて、通院による抗がん剤治療も増えてきました。それに伴い、がん保険の保障内容も変わってきていて、通院治療にも対応できるようになっていたり、何にでも使える一時金を複数回もらえる保険が主流になってきています。
古いタイプのがん保険で、現在のがん治療にマッチしていない保険に加入している場合は、足りない保障を追加するか、新しいタイプのがん保険に入りなおすかしたほうがよいでしょう。
3-2. これから加入する人は、保障内容・条件を必ず確認!
これから加入する人は、各社のがん保険を比較するときに、同じような保障でも支払い条件が違うことがあることを意識して、内容を細かく確認するようにしましょう。
単にどの保険が安いかということだけでなく、自分がどのような治療についての保障を重視したいか、それを満たしてくれる保険はどれかという視点で選ぶことが大切です。
そして保険に加入したら、その保険の支払い条件を引き続きしっかりと把握しておくようにしましょう。
4. まとめ:がん保険の重要なチェックポイント
がんは、以前と比べて治る可能性が上がってきています。
しかし、再発や転移などがある病気であるため、治療していくには十分なお金が必要となります。がん保険は、その治療費を用意するのが目的の保険なので、いざというときにおりないと命にかかわってきます。特に一時金タイプの給付金については、その支払い条件、回数、再度もらえるまでの年数などをしっかりと把握しておくことが重要です。その上で、通院治療に対応できる保障の有無についても確認できるとよりよいでしょう。
- 一時金の額はいくらか?
- 一時金の支払い条件はどうなっているか?(どんな治療で、何年ごとに、合計何回)
- 通院治療(抗がん剤、放射線など)に対応した保障があるか?
いろいろと違いのあるがん保険をしっかりと比較して、よりよい保険を選ぶ方法については、「がん保険の選び方|絶対に必要な3つの条件と確認ポイント」をご覧ください。
また、そもそもがん保険は必要なのか疑問があるという場合は「がん保険は必要か?スッキリ結論を出すために絶対必要な知識」をご覧ください。
※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。