先月からスタートした「がんの現状を知るシリーズ」の第2回目は、がんと喫煙についてのお話です。
東京オリンピックを控え、厚生労働省も受動喫煙防止対策に乗り出そうとしていますが、喫煙や受動喫煙ががんの発症に関係しているのか? 今回も医療コーディネーターの高橋氏(株式会社M&Fパートナーズ 代表取締役)にお話を伺いました。
<講師のご紹介>
- 略歴
1988年明治大学卒業後、外資系大手生命保険会社に23年間勤務。
現在はファイナンシャルプランナーとしてマネープラン作りや家計の見直しを行っている。また医療コーディネーターとしては、がん患者さんからの治療に関する相談に対して、様々な情報提供やアドバイス等を行うなど、がん患者さんへの治療支援活動も積極的に行っている。
その他、セミナー講師として、マネープランやがんについての講演を年間100回以上行っており、累計のセミナー受講者数は5万人を超えている。 - 講演テーマ
「生きるためのマネーセミナー がんとお金の話」
「最先端のがん治療とがんファイナンス」など
目次
がんの現状を知るシリーズ第2回
「喫煙とがんの関係」
(以下、高橋氏にお話を伺いました)
1.日本人のがん罹患状況
1981年(昭和56年)、がんが日本人の死亡原因の第1位になりました。それ以降、「がんでの死亡者数」と「がんでの死亡率(10万人あたりの死亡者数)」が上昇を続けています。国の予想によると、今後もこの傾向は変わらないようです。
さらに国立がん研究センターのデータによると、一生のうちにがんに罹患する確率は、男性が65%、女性が50%となっています。
※国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」2018年データに基づく累積罹患リスクより
つまり、男性では約3人に2人、女性では約2人に1人が一生のうちに何らかのがんになるということです。
2.がんを減らすために重要ながん教育
日本でがんが増え続ける原因は、がん検診の受診率の低さや世界でも類を見ない急速な高齢化だと言われていますが、その一方、がんについて知らないことががん増加の原因であるとも言われています。
事実、日本では学校でがんについての教育は行われていません。また社会に出てからも、がんに関する教育を受ける機会はほとんどないのではないでしょうか?
がんに関する情報を得るとしたら、テレビ番組からという方も多いことでしょう。
こうした中、いよいよ今年度から小学校・中学校・高等学校で、がん教育が開始される予定となっています。ちなみに文部科学省のホームページには、学校教育を実施する際に使用する補助資料として「がん教育推進のための教材」が公開されています。
がんを減らすためにがんを知るという、このような取り組みはとても重要なことです。こどもに対してだけでなく、社会人に対するがん教育も急務だと思います。
3.がんの原因の3分の1は「たばこ」!?
がんという病名を知らない方はいらっしゃらないと思いますが、がんがどのようにできるのかはご存じでしょうか?
がんとは、さまざまな原因により遺伝子が傷つくことで、正常な細胞ががん細胞に変わり無限に増殖していく病気です。「がん家系」という言葉をよく聞きますが、実は遺伝を原因としたがんはがん全体の5%程度しかありません。がんの原因の約3分の2は、生活習慣だと言われています。
具体的には、たばこ、過度な飲酒、運動不足、食習慣(肉の取りすぎ・野菜不足)等があげられます。そのなかでも、たばこの影響は大きく、がんの原因の3分の1はたばこと言われています。
したがって、がんのリスクを下げるには、喫煙者の方は何よりもたばこを止めることが最重要です。なぜなら、たばこを喫い続けることは、本人だけでなく家族やまわりで生活している多くの方々にその影響を及ぼすことになるからです。実は、たばこの副流煙の影響による受動喫煙で、年間7,000人もの方々がお亡くなりになっていると言われています。
4.喫煙によるがんのリスクと禁煙のすすめ
喫煙=肺がんというイメージがありますが、喫煙は肺がん以外にも、さまざまながんの発症に影響しています。
非喫煙者に比べて、喫煙者(男性の場合)のがんのリスク(がんに罹患する、またはがんにより死亡する危険性)は、全がんで2.0倍、肺がんで4.8倍、喉頭がんで5.5倍、尿路(膀胱・腎盂・尿管)がんで5.4倍、食道がんで3.4倍となっています。
※国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センター「がん情報サービス」 喫煙とがんより
また副流煙に関するリスクとして、ご主人が喫煙していると、奥様(非喫煙者)が肺がんになる確率が2倍になるとも言われています。
このようにがんリスクを高める喫煙ですが、禁煙によって、がんのリスクは喫煙を続けている人よりも下がることがわかってきています。
禁煙をした人の方が喫煙者よりもリスクが低くなるがんの種類として、口腔がん、食道がん(扁平上皮がん)、胃がん、肺がん、喉頭がん、膀胱がん、子宮頸がん(扁平上皮がん)などがあります。さらに、これらのがんのほとんどにおいて、禁煙してからの期間が長くなればなるほどがんのリスクは低くなることが確認されています。
つまり、禁煙する年齢が若ければ若いほど禁煙の効果は大きくなるということです。
しかし、たとえ何歳であったとしても禁煙の効果はあって、がんのリスクは低くなります。年齢に関わらず、喫煙者の方々はできるだけ早く禁煙することをおすすめいたします。
編集後記
今回はがんと喫煙の関係についてのお話を伺いました。
喫煙により発症リスクが高くなるのは、肺がんだけではありません。そして何より、周りにいる非喫煙者のがんリスクまで高めてしまうということは、とても衝撃を受けました。
喫煙者の方は自分の身体だけでなく、周囲の方々の身体にも配慮が必要であるということを、そして非喫煙者の方も受動喫煙について注意をしなければならないということを、ぜひ知っていただき、身近な人にも共有していただきたいと思います。
【がんの現状を知るシリーズ】
・がんの死亡者数・死亡率の増加とがん検診|がんの現状を知るシリーズ1
・生活習慣(たばこ以外)とがんの関係|がんの現状を知るシリーズ3
・増加している乳がんの現状|がんの現状を知るシリーズ4
・大腸がん検診のすすめ|がんの現状を知るシリーズ5
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