交通費はどこまで医療費控除の対象?確定申告のポイントを解説!

2022-04-15

https://www.kurashino-okane.com/social-security-tax/transportation-expenses/

一定以上の医療費を支払った場合に適用される「医療費控除」。医療費控除を受けるためには確定申告をする必要がありますが、その際に難しいのが交通費の取り扱いです。

通院や入院時のタクシー代や車のガソリン代なども控除対象になるのか、医療を受ける本人ではなく付き添いで負担した交通費はどうなるのかなど、悩む方も多いのではないでしょうか。

そこで、スムーズに確定申告を行えるように、ここでは医療費控除の対象となる交通費について、基本的な原則や例外、実際に申請する際のポイントなどを解説していきます。

1.交通費のうち医療費控除の対象になるもの、ならないものは?

医療費控除とは、1月1日~12月31日までに医療費を一定額(通常、10万円)以上支払った場合に、確定申告をすることで、税金の一部が戻ってくるという制度です。

ただし、自分では「これは医療費控除の対象になる」と思っていても、実は対象にならない場合も。国税庁が示す要件に沿った医療費だけが控除の対象となるので、注意が必要です。そこで、ここからは通院の交通手段別に、医療費控除の対象となるかならないかチェックしていきましょう。

1-1.電車やバスの交通費は対象になる

通院時に電車やバスといった公共交通機関を利用した場合の交通費は、医療費控除の対象となります

電車やバスを利用した場合、領収書が残らないことが多くなりますが、公共交通機関の場合は必ずしも領収書は必要ありません。ただし、家族のうち誰が・いつ・どの医療機関に行くのにかかった交通費なのかをノートやエクセルなどに記録として残しておきましょう。確定申告時には、それを参考にするととてもスムーズです。

なお、通勤・通学で利用している定期券を持っていて、その範囲内にある医療機関に通院した場合は、医療費控除の対象とすることはできません。主たる目的が医療機関への通院であるのが大前提なので、注意しましょう。

1-2.タクシーはやむを得ない場合を除いて対象外

通院、入院にタクシーを利用した場合の料金は、例外を除いて基本的には医療費控除の対象とはなりません

例外とは、公共交通機関が動いていない深夜などに、どうしても通院の必要が生じた場合や、公共交通機関が動いてはいるものの、病気やケガの症状が重く、タクシーを利用せざるを得ない場合などが挙げられます。病気やケガ以外にも、突然の陣痛や、高齢で歩行も難しい状態のためタクシーを利用した場合も、医療費控除の対象となります。

一方で「タクシーの方が楽だから」「公共交通機関だと行きづらい場所にあるのでタクシーを利用した」といった、利便性を目的とした利用の場合は、対象となりません

しかるべき理由でタクシーを利用した場合は、領収書を受け取り保管しておくことも忘れないようにしましょう。

1-3.車のガソリン代、駐車料金、高速料金は対象外

自家用車で通院するという人も多くいると思います。その際にかかるガソリン代や駐車料金、高速料金については、医療費控除の対象外です。

その理由は、医療費控除の対象となるのは、「人的役務の提供の対価」として支払われたものに限るからです。つまり、他者から受けたサービスの対価として支払いをした場合は、医療費控除の対象になるということです。

電車やバスであれば、運転手(あるいはその運営会社)が行うサービス(労働)に対して支出をしたことになるため、控除の対象になります。一方、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車料金は、購入や利用に対する対価です。よって、医療費控除の対象にはならないのです。

1-4.新幹線や飛行機は自己都合のときは対象外

重病、難病で遠方の医療機関に行かなくてはならない場合はどうでしょう?

この場合、その医療機関で治療を受けることが治療のために必須であるかどうかによって変わります。たとえば、かかりつけの医師などから遠方の医療機関への紹介を受け、そこでしか受けられない治療を受けるといった場合は、新幹線や飛行機の料金が医療費控除の対象となります。

しかし、自宅近隣でも受けられる治療なのにもかかわらず、「その病院に通いたい」といった自分都合の理由で遠方の医療機関を選択した場合、それにかかる交通費は控除の対象外となります。

なお、新幹線や飛行機を使うほどの遠方だと、ホテルなどに宿泊することになることも往々にしてありますが、宿泊費に関してはどんな事情であれ医療費控除の対象にはなりません

1-5.付き添いは、必然性がある場合のみ対象

上記で「対象になる」とご紹介したのは、基本的に医療を受ける本人が使用した交通費についてです。しかし、本人に付き添って家族や友人が病院に行くこともあるでしょう。そういった場合はどうなるでしょうか。

医療費控除の対象となるのは、年齢や症状により1人で通院するのが難しい人に付き添う場合のみです。たとえば子どもの通院に母親が付き添うケースや、高齢でとても1人では通院するのが難しいといった理由で親の通院に付き添うケースなどは、付き添う人にかかる交通費も医療費控除の対象となります。

一方で、「1人で通院できないわけではないが、心配だから付き添った」といった理由では控除の対象になりません。また、子どもや親が入院しており、その世話をするために病院に通う場合もあります。しかし、この場合は本人が通院をしていないため、医療費控除の対象にはなりません。

その他、付き添いではありませんが、長期入院患者が年末年始などに自宅で過ごすためにかかった病院と自宅の交通費についても、直接診療に関わることではない自己都合による費用なので、医療費控除の対象にはなりません

1-6.判断しにくいときや特別な事情があるときは税務署に確認しよう

以上のように、一口で交通費といっても、医療費控除の対象となるもの、ならないものがあります。国税庁のホームページでは、納税者から寄せられた質問に対する回答がまとまっているページがあるので、確認するとよいでしょう。

しかし、これはあくまで基本的な区分であり、さまざまな事情、背景により対象になったりならなかったりすることもあります。イレギュラーな交通費が発生しそうな場合は、予め管轄の税務署に医療費控除の対象となるかを確認しておくと安心です。

2.交通費の医療費控除の申請方法を確認しよう

次に、実際に確定申告で医療費控除をする際の手続きについて確認しましょう。確定申告書は国税庁の「確定申告書作成コーナー」から作成していきます。

2-1.申請に必要な書類を準備する

まずは1年間でかかった医療費を整理する必要があります。診療費や薬代、そして交通費など手元にある領収書を、「医療を受けた人(本人、配偶者、子どもなど)別」、「かかった医療機関別」にまとめておきましょう。

なお、領収書がもらえない交通費(公共交通機関利用など)の場合は、「1-1.電車やバスの交通費は対象になる」でも解説したとおり、確定申告の前から随時ノートやエクセルにまとめておくことが大切です。記憶だよりだと覚えていられないこともあるので、毎月末などのタスクにすることをおすすめします。

2-2.医療費集計フォームを利用する

以前は医療控除の際には領収書を添付せねばならず、手間がかかっていました。しかし、現在は「医療費控除の明細書」を記入・提出することにより、領収書の添付をしなくもよくなりました。

この医療費控除の明細書を作成するのにおすすめなのが、「医療費集計フォーム(エクセル)」を使用することです。まずはこのフォームを確定申告書作成コーナー(ページ右上)からダウンロードしましょう。このフォームには医療を受けた人、病院・薬局などの名称、医療費の区分、支払った医療費の金額などの項目があるので、そこにかかった費用を入力していきます。

■医療費集計フォーム

交通費を入力する際には、「病院・薬局などの名称」欄に交通機関の名称(JR、○○バスなど)を入力しましょう。医療費の区分は「その他の医療費」を選択してください。

同じ病院に毎月通院しているといった場合、かかった交通費を一つ一つ入力するのは大変だと思う方もいるでしょう。家族が多ければなおさらです。しかし実は、医療を受けた人と医療機関ごとに、まとめて記入してもかまわないのです。1年に10回、A病院に電車で通院し、往復1,000円かかっている場合は、「病院・薬局などの名称」欄にA病院と入力し、「支払った医療の金額」に1万円と入力すればOKです。

これらを入力し終わったら、「医療費集計フォームを読み込んで、明細書を作成する」のボタンを押せば、自動で集計がされます。原則10万円を超えていれば、超えた分の医療控除ができるというわけです。

2-3.医療費集計フォーム以外の申請方法も

「医療費集計フォーム」の活用をおすすめしますが、それ以外にも医療費の領収書から入力して、明細書を作成する方法、または医療費の合計のみを入力し、自作の明細書を添付する方法もあります。ただし、自作の明細書を添付する場合も、項目は医療費集計フォームと同じものが必要です。

2-4.領収書は5年間保存しておこう

前述のとおり、現在は領収書の添付が必要なくなりました。しかし、だからといって確定申告後にすぐ領収書を廃棄してはいけません。税務署から提出・提示を求められた場合のために、5年間保管しておくことが必要なのです。これは交通費に限らず、診療費、薬代など医療費控除に関わるすべての領収書に対してのルールなので、期限を過ぎるまではかならず保管をしておきましょう。

3.まとめ:交通費が医療費控除になるかどうかは条件しだい!

ここでは、通院、入院時にかかる交通費の医療費控除について解説をしました。利用する交通手段によって、あるいはその他の条件によって医療費控除の対象になる・ならないはまちまちです。不明点があれば、管轄の税務署に問い合わせるのが解決の早道です。

また、交通費の領収書はしっかりと保管し、領収書が出ない電車、バスを利用した際にはしっかりとメモをとっておくこと。そして、確定申告時には医療費集計フォームなどを利用して、漏れ、誤りのないようにきちんと申請しましょう。

交通費以外で、医療費控除の対象になる・ならないに迷ったときは以下の記事をご覧ください。
 ↓
もう迷わない!医療費控除の対象になる費用、ならない費用

株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)執筆:株式会社 回遊舎(編集・制作プロダクション)
金融を専門とする編集・制作プロダクション。多数の金融情報誌、ムック、書籍等で企画・制作を行う。保険、身近な家計の悩み、投資、税金、株など、お金に関する幅広い情報を初心者にもわかりやすく丁寧に解説。

※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。

※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。