医療保険には、「掛け捨て型」と「貯蓄型」の2つのタイプがあります。
ここでは「貯蓄型」の医療保険について、種類やそれぞれのしくみを詳しく解説します。また、医療保険は掛け捨て型と貯蓄型のどちらがいいのか、ということにも触れていますので、医療保険を検討する際にはぜひ参考にしてください。
目次
1. 貯蓄型の医療保険とはどんな商品か
現在販売されている医療保険の多くが、実は「掛け捨て型」の商品です。掛け捨て型医療保険の最大の特徴は、保険料が安く設定されていることです。そして、医療保険にはなるべく安く加入したいと考える人が多いことで、掛け捨て型の人気が非常に高くなっているわけです。
しかし保険料が安くても、掛け捨てとなるとどうしても気になる人も多いはずです。ですから「貯蓄型」の医療保険も根強い人気があります。そして、貯蓄型の医療保険は、いくつかのタイプに分かれていますので、それぞれ順番に見ていきましょう。
2. 貯蓄型医療保険の種類としくみ
貯蓄型の医療保険には具体的に次のような種類があります。
- 一定年数ごとにお祝い金がもらえる「お祝い金タイプ」
- 一定年齢までに支払った保険料が全額戻ってくる「リターンタイプ」
- 解約すると返戻金がある「解約返戻金タイプ」
それぞれの概要について順番に見ていきましょう。
2-1. 一定年数ごとにお祝い金がもらえる「お祝い金タイプ」
お祝い金タイプとは、例えば「3年ごとに数万円を受け取れる」というように、数年おきにいくらかのお金を受け取れるタイプの医療保険です。またこのお祝い金は、数万円程度とそれほど高額なものではないという点も特徴と言えます。
この商品のメリットは、数年おきにお金を受け取れる「楽しみがある」という点にあります。そのお金で「自分や家族にプレゼントを買う」とか、健康のために「人間ドッグを受ける」というように、目標を決めて活用できることも特徴です。
■お祝い金タイプの医療保険(例)
このタイプの医療保険には、あらかじめ貯蓄になる分の保険料が上乗せされています。掛け捨て型よりも少し多い保険料を支払って、その差額分が数年ごとに戻る、と考えるとわかりやすいかと思います。
2-2. 一定年齢までに支払った保険料が全額戻ってくる「リターンタイプ」
一定の年齢まで契約を継続して保険料を支払い続けると、その年齢に達したときにこれまで支払った保険料の全額が戻ってくるというタイプの医療保険です。現在、貯蓄型の医療保険の中では一番人気と言っていいと思います。なお、この戻ってくるお金を「健康還付給付金」などと言います(保険会社によって異なります)。
ただし次のような注意点があります。
- 途中で入院給付金などを受け取った場合には、その分が差し引かれる
- 健康還付給付金を受け取る前の途中解約や死亡の場合、解約返戻金があれば払い戻される
※ただし払い込み相当額よりも低くなる - 健康還付給付金を受けとった後も、保険料の支払いが続く(*)
(*)健康還付給付金を受け取ると同時に保険料の支払いも満了となり、その後保障が続くというタイプもの商品も少数ですがあります。その分、保険料は高くなります。
■リターンタイプの医療保険(例)
健康還付給付金を受け取る年齢の選択は、例えば55歳や60歳、65歳、70歳など、商品や年齢等により選択肢が異なっていて、加入時に選択します。また、たいては健康還付給付金を受け取ったあとも保険料の支払いが続くタイプがほとんどです。
健康還付給付金の受け取り年齢を選択する際の考え方として、以下を参考にして自分に合ったものを選びましょう。
- なるべく早く受け取るようにする(ただしその後の支払いが長く続くことになる)
- 健康還付給付金額を多くしたいので、なるべく遅く受け取るようにする(ただし受け取る前の途中解約や死亡の場合には、返戻金が低くなるという点に注意)
- 上記二つの中間あたりの年齢を選ぶ など
2-3. 解約すると返戻金がある「解約返戻金タイプ」
解約すると解約返戻金があるというタイプの医療保険もあり、以前は医療保険の貯蓄型というと、こうした商品が主流でした。しかし、現在は数が少なくなっています。
返戻率は商品により異なりますが、支払った保険料よりも低くなるものが多いです。またこの商品の場合は、途中で給付金を受け取っていても、返戻金からその分を差し引くことはありません。また、解約をすると保障が終了する点に注意が必要です。
3. 結局、医療保険は「掛け捨て型」と「貯蓄型」どちらがいいの?
医療保険は掛け捨て型と貯蓄型のどちらがいいのかというそもそもの問題について触れておきます。
その答えは、一概には言えないということになります。
現状を見ると掛け捨て型の加入者の方が圧倒的に多く、それは、保険料が安い事が一番の理由です。また医療保障は年齢を重ねるごとに必要となる可能性が高いので解約する要素が低いため、継続するのではあれば保険料が安い方が後々も助かるということもあるでしょう。さらに、掛け捨て型には多数の商品があり、例えば、払込満了時期を設定する短期払いや一定年齢以降に保険料が安くなるというタイプ、多種多様な特約を選択できるものなど、バリエーションが豊富であるというメリットもあります。
一方で、たとえ保険料が安くても掛け捨てとなるのは心理的に抵抗があるという人も少なくありません。こうした人にとっては、保険料を少し上乗せすることで貯蓄性が保たれるならその方がいいわけです。
なぜなら、保険は安心のために加入するものだからです。保険は長期間支払い続ける必要があるため、自分の価値観に合わないものを長く支払い続けるのは、安心を得ることとは全く逆のことをすることになるので避けるべきです。医療保険は自分の価値観を大切にして選びましょう。
というように、どちらがいいか悪いかということではなく、本人の価値観によって選択肢が異なるということです。どうしても迷って選べない!という人には、二つのタイプに半分ずつ加入するという方法もあります。
4. まとめ:貯蓄型医療保険の選び方
最後に、貯蓄型の医療保険選びのポイントをまとめましたので参考にしてください。
- 貯蓄型の医療保険は3種類「お祝い金タイプ」「リターンタイプ」「解約返戻金タイプ」
- 「お祝い金タイプ」は、掛け捨て保険に少し上乗せした保険料分が数年ごとにお祝い金として受け取れる
- 「リターンタイプ」は、途中で給付金を受け取ると、リターン時にその分が差し引かれる、また設定した年齢に達してお金を受け取った後も保険料の支払いは続く
- 医療保険は「掛け捨て型」にするのか「貯蓄型」にするのかは、自分自身の価値観を大切に、自分に合ったものを選ぶ

保険・金融専門の執筆家で庶民感覚のわかりやすい文体に定評がある。保険WEBサイト、経済紙記事、書籍「就業不能リスクとGLTD(共著)」ほか執筆実績多数。保険業界メールマガジンinswatch発行人。
※記事内容の利用・実施に関しては、ご自身の責任のもとご判断ください。
※掲載している情報は、記事公開時点での商品・法令・税制等に基づいて作成したものであり、将来、商品内容や法令、税制等が変更される可能性があります。また個別の保険商品の内容については各商品の約款等をご確認ください。