2019年10月、消費税の増税と関連してクルマの税(自動車に関する様々な税制)が大きく変わるのをご存じですか?
この記事では、制度がどう変わるのかを詳しく解説しながら、どんなタイプのクルマがおトクに乗れるのかを考えます。これからクルマの購入を考えている方は必読です!
目次
1.新しい「クルマの税」基礎知識
はじめに、クルマに関わる税のあらまし、2019年に実施される制度改正の概要について解説します。
1-1.クルマの税には、どんなものがある?
2019年7月現在、クルマに関わる税には以下のようなものがあります。中古車含むクルマの購入に対して課税される「自動車取得税」、所有に伴い毎年かかる「自動車税・軽自動車税」、そして、新車購入時と車検時に課税される「自動車重量税」です。また、日々給油するガソリンにも「揮発油税・地方揮発油税」がかけられています。
1-2.すでに進んでいる、クルマの税改革
このようなクルマの税が、変わろうとしています。2019年4月、5月には、自動車取得税や自動車重量税(初回車検時まで)に適用されている「エコカー減税」の軽減税率が見直しとなりました。
自動車取得税については、電気自動車などの「次世代自動車」や2020年燃費基準+40%達成車は変わらず非課税のまま。+10~30%達成車は従来40~80%の軽減が受けられましたが、25~50%に変更されました。
自動車重量税も、2020年燃費基準+10~30%達成車の軽減率について、50~75%から25~50%へと変更されています。
エコカー減税の適用は、自動車取得税については2019年9月までに終了。自動車重量税も2021年4月までに終了する見込みです。
■自動車取得税のエコカー減税適用(自家用乗用車の場合)
適用対象車 | 2019年4月1日 ~ 2019年9月30日 | |
---|---|---|
電気自動車※1 | 非課税 | |
ガソリン車 LPG車 (ハイブリッド車を含む) ※2 | 2020年度燃費基準 +60%達成車 | 非課税 |
2020年度燃費基準 +50%達成車 | 非課税 | |
2020年度燃費基準 +40%達成車 | 非課税 | |
2020年度燃費基準 +30%達成車 | 50%軽減 | |
2020年度燃費基準 +20%達成車 | 50%軽減 | |
2020年度燃費基準 +10%達成車 | 25%軽減 | |
2020年度燃費基準 達成車 | 20%軽減 |
※1 電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリット車、天然ガス自動車、クリーンディーゼル車
※2 ガソリン車・LPG車 (ハイブリット車を含む)は、上記燃費性能に加え、2005年排出ガス規制75%低減または2017年排出ガス規制50%低減達成車に限る
■自動車重量税のエコカー減税適用(自家用乗用車の場合)
適用対象車 | 2019年5月1日 ~ 2021年4月30日 | ||
---|---|---|---|
初回車検 | 2回目車検 | ||
電気自動車※3 | 免税 | 免税 | |
ガソリン車 LPG車 (ハイブリッド車を含む) ※4 | 2020年度燃費基準 +90%達成車 | 免税 | 免税 |
2020年度燃費基準 +50%達成車 | 免税 | 軽減なし | |
2020年度燃費基準 +40%達成車 | 免税 | ||
2020年度燃費基準 +30%達成車 | 50%軽減 | ||
2020年度燃費基準 +20%達成車 | 50%軽減 | ||
2020年度燃費基準 +10%達成車 | 25%軽減 | ||
2020年度燃費基準 達成車 | 25%軽減 | ||
2015年度燃費基準 +10%達成車 | 軽減なし |
※3 電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリット車、天然ガス自動車、クリーンディーゼル車
※4 ガソリン車・LPG車 (ハイブリット車を含む)は、上記燃費性能に加え、2005年排出ガス規制75%低減または2017年排出ガス規制50%低減達成車に限る
1-3.何が変わる?2019年10月の新法制
そして、消費税が10%に増税される予定の2019年10月。「自動車税」「自動車取得税」のしくみが大きく変わることになります。消費増税によるクルマの買い控えなどへの対策の意味もあります。
自動車税は恒久的に税率が引き下げられ、自動車取得税は廃止。代わりに、「環境性能割」と呼ばれる新制度が導入されます。これだけ聞くとかなりオトクになりそうですが、実際にはどうなるのか、以下で解説していきます。
2.【自動車税】税額引き下げ
毎年4月1日時点でクルマを保有している人に課税される自動車税。2019年10月以降に新車登録されたクルマから、税額が引き下げられることになりました。
なお、軽自動車税の税額(10,800円)に変更はありません。
2-1. 最大4,500円!ずっと続く減税
自動車税減税は、排気量を問わず、すべての自家用車に適用されます。その額はコンパクトカーほど大きくなります。
1,000cc以下の乗用車は年間4,500円(約15%)の減税となります。そのほか、1,000cc超1,500cc以下は年間4,000円(約12%)、1,500cc超2,000cc以下は年間3,500円(約9%)、2,000cc超2,500cc以下は年間1,500円(約3%)の引き下げとなります。
さらに排気量が大きい2,500cc超のクルマの減税額は一律年間1,000円。最も排気量の大きい区分である6,000cc以上の場合は、わずか0.9%の減税となり、あまりオトクになっている実感がわかないかもしれません。排気量別の税額は、下記をご覧ください。
■2019年10月1日以降に新車登録された自家用の乗用車の自動車税額
排気量 | 引下げ前の税額 | 引下げ後の税額(引下げ額) |
---|---|---|
1,000cc以下 | 29,500円 | 25,000円(▲4,500円) |
1,000㏄超 1,500cc以下 | 34,500円 | 30,500円(▲4,000円) |
1,500㏄超 2,000cc以下 | 39,500円 | 36,000円(▲3,500円) |
2,000㏄超 2,500cc以下 | 45,000円 | 43,500円(▲1,500円) |
2,500㏄超 3,000cc以下 | 51,000円 | 50,000円(▲1,000円) |
3,000㏄超 3,500cc以下 | 58,000円 | 57,000円(▲1,000円) |
3,500㏄超 4,000cc以下 | 66,500円 | 65,500円(▲1,000円) |
4,000㏄超 4,500cc以下 | 76,500円 | 75,500円(▲1,000円) |
4,500㏄超 6,000cc以下 | 88,000円 | 87,000円(▲1,000円) |
6,000㏄超 | 111,000円 | 110,000円(▲1,000円) |
2-2.「グリーン化特例」は継続→2021年度に見直し
クルマの燃費性能に応じて、購入した翌年度の自動車税・軽自動車税が減税になる「グリーン化特例」。軽減率は50%~75%(軽自動車は25~75%)で、2021年3月までは現行の制度が継続されることになりました。
2021年4月には制度の見直しが行われ、対象が電気自動車や燃料電池車などに限られる見込みです。グリーン化特例の税率については、下記をご覧ください。
■グリーン化特例税率(自家用乗用車の場合)
適用対象車 | 2019年4月1日 ~ 2021年3月31日 | 2021年4月1日 ~ 2023年3月31日 | |||
---|---|---|---|---|---|
乗用車 | 軽自動車 | 乗用車 | 軽自動車 | ||
電気自動車※5 | 75%軽減 | 75%軽減 | 75%軽減 | 75%軽減 | |
ガソリン車 LPG車 (ハイブリッド車を含む) ※6 | 2020年度燃費基準 +50%軽減 | 50%軽減 | 軽減なし | 軽減なし | |
2020年度燃費基準 +40%達成車 | |||||
2020年度燃費基準 +30%達成車 | |||||
2020年度燃費基準 +20%達成車 | 50%軽減 | 25%軽減 | |||
2020年度燃費基準 +10%達成車 |
※5 電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリット車、天然ガス自動車、クリーンディーゼル車
※6 ガソリン車・LPG車 (ハイブリット車を含む)は、上記燃費性能に加え、2005年排出ガス規制75%低減または2017年排出ガス規制50%低減達成車に限る
3.【自動車取得税】は「環境性能割」に衣替え
2019年10月、自動車取得税が廃止されることになりました。そのかわりに導入される新しい制度「環境性能割」について解説していきます。
3-1. 割引ではなく税金?「環境性能割」
現行の自動車取得税は、中古車含む自動車購入時に「取得価額」の3%(軽自動車は2%)が徴税されるものです。燃費のいいクルマについては、「エコカー減税」で税率が軽減、もしくは非課税とされています。
新しく導入される「環境性能割」も、基本となる税率は3%(軽自動車2%)で自動車取得税と同じです。「2020年燃費基準」を達成しているクルマ(乗用車)は、その燃費性能に応じて税が軽減、もしくは非課税となります。新制度に移行すると、現行のエコカー減税を適用した場合よりも税率が低くなり、おトクになります。
一方、「2020年燃費基準」を達成していないクルマを購入する場合には、エコカー減税に該当しない自動車取得税と全く変わらない額が課されます。
3-2.2020年9月までは、税率が軽減される措置も
環境性能割の税率は、制度がはじまる2019年10月から翌2020年9月末までの1年間限定で、1%分軽減されます。「2020年燃費基準」達成車は2%から1%に、基準+10%を達成しているクルマは1%から0%にそれぞれ軽減。軽自動車については、2020年燃費基準達成車はすべて0%(非課税)となります。
また、環境基準を達成していないクルマも一律に1%軽減されるので、この期間にクルマを購入するすべてのユーザーにとってメリットがあるといえます。
■自動車取得税と環境性能割の比較(自家用乗用車の場合)
適用対象車 | 2019年4月1日 ~ 2019年9月30日 (自動車取得税) | 2019年10月1日 ~ 2021年3月31日 (環境性能割) | |
---|---|---|---|
エコカー減税適用後税率 | 赤字は臨時的軽減 (~2020年9月30日まで) | ||
電気自動車※7 | 非課税 | 0% | |
ガソリン車 LPG車 (ハイブリッド車を含む) ※8 | 2020年度燃費基準 +40%達成車 | 非課税 | 0% |
2020年度燃費基準 +30%達成車 | 1.5%(50%軽減) | 0% | |
2020年度燃費基準 +20%達成車 | 1.5%(50%軽減) | 0% | |
2020年度燃費基準 +10%達成車 | 2.25%(25%軽減) | 1%→0% | |
2020年度燃費基準 達成車 | 2.4%(20%軽減) | 2%→1% | |
上記以外の自動車 | 3%(軽減なし) | 3%→2% |
※7 電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリット車、天然ガス自動車、クリーンディーゼル車
※8 ガソリン車・LPG車 (ハイブリット車を含む)は、上記燃費性能に加え、2005年排出ガス規制75%低減または2017年排出ガス規制50%低減達成車に限る
■自動車取得税と環境性能割の比較(自家用軽自動車の場合)
適用対象車 | 2019年4月1日 ~ 2019年9月30日 (自動車取得税) | 2019年10月1日 ~ 2021年3月31日 (環境性能割) | |
---|---|---|---|
エコカー減税適用後税率 | 赤字は臨時的軽減 (~2020年9月30日まで) | ||
電気自動車※9 | 0%(非課税) | 0% | |
ガソリン車 LPG車 (ハイブリッド車を含む) ※10 | 2020年度燃費基準 +40%達成車 | 0%(非課税) | 0% |
2020年度燃費基準 +30%達成車 | 1.0%(50%軽減) | 0% | |
2020年度燃費基準 +20%達成車 | 1.0%(50%軽減) | 0% | |
2020年度燃費基準 +10%達成車 | 1.5%(25%軽減) | 0% | |
2020年度燃費基準 達成車 | 1.6%(20%軽減) | 1%→0% | |
上記以外の自動車 | 2%(軽減なし) | 2%→1% |
※9 電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリット車、天然ガス自動車、クリーンディーゼル車
※10 ガソリン車・LPG車 (ハイブリット車を含む)は、上記燃費性能に加え、2005年排出ガス規制75%低減または2017年排出ガス規制50%低減達成車に限る
4.どんなクルマがおトクになる?
ここまで見てきた新しいクルマの税。実際にはどんなクルマを購入した場合に恩恵があるのでしょうか。経済産業省がモデルケースを設定して行った試算(自家用車・8年保有の場合)に基づいて、どんなケースでオトクになるかを見てきましょう。
<参考>減税額シミュレーション(経済産業省)
ここでは、2%の消費増税分とクルマの税の軽減分を差し引きして、負担が増えるのか、減るのかを考えます。
4-1. 燃費基準を満たした2L以下のガソリン車はオトク!
経産省のモデルケースの中では、制度改正で最もおトクになるのは、排気量2,000cc以下のガソリン車。自動車税の減税により、毎年の税負担が3,500~4,500円軽くなります(排気量による)。
また、環境性能割については、2020年燃費基準達成車、基準+10~30%のクルマは、旧自動車取得税では1.5~2.4%だった税率が、環境性能割では0~2%に。両方の税金の軽減メリットを享受できます。
さらに2020年9月までは、環境性能割の税率がさらに1%低くなります。このタイミングでクルマを購入すれば、消費増税による2%の負担増を補って余りある形になるかもしれません。
4-2.軽自動車や2.5Lクラス以上はメリットが少ない?
一方で、法改正の恩恵を受けにくいのが、排気量2,500cc以上のクルマを購入する場合。減税による自動車税負担軽減は毎年1,000円に限られます。軽自動車も同様。軽自動車税額は据え置きとなっており、負担額は法改正前と変わりません。
2020年燃費基準を達成しているクルマであれば、コンパクトカー同様、環境性能割の適用による税負担軽減というメリットがあります。しかし、2%の消費増税を考えると、トータルではあまりおトクにならない可能性があります。
4-3.ご注意!環境性能が低いクルマは負担増に
そして、2020年燃費基準を満たしていないクルマを購入する場合は負担が重くなる可能性があります。環境性能割の税の軽減が適用されず、旧自動車取得税のエコカー減税がない場合と同じ3%(軽自動車は2%)の税額を支払わなければなりません。
2020年9月までの購入であれば、税率は2%(軽自動車は1%)となりますが、2%の消費増税によって実質的には負担が増える場合があります。
5.まとめ:税制改正の恩恵が大きいのは環境性能の高いコンパクトカー
2019年10月に変わるクルマの税。「自動車税の減税」「環境性能割の導入」によって、税負担が軽減されることがわかりました。一方で、2%の消費増税も同時に行われるため、トータルで見れば負担が増える場合もあります。
これからクルマの購入を考えている方は、環境性能が高いコンパクトカーを選ぶことで、税制度改正の恩恵を十分に受けられる可能性が高くなります。また、購入は環境性能割の税率が軽減される2020年9月までがオトクと言えそうです。
いずれにしても、クルマは大きな買い物。必ず加入しておきたい任意保険や、必要なオプションの費用も含めて、じっくり検討してくださいね。
【2019年10月の消費増税に関連する記事】
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