2019年10月、およそ5年ぶりに消費税の増税が実施されます。今回はこれまでの増税と異なり、初めて「軽減税率」が導入されます。
特定の品目に限って、従来の税率に据え置くこの制度。どのような場合に適用されるのかを、具体例とともに紹介します。かなり紛らわしいケースもありますので、この記事を参考にしていただき、10月からのお買い物時にお役立てください。
目次
1.軽減税率 基本の「き」
はじめに、消費増税がなぜ行われるのかや、軽減税率の基本的な情報について確認しましょう。
1-1.消費税は、なぜ増税される?
消費税は、1989年に初めて日本に導入されました。当初3%だった税率は、1997年に5%、2014年に8%に引き上げられてきました。そして2019年10月に予定されているのが、税率10%へのさらなる引き上げです。
その理由は、社会保障の充実。政府は、少子高齢化などで増大の一途をたどる社会保障費をカバーするために、景気動向などに左右されず、安定的に税収が得られる消費税を増税することになりました。
1-2.軽減税率とは?
一方で、消費税率の引き上げは家計の負担増に直結します。所得に応じて税率が変わる所得税と違い、誰でも一律に10%の税率がかかけられるため、相対的に所得の低い人の税負担が重くなることになります。
そこで政府が負担軽減策として実施するのが、「軽減税率」です。これは、日々の暮らしに欠かせない品目に限って税率を8%に据え置く措置。フランスやドイツ、イギリスなどでは、すでに導入されています。
1-3.対象になるのは、どんなもの?
軽減税率の適用対象になるのは、お酒や外食などを除いた「飲食料品」と、定期購読契約された「新聞」です。それ以外の物品・サービスは、すべて10%の標準税率が適用されることとなります。次の章から、どのような品目が軽減税率の対象になるのかを詳しく解説していきます。
2.徹底解説!軽減税率の対象となる「飲食料品」の範囲
ここでは、日々の暮らしと最も密接に関わる「飲食料品」にクローズアップします。軽減税率が適用されるケース、適用されないケースについて具体的に見ていきましょう。
2-1.外食は対象外!それではイートインは?
飲食料品のうち、軽減税率の対象とされていない「外食」。政府は、外食の定義を「飲食設備のある場所において、顧客に飲食させるサービス」としています。その対象は、レストランや飲食店のみならず、広範囲にわたっているため、少し注意が必要です。
例えば、コンビニやスーパーのイートインコーナー。店内で購入した商品をイートインコーナーで飲食した場合は、「外食」とみなされます。購入の場面では、イートインコーナーで飲食することを自分で申し出たり、逆に店員さんから確認されることになりそうです。
また、テーブルやイスを備えたフードトラック(移動販売車)や、フードコートでの飲食も、同様に外食とみなされ、10%の標準税率が適用されます。
2-2.社食も10%に? 「ケータリング」も標準税率
ケータリングや出張料理にも、10%の標準税率が適用されます。現地での調理や配膳が伴うため、外食に準ずるものとみなされるのです。職場や学校内にある社員食堂・学生食堂も同様です。ただし、有料老人ホームや学校での給食などは、一定の条件の下、軽減税率が適用されます。
一方で、仕出し弁当や宅配ピザ、そばの出前など、あらかじめ調理されたものを自宅などで飲食する場合は、軽減税率が適用されます。
2-3.本みりんは「お酒」!その基準は?
お酒についても、10%の標準税率が適用されます。その判断基準は、酒税法上の「酒類」に該当するかどうか。この法律での酒類は「アルコール分1度以上の飲料」とされています。本みりんや料理酒など、ふつうお酒として飲まないものに関しても、10%の標準税率が適用されます。
一方で、みりん風調味料や甘酒などのアルコール度数が低いもの、ブランデーケーキやウイスキーボンボンなどの菓子類には、軽減税率が適用されることになります。
2-4.栄養ドリンクも、種類によって税率が分かれる
また、少し紛らわしいのが栄養ドリンク。自動販売機などでもよく売られている、「炭酸飲料」などと表示された栄養ドリンクは飲食料品なので、軽減税率が適用されます。
ところが、ドラッグストアなどを中心に販売されている「医薬品」ないし「医薬部外品」と書かれているものは、飲食料品とはみなされないため、10%の標準税率が課されます。商品の表示をよく見て購入しましょう。
2-5.食玩も増税?「一体資産」とは
一定の条件下で、食品として軽減税率の適用対象となる「一体資産」。これは、食品と食品以外の資産が一体となった品物のこと。おもちゃとお菓子が一体となった「食玩」などがこれに該当します。
軽減税率の適用基準は、「税抜価額が1万円以下であって、食品の価額が占める割合が2/3以上の場合」とされています。シール付きチョコウエハースなど、食品以外の資産のウエイトが小さいものは8%、コーヒーカップ付きの紅茶セットなど、食品以外の資産の価値が高いものは10%となりそうです。
3.新聞も注意!適用範囲を正しく知ろう
軽減税率のもう一つの適用対象が「新聞」。世の中の動きや、生活に必要な情報を得る重要なメディアの一つですが、適用範囲が限定されていることに注意が必要です。この章では、どのような条件で新聞に軽減税率が適用されるのか見ていきましょう。
3-1.対象は定期購読のみ
軽減税率の適用対象になるのは「一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞」とされています。スポーツ紙や業界紙のほか、英字新聞など日本語以外で制作されたものも含まれます。
ただし、定期購読契約がなされていることが条件となるため、駅の売店やコンビニで購入する「一部売り」の新聞は対象外となり、10%の標準税率が適用されます。また、オンラインで紙面の内容が提供される電子版についても10%。月額契約をしていても、軽減税率の対象にはなりません。
3-2.週2回以上の発行が条件
新聞への軽減税率適用には、もう一つ条件があります。それは、週2回以上発行される新聞であること。新聞と名乗っていても、週刊、隔週刊、月刊などの媒体は、軽減税率の対象にはなりません。
また、新聞と同じように暮らしに必要な情報を得るツールである雑誌や書籍についても、例外なくすべて10%の標準税率が適用されます。
4.まとめ:軽減税率の適用範囲を理解して、賢くお買い物を!
ここまで、2019年10月から実施される消費税の軽減税率の対象となる品目について、「飲食料品」「新聞」に分けて解説してきました。飲食料品については、「外食・ケータリングにあたるかどうか」「酒税法の酒類に該当するかどうか」「医薬品、医薬部外品に該当するかどうか」などが、軽減税率の適用対象になるかどうかのポイントになることがわかりました。また新聞については「週2回以上発行する媒体の定期購読」と、適用の条件が厳しいことが見えてきました。
自分の購入する商品・サービスが8%の軽減税率の対象となるのか、10%の標準税率になるのかを見極めるには、店頭での価格表示を確認することが第一です。また、レシートの表記をよく見ることも大切。事業者には、消費増税の実施とともに、商品ごとにどちらの税率が適用されているかを明記したレシート・領収書を発行することが義務付けられます。
まずこれらの情報をしっかり把握し軽減税率の適用範囲を正しく理解し、確認をすることで、賢くお買い物をしましょう。
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